死界の神、 ヘル
ヘパイストスの神託のお陰で、 ヘルクラウドへと無事に行く事が出来る訳だが……。
その日の晩餐後、 こんな神託がヘルから送られてきたという。
『別に来るのは構わないんだけどぉ、 ちょ~っと楽しんで貰う為に、 とあるミッションを作りましたぁ! いぇ~いっ!……と、 いう訳なのでぇ、 準備しといて下さいねぇ! ……あ、 ミッション失敗しちゃったら、 ま! 楽しみにしといてね☆』
との事だった。
失敗したらどーなんだよ。
だが、 失敗してしまうとマズイことは分かり得る。
「……こりゃ歓迎されてんのか?」
ヘパイストスとの神託の時はすんなり歓迎してくれたと思っていたのだが……どうもそうではないらしい。
「いやはや、 我儘な所は変わっておらぬのぅ」
我儘とかで解決される内容なのか、 これ。
「準備って言われても……」
「一体何の準備をしておけばいいんですかね?」
ぴょこぴょこと耳を傾けながら考えているルル。
『当然、 シューティングじゃないのか?』
人差し指を立てて、 ドヤ顔をするニルヴ。
まぁ、 単純に考えればそうだが……。
相手は神だ。
何を考えているかは未知数。
況してやシューティングゲームなのならば尚更準備なんてものは仕様がない。
つまり。
「考えても無駄か、 うしゃ、 明日に備えて寝るか!」
「……メンタル強いですね……主」
「むしろ1周回って頭おかしいです」
『だな』
……なんだよ、 お前ら皆して。
----そしてつぎの日。
ヘパイストスの家の周りには、 無数のカラスが飛び交っていた。
そして、 入口の真ん前には超巨大なカラスがこちらを待っていた。
「……え、 ヘルってカラスなの?」
すると、 カラスが口を開く。
『そんな訳ないでしょっ!』
いや、 現にカラス喋ってますよ。
『そおぃっ!』
気合の入った声と共に、 あろうことがカラスの口から何かが出てきた。
それは人の形をしており……、 いや、 人だった。
正式には神だった。
「どもっ! ヘルクラウドの主神、 ヘルでぇーっす!」
キャピーンッとでも音の出そうな挨拶だが、 考えて欲しい。
「……ゲロだ」
「……ゲロです」
「……ゲロですね」
『……ゲロゲロだな』
ゲロ……もといヘルは、 神託で聞こえた通りの見た目小学生位の少女だった。
黒と白の髪をツインテールにまとめ、 これまたモノクロのゴスロリに身を包んでいた。
「さて、 へパちぃがお世話になった人ってことでいいのかなぁ?」
「ま、 強ち間違えちゃいねー……」
「それじゃあ、 早速向かいますかぁっ!」
そして、 ヘルが指をパチンと鳴らすと、 辺りを悠々と飛んでいたカラス達が、 一斉に集まって来た。
そして、 いつの間にやらカラスが小船のような形に変化する。
「これに乗って行きますよぉ!」
「ヘル、 くれぐれも粗相のないようにするのじゃぞ」
そういうヘパイストスの言葉に対し、ヘルは少し身体をビクつかせながら、 「も……勿論ですよぉ……」と返事をする。
ヘパイストス、 どんだけ怖ぇの……。
そして、 俺達は初の空の旅へと進んだ。




