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浮遊島

ヘルクラウド。

名にある通り、 ヘルが経営している島らしく、 ヘルの好むアトラクションが多数設置されている。

ジェットコースターらしきやらメリーゴーランドらしきやら。

そして最も名高いアトラクションが、 シューティングゲームなのだという。

何でも、 ヘルが従える死者達を撃ち合うらしい……。

死人に何させとんじゃ。

そして、 目的のヘルクラウドへと向かおうと支度を整えていた時。

「……あれ、 そもそもどうやって向かえばいいんだ?」

温泉後、 ヘパイストスに次の行き先が決まったと報告すると、 支度がてら1晩休んで行けと提案されたのでお言葉に甘え、 晩飯を御馳走になっていた。

何処かに降りるのかと思ったが、 今まで行った街にはそれらしい場所は見当たらなかった。

終わりのような始まりの村ならわからんこともないが、 ロキの街にもなかった。

「ヘルは気まぐれなところがありますからね」

「手っ取り早い方法は死ぬ事じゃが……」

「それはやってはいけない方法だなっ!!?」

物騒な提案をしたヘパイストスは「かかっ」と笑うと、 御猪口の酒を口に運ぶ。

『我なら飛んで行けるぞ』

「お前ならなっ!」

飛行能力をもつニルヴならまだしも、 獣人種ビーストのルルや一般人の俺には到底不可能。

ロキが持つ『フライト』もそう一度には使えないだろう……。

「ペガサスとかは使えないのか?」

ここは異世界だ。

それくらい出来るだろう。

「ペガサスはあそこまでの飛翔能力は出来ないのです」

うちの世界ではトナカイだって飛ぶぞ?

オヤジが乗ったソリとか引っ張って。

さて、 どーしたモンかね。

腕を組み、 露骨に考えるポーズを取る。


「では、 直接ヘルに迎えに来て貰えばよかろう」


……やっぱり神はすごいや。

言うや否や、 ヘパイストスの周りを囲む程のおおきさの魔法陣が展開される。

「……ヘルよ」

『なぁーにぃ? ヘパちぃから神託なんて珍しいねぇ』

スピーカーの様に響く声の主こそ、 ヘルなのだろう。

聞くからにDQNの小学生みたいな声してる。

「ちとな、 世話になった者がヘルクラウドにきたいと言っておるのでな、 迎えにきてはくれぬか?」

『別にいーけどぉ、 その人はどっち側志望なわけぇ?』

なんだよどっち側志望って。

なんかコースでもあんのか。

テーマパークなだけに料金めっさ取られそうなんだけど。

「無論、 『生』じゃ」

客が店員かかよっ!!

『わかった! じゃあ明日の昼にヘパちぃの家の前でね!!』

「うむ、 心得た」


これにて、 俺達は安心してヘルクラウドへと迎える訳だ。

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