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【楽園】エデン

さて、 事の発端は何か。

何の為に討伐依頼を受けたのか……。

そこに守りたい……助けたいものがあるからだろう。

そしてそれは何なのか。

当初の目的を忘れる筈もない。

そう、 即ち楽園エデン


そんな壮大なプロローグを頭の中で流しながら、 俺はとある場所に足を運んでいた。

そして、 一軒の店の前で足を止める。

その店には、 『露天』と書かれた看板。

「……ついに」

ごくりと生唾を呑む。

暖簾のれんを押し上げ、 扉を開くと、 奥の方から「らしゃせー」と声がする。

どこの世界でもあんまり変わらない気怠げな挨拶だ。

入口の直ぐ隣に設備されているカウンターには、 先日の鬼人種の女性がいた。

「あら、 あんた……」

「ども」

「ホントに魔物を倒してくれるなんて……この店は好きに使ってくれて構わないよ、 責めてものお礼さ」

これにて交渉成立。

混浴のみのこの街には、 脱衣場もまた一つ。

しかし、 運が悪く誰1人として脱衣はしていなかった。

俺はささっと服を脱ぎ捨て、 勢い良く温泉のドアを開ける----


が。

そこには誰もいなかった。

「……だろうな。 今は昼間、 みんな仕事してるだろーなぁ……こんな時間に温泉に来るやつなんて……」

『とんだ暇人しかおらんだろうな』

血の契約とやらで、 一定範囲を離れられなくなってしまった故、 ニルヴと2人で入浴するハメになる。

……何故なにゆえ俺は変態ロリと裸の付き合いをせねばならんのだ。

『くくくっ……我が肢体も棄てたものでも無かろうよ』

なんだそのドヤ顔。

「……がっかりだぜ」

俺は嘆息気味に自分の身体を洗い始める。

『なぁ、 リョウ。 我が洗ってやろうか?』

「触るな」

ニルヴの提案をバッサリと斬り捨てる。

仕方がないといった面持ちで、 隣に座り、 自分の頭をわしゃわしゃしだす。

『……む。 リョウのようにあわあわせん……』

「そりゃそーだろ、 シャンプー付けてないだろ」

『しゃんぷーとな?』

この世界でもシャンプーと言うのかは怪しいところではあるが、 問題なく泡立っているので、 シャンプーでいいだろう。

「ちょっと待ってろ」

俺は自分の頭の泡を落とし、 またシャンプーを自分の手に適量出し、 ニルヴの頭を洗う。

『おぉーっ! 見よ、 リョウ! あわだ! あわあわだ!』

「だぁーーっ! 動くなよ……」

まるで子供のようにバタバタと足をばたつかせてはじゃぐニルヴ。

「おい、 どさくさに紛れて俺の身体を尻尾で触るな」

『……ちっ』

なんと抜かりのない……。



しっかりと身体を綺麗にし、 いよいよ入浴。

『わーーいっ!』

「はいストーップ」

ぴょんと温泉に飛び込もうとするニルヴの尾を掴み、 阻止する。

「……変態でロリで角っ子で尻尾生えててお転婆って……どんだけ属性集めてるんだよ。 誰得だよ」

『くくく、 リョウ得だな』

「やかまし」

尻尾持たれて調子に乗っているロリを、 温泉に投げ入れる。

続いて俺も温泉に足を入れ、 全身を覆う湯気に実感する。

達成感。

特にしてない俺が何故か感じる謎の達成感。

そして、 全身から伝う温泉の熱を感じ、 人々が必ず口にするセリフ。

「……あ゛ぁ~~…………」

『ふぁ~~~~』

いい。

いいわ。

露天風呂なのがまたいい。

大空を見上げながら温泉に浸かるのも悪ぅない。

「……ん?」

空を見上げた時、 何かが目に映る。

それは、 鳥類とか竜とかではなく。

ただ飛んでいた。

「ニルヴ、 ありゃなんだ?」

『ぬ? ……ほぅ、 あれはヘルクラウドだな』

ニルヴが言うには。

空を浮遊する島。

いわゆるラピ〇タ。

どうやら、 アトラクションランドらしい。


「次の行き先はあそこで決定だな」

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