討伐イベント2
そうと決まれば、 まずは情報収集だ。
そもそも何の魔物が住み着いたのかなどを知り得ないと、 対策の仕様もない。
だが……。
鬼人種の店主によると、 今まで編成された騎士軍、 魔物討伐用で出動した騎士達は、 1人も生存していないらしかった。
なので、 魔物が何なのかすらも分からず終いらしい。
そこで、 俺が思い着いた作戦。
「ロキ、 お前は探索系だとか感知系魔法とか覚えてたりする?」
すると、 ロキは少し頭を下げながら、 神であれど生命感知は出来得ないことを説明する。
「しかし、 千里眼ならばもっております」
千里眼っつーと、 あれか。
遠くのものが見えるとか、 そう言う類いのスキルだろう。
千里眼を使えば、 多少なりとも遠くから探索することが出来るので、 情報収集はしやすい。
となると、 先に下調べする必要がありそうだ。
そうと決まれば話は早い。
リュック型のバッグの中に、 必要最低限のものを入れていく。
体力回復用ポーション。
魔力回復用ポーション。
短刀。
縄。
非常食。
マーカー探知地図。
因みにこのマーカー探知地図とは、 出会した相手に呪いの類いの呪詛を付け、 マーキングすることが出来る地図だ。
モン○ンのペイントボールに似た代物だ。
とても便利。
一狩りいくなら欠かせない物だな。
「さて……準備は出来たか?」
「はい、 いつでも」
「私も出来ました!」
「----待て、 お主ら」
その声の主は、 言わずもがなヘパイストスだ。
「どした? …………まさか」
「そのまさかじゃ、 完成した」
ヘパイストスの腕には、 布に巻かれた棒状のものが抱かれていた。
「それが……俺の剣」
「お主ら、 今から水源へと向かうらしいの?」
さすが神だった。
話の流れが早い。
「そうなんだが、 魔物の情報が全く無いもんだから、 ちょっくら偵察にでも行こうかと思ってよ」
「ならば、 この剣の最初の相手はその魔物ということか……かかっ、 なんとも滑稽じゃのぅ」
そういって、 俺に完成したばかりの剣を手渡す。
「名を決めよ」
「……名?」
「そうじゃ、 古来から剣に真名を付けることで、 その剣は持ち主の力に答えてくれるものじゃと信じられておる……」
神の御加護というやつじゃ、 と、 神が言うのも実に滑稽なものだ。
そして、 俺はその包みをあけ、 鞘から抜き、 刀身を目にする。
それは、 二対の剣だった。
「双剣、 か」
一対は、 刃を紅く煌めかせている。
そしてもう一対は、 蒼く揺らめいている。
紅と蒼の双剣だった。
「か、 かっけぇ……」
右に紅、 左に蒼を手に持ってみる。
何故か、 今までもそれを持っていたかのようなしっくり具合。
「……かかっ、 お主はやはり見込みがある様じゃな。 刃達は主を所有者と認めているようじゃ」
確かに、 柄を通じて力が湧いてくる。
「真名は……ジェミニだ」
「じぇ……みに?」
ルルが、 聞かない単語に小首をかしげる。
「俺の国では双子座の事をジェミニとも呼ぶんだよ……」
俺の国とかいったら、 俺の国がアメリカに成りかねないが……そんなことは放っておこう。
「双子、 か」
ヘパイストスは、 優しく笑った。
「確かに其奴等の素材で使用したのは双子の魔物じゃのう」
……素材で使用された魔物の事は敢えて問わんどこう。
そして、 俺は1度双方を振るう。
と、 俺の周りに風が舞う。
「其奴等は、 風の魔物を使用しておる故に、 エレメントは風じゃろう」
俺は、 双剣を眺め……。
叫ぶ。
「キタコレ!! やっと俺にも武器らしい武器手に入れて……これが、 これでこそ異世界だぜ!」
鞘に双剣を直す。
「これも主にやろう」
そう言ってヘパイストスが俺に渡して来たのは、 剣士が腰に付けているホルスターだった。
「飛龍の鱗で作ったものじゃ、 そう簡単には壊す事は無かろうよ」
「……ありがとよ、 ヘパイストス」
「なに、 これで温泉に今一度入れると言うなら安いものよ」
そして三度、 かかっ、 と笑う。
「行って参れ」
「おうよ!」




