反逆者
「ここが……ラライヴシティ」
やむを得ず、 ロキにテレポーテーションの魔法を使わせ、 目的地へと到着した。
そこは、 やはり工房地帯と言える程に、 熱気に満ち、 煙突から溢れ出る黒煙で空を覆っていた。
「主、 まずはヘパイストスの元へ向かいましょう」
「あぁ、 そーなんだけどさ……」
と、 俺は辺りを確認する。
ラライヴシティの正門らしき場所へテレポートしてきた俺達だが、 明らかに辺りの様子がおかしい。
どこかそわそわしている。
「ここは余所者に厳しい地帯か?」
「確かに、 ヘパイストスは用心深い所はありますね」
そして、 ここにもいる。
「おい」
「----にゃッ!!?」
ルルの耳をさわさわと撫でると、 ビクリと全身を跳ねさせる。
「さっきからキョロキョロしてっけど、 なんかあんのか? 」
「い、 いえいえいえ……なななな何も……ありませんけども……?」
うわ、 めっちゃ眼が泳いでる。
よし、 ここらで上下関係とやらを見せつけてやろうか。
そう思い、 俺は魔法を発動させようと----
「---主ッ!」
ロキの忠告も時既に遅し。
一瞬にして俺達の周りは、 ガチガチの鎧に身を包んだ警備隊らしき兵士に囲まれた。
おぉ……仕事の早いこと。
「貴様ら何者かッ!!」
覇気を漂わせる怒号を放つ兵士。
「我らは、 ここラライヴシティの長、 ヘパイストスの招待によって参った者だ。 決して反逆者ではない」
反逆者。
一般人は魔王軍隊のことをそう呼ぶらしい。
「証拠を見せろッ!!」
「……どうしますか、 主」
「……しゃーねぇな、 問題事起こしたのは俺だ。 責任とろう」
そして俺は、 ロキより1歩前へ出る。
「俺が一行のリーダー、 リョウだ。俺達はヘパイストスに会いに来ただけで、 何もする気はない」
この世界で効果があるのかは不明だが、 作法に習い両手を上げる。
「だから証拠を見せろと言っているのだッ!!」
「じゃあ、 俺達が反逆者である証拠を見せろ」
「何っ!?」
こう言う言い合いの場合、 場の雰囲気を掴んだ方が有利な立場に立てる。
向こうの流れに流されず、 自分の流れへと変えることが重要だ。
「あんたがこの兵隊さん達のリーダーか……じゃああんたに質問だ。 反逆者がどういう奴らか知ってんのか?」
「当たり前だ……。 この世界を滅ぼし、 我が物にしようと---」
「----あー……違う違う。 してることじゃ無くて、 『見た目』だよ」
「そんなもの…………」
やはり。
俺は、 無意識に口角が上がる。
「知らねーのに俺達を反逆者扱いしてんのか?……おいおい、 名高い警備隊もそんなんじゃ名折れだろうよ……」
押し黙る警備隊等は、 リーダーの顔を見眺める。
「……ぬぅ、 一体どうすれば----」
「----何をしておる」
悩み出したリーダーに、 響き渡る凛とした声を掛ける女性。
女性としては、 多少目のやり場に困る程に大胆な、 油汚れが目立つ白いタンクトップを着ており、 ダボダボの作業着を着用している黒髪の女性だった。
「反逆者か?…………おや、 そこに居るのはロキ殿ではないか」
「久しぶりですね、 ヘパイストス。 此度のお招き、 光栄です」
紳士らしくシルクハットを脱ぎ、 綺麗に一礼する。
「招き……? あ、 あぁ……そうじゃったな。 そうそう、 すまぬの、 アウル。 彼奴等は儂の連れじゃ……連絡を忘れておうた」
「い、いえ……滅相もありません。 それより、 此度の無礼、 私が全ての責任を……」
「良い良い……道を開けてくれ。 久しぶりの客じゃ」
そして、 こちらに振り向き、 手招きする。
「逝くぞ」




