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公園デビュー

 滑り台から、勢いよく降りてきた息子は、そのまま走って砂場に飛び込んだ。


 多分2歳だろうと思われる、息子より一回り小さい女の子が二人、びっくりして息子を見た。


「こらこら。お前はお兄ちゃんなんだから。気をつけて。小さい子にぶつからないように」


 女の子たちは、また砂の山を作り始めていた。


 その女の子に付き添っている、母親らしい女性2人が、私に軽く会釈をした。


 私もそれにならって、ペコリと頭を下げた。


  

 公園に子供を連れてくるだけなのに、二人は完璧な女性だった。


 少し茶色く染めた、セミロングの髪は軽く巻かれていて、手入れが行き届いているのか、艶やかに輝いている。


 自然に作られた眉、グロッシーなリップ、そして、上質なカットソーにジーンズ。


 さりげなく、子供のおもちゃ入れにしているのは、ブランド物の紙バックだった。


 小さなおもちゃのスコップで、砂をかき集めながら、私は自分にかかった砂を立ち上がってはたく。


 商店街で購入したよれよれのパンツ、スーパーで買ったTシャツに量販店のカーディガン。


 パンツの裾はすれて黒ずみ、内側と外側の長さが微妙に違っている。


 誰が見ても、質が悪いのが分かる。


 妙に恥ずかしくなって、すぐに座り込んだ。


 パンツのひざ部分は、長くはいているため、色が薄く褪せていた。




「あのー、この公園によくいらっしゃるのですか?」


 母親らしい女性の一人に聞かれた。


「ええ、近いし・・・。たまに・・・」


 ノーメイクで行商のおばさんスタイルの私は、うつむいて答えた。


「私たちも、近くなんです。実は引っ越してきたばかりで・・・。いろいろ教えてください」


 二人は、嬉しそうにそういった。


 とても感じがよく、かわいいお母さんの二人は、にこやかに私に話しかけてくれた。


「でも、お二人ともおしゃれですねぇ」


 そう言いながら、チラッと二人を見ると、目を見開いて


「すっぴんですよね?」


 え?


 素顔だけど・・・それすら恥ずかしくなってきた。


「きれいですねー。私達とか、絶対スッピンじゃ歩けない」


 二人は顔を見合せて笑う。


 ほめられているのか、ばかにされているのか・・・。


 化粧品なんか、しばらく買っていない。


 欲しいと思うけど、生活費がぎりぎりだから、買えない。


 当たり前のように美しく化粧をして、当たり前のようにブランド服を身につけて。


 羨ましくてしかたがなかった。


「だって、化粧とか最近してないから」


 そう言い返すのが精いっぱいだった。


 公園なんか・・・来るんじゃなかった。


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