第2話 外出
久しぶりに、朝から天気がいい。
子供を連れて、散歩に出かけることにした。
本当は、今年から幼稚園に入れたかったが、私立に入れるのにお金がかかるからと旦那が却下した。
子供部屋を作って、早く一人で寝れるようにしろ、と独立心を育てたいという願望とはうらはらに、金によって、子供の社会とのつながりを軽視している。
2年保育より、3年保育にしたほうがいいに決まってるのに。
十分稼いでいるはずなのに、私と子供のために金を払うことを渋る。
そのときも、言えなかった。
早く幼稚園に行かせて、私も自分の時間を持ちたいと。
そんなことを言えば、また冷笑されるに違いなかった。
何もしなくても、軽蔑の目で見られている私には、これ以上の屈辱は耐えがたかった。
子供のために、旦那と戦うこともできず、結局酒に逃げている自分に嫌気がさす。
たまには外で、遊ばせるのもいいんじゃないだろうか。
私も酒から離れられる。
朝から出かけたかったが、結局掃除や洗濯をしている間に、昼になってしまった。
でも出かけようという気持ちに迷いはなく、今出るのをやめたら…ここで昼御飯を食べてしまったら、結局酒を飲んでしまう。
このまま出かけた方がいい、そう思い、ベビーカーを用意した。
「ママ、ベビーカーにはもう乗らない」
もうすぐ4歳を迎える息子がそういった。
「でも、帰りに疲れたり、お買い物したりしたら、ベビーカーがあったほうが便利だもん」
息子を見ながら笑顔を作った。
「ボクが押してもいい?」
きょとんとした顔で、覗きこまれた。
なぜか涙がでてくる。
「いいよ。いいよ。お利口さんだね、お手伝いしてくれるんだね」
私たちは、ベビーカーという大事な荷物を押しながら、公園へと歩き始めた。
5月。久しぶりに外出すると、日差しの強さに驚かされた。
肌寒い日が続いていたから、今日も薄いカーデイガンを羽織ってきたのに、少し進んだだけで、うっすらと汗ばんできた。
子供は長袖のTシャツが、肌に張り付いて、耳の横から汗を流しながら元気にベビーカーを押している。
近所の公園へは、大人なら5分も歩けばつくのだが、3歳の子供、しかもベビーカーを押しながら、たどたどしく歩いている子供の足では、15分くらいかかった。
公園に入ると、さっきまで一生懸命押していたベビーカーを捨てて、滑り台に向かって走り出した。
――――この間まで、よちよち歩きだったのに・・・。
しっかりと自分の足で走る息子を見ながら、成長の喜びに浸っていた。
公園には、数人の子供たちが遊んでいた。
中でももうすぐ4歳になる息子は、ずい分お兄さんに見えた。