鍛冶指南
「青年は短剣の製作に興味があるんだっけ?」
「ああ。いつか、自作の短剣で戦ってみたいからな」
カロンはハガネに短剣製作について話し、アドバイスをもらったことがあった。
その時に、製作には材料が大量に必要だ、と教えられ、カロンは鉱石集めに精を出しているのだ。
「ちょうど、武器を作るつもりだったし、作業を見てくか?」
「いいのか?」
「構わんぞ」
武器の製作について、カロンもいろいろと調べてはいるが、実際に作業の流れを見せてもらうことは、何よりの経験になる。
ハガネの申し出は、カロンにとって、非常にありがたいものだ。
「じゃあ、まずは材料になるインゴットの精製からな。こっちに来てくれ」
ハガネが小部屋の一つへと入っていく。
その後をカロンもついていった。
「インゴットの精製にはこの溶鉱炉を使う。作りたいインゴットを選択すると、材料と数が表示されるから、必要な分だけ溶鉱炉の中に投入すればいい」
説明しながら、ハガネは溶鉱炉のコンソールを操作していた。
アイテム欄から材料となる鉱石を取り出すと、溶鉱炉へと投入する。
一連の作業が終わると、タイマーが出現し、表示された数字が減っていく。
「後はこの数字がゼロになれば作業終了。成功率は、材料を投入した時のインゴット精製のスキルレベルと、この作業を行った回数によって決まる。もちろん、スキルレベルが高く、作業回数が多いほど成功率が上がり、かかる時間も短くなる」
「なるほど。スキルレベルを上げる、作業回数を稼ぐために、材料が大量に必要なる、ってことなんだな?」
正解だとハガネが頷く。
「インゴットの精製が出来るんなら、鉱石よりも、インゴットにしたほうが高値で売却できる。使う側からすれば、一手間省けるからな」
この意見は、実際に武器の製作を行っているハガネならではのものだ。
「次は、武器の製作。今度はこの金敷と火炉を使う。手順は、インゴットと同じだ。製作したい武器を選択して、材料を投入すればいい。違いは、インゴットの精製よりも時間がかかること、スキルレベルと作業回数での成功率上昇と時間短縮以外に、武器の性能が上がることだな」
「質のいい武器を作ろうとすれば、やっぱり大量の材料が必要になるのか」
「その通り。材料をいかに確保するかが、重要だな。だから、俺は露店をしながら、材料確保のために買取をしてる」
実際に製作を行っているハガネの意見は、これから製作を行おうとしているカロンにとっては有益なものばかりだ。
「製作ってずいぶん簡略化されてるんだな」
「材料を投入しちまえば、あとは自動だからな。工房内の他の設備を使って、いくつかの製作を同時に行う奴も多い。俺は、アクセサリーの製作をしたり、露店を出してるぞ」
ハガネのおかげで、調べただけではわからないことを、カロンはいくつも知ることができた。
「さてと、俺は武器とアクセサリーの製作をするか。時間があるなら、溶鉱炉を使ってインゴット作ってもいいぞ」
「いいのか?」
「今日は、溶鉱炉を使わんから、構わない。それと、入り口のドアのとこにあるでかい箱が倉庫につながってる。そこから倉庫の材料を取り出せるぞ」
「便利だな。じゃあ、遠慮なく使わせてもらうな」
カロンは鍛冶師に職業チェンジすると、倉庫にある鉱石を取り出すため、箱へと向かう。
鍛冶師で作業すれば、時間の短縮、成功率や性能などに職業ボーナスがつく。
このため、鍛冶師に限らず、製作を行う際は、製作するアイテムに対応した職業にチェンジする。
これは常識といってもいい。
「最初は失敗ばっかだけど、そのうち成功するようになるから気長にやれよ」
ハガネは、自分も経験した道のりをたどるカロンに、そうアドバイスを送った。