10分休憩
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
――起立、気を付け、礼
――ありがとうございましたっ!
席に座ると私は「んーーーっ」と凝り固まった体を解すために軽く背筋を伸ばす。
ストレッチを終えるとバッグに教科書をしまい、次の授業の教科書を取り出す。
この一連の作業を終え、さて、ちょっと喉が乾いたから自販機でお茶でも買ってこようかなと思い席を立とうとした時のことだった。
「ねぇねぇ」
あぁうん。毎度思うんだけど、どうしてこうタイミング良くお前は現れるんだろうか。
「……なんだ?」
これから飲み物を買いに行くはずだったのに、お前の所為でタイミングを逃してしまったじゃないか。という意味合いを含めて、目の前にのうのうと現れた件の人物であるコイツに呆れた視線を送る。
しかし全く効果はない。
「あのね、さっきの授業で思ったことなんだけど――」
何だ、私に分からないことを質問しようと思って来たのか。勉強熱心なやつだ。
「よく王道バトルファンタジーとかで、「ここは俺に任せて先に行け」ってあるでしょ?」
…………ん?
「あ、あぁ。そうだな」
この話の導入に一抹の不安を感じながらも、私は相槌を打つ。
ここは俺に任せて先に行け。多くの人が知っているであろう、この台詞がきたら「あっ……」とこの先の展開が予測できてしまうほどの「死亡フラグ」だ。
「でもさ」と前置きをして、コイツは言った。
「仲間を先に行かせて1対1で戦うよりも、皆でフルボッコにした方がいいと思わない?」
コイツの言葉にため息が漏れた。
まぁ、そんなことだろうと思ってたよ。
それにしても、「フルボッコ」なんて中々に物騒な言葉がコイツの口からでるとは、新鮮だな。
「確かにその方が現実的には堅実かもしれないな」
「でしょっ!」
私が一応の肯定を示すと、コイツは私が同意したのが嬉しかったのか笑顔を見せる。
「しかし、それは「現実的」な問題であって、「物語的」、「パフォーマンス的」には非現実的だな」
「えっ、現実的なのに現実的じゃないの?」
「まぁ、あくまで私の意見でだけどな。魅せ物として、読んでいる人を楽しませる物として。どうだ? 物語も最終章で相手は四天王の一人。そんな奴に一斉に襲って、週間雑誌一週間分で終わってしまう展開というのは――」
四天王「フハハハハ! 勇者たちよ! よくぞここまでたどり着いたな!」
主人公「四天王だ! みんな一斉に掛かるぞっ!」
仲間『オーーーーーーーーーッ!』
四天王「えっ!? こういうのって普通1対1とかが定石じゃ――」
主人公「そんなの知るかっ! これが一番冴えたやり方だろっ!」
四天王「そ、それは確かに……、グオォォォォォォォォ!!」
主人公「さて、一人倒した。あと残るは3人か」
「うわぁ……、これはヒドい」
回想の酷さに、ゲンナリした表情をみせる。
「だろ。こんな展開じゃ読んでいる方も面白くないだろ」
「うん、キミの言いたいことが分かったかもしれない」
あはははは、とコイツが苦笑いをする。
さて、コイツの疑問も解決したことだし飲み物を――、
授業を知らせるチャイムが鳴った。




