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一発逆転

いつ何処で真っ当な料理をフレアが覚えたのかを、いい歳をした大人達が大騒ぎしながら言い合っている頃、当のフレアは宿舎でハル達に問い詰められていた。

「ホセがお前を追い掛け回すのは良く解かった。だがな、奴が云った言葉を聴かなかったか?」

ハルの声にランスも、

「『ちびの男はどいつだ。』そう云ったな。」

「俺達とお前は陸短で初めて会った、と云う事は俺達じゃない。過去お前と接点が在るのは一人だけだな。」

オリ-がにこやかに振ったがフレアは頬杖をついたままあっさりいなした。

「本人にも云って無いのに、何でお前達に云わなきゃならない。」


夕方の早い時間だしゲスト用に用意された宿舎の居間には研修チームしか居なかった。

ホセの言葉を完全に突っ込む気満々だった一行は、此処に入るなりルウを追い出して腕をまくっていたが、その肯定とも云える言葉で撃沈した。

大きなため息をついてハルが尋ねた。

「なるほど。 勝算はあるのか?」

「さぁな。」

「うんと云うかな、あの人が。」

オリ-が腕を組んで真顔で呟く。

「年齢差はともかく、お前の親は戦友だろう。」

それにフレアは反応した。面白そうな表情で、

「年齢差はともかく、なんだ。男は気にするポイントじゃ無いって事か。」

くすくすとオリ-は笑う。

「男冥利に尽きるだろう、若い女性からのオファーは。俺だったら嬉しいが。」

「若い・・・女性?」

デイルがボソッと言った途端フレアの視線が突き刺さり、思わずデイルは眼を逸らす。

エランが笑った。

「四歳からは長い時間だな。ある意味相当しつこいタイプだぞ。」

「俺的にはよく記憶があると驚いてるんだが。」

ハルが呆れたように告げた。

「それでいつ告るんだ。」

フレアが頭を掻いた。

「迷ってる。今がそんな時じゃないのは承知してるし、相当やる気になってるからな。

気を散らしたくない。」

「らしくないなぁ。当たって砕けろがモットーだろう、お前は。」

デイルの言葉にフレアは肩を竦める。

「砕けるのが私なら良いさ。向こうが砕けたら話にならないじゃないか。結構繊細なんだぞ、あれでも。」

と、顔を上げた。

「お前達は笑わないんだな。」

男達はその妙に大人びた優しい表情の仲間に微笑んだ。

「同期の仲間の恋を誰が笑う。頑張れよ。」

ハルの声は優しく響いた。



研修は順調でフェニックス基地周辺の細かな任務と、戦闘訓練や情報機器の講義、北南米の情報など詰め込めるだけ詰め込んで一週目が終わる今日は野外訓練に入っていた。

モクとデイルのスナイパーコンビによる戦闘兵士との連携は、キリ-とキッドも参加して熱が入っていた。

動きを覚えるには野外でないと無理が有るが、立川連隊では手狭で限られた動きしか出来ない。

その点このフェニックス基地は基地から外は広大な自然しかない。

訓練場所としては最適であった。

利き目ではないとは言え狙撃の腕はやはりモクが卓越していて、デイルはモクどころかキッドにまでして遣られて落ち込んでいたが、大人三人の宥めと励ましと煽てを受けてやっと気を取り戻していた。


「腕が落ちて無いな、暁にはお前が教えたんだろう?」

モクの低い声にキッドは笑って銃を降ろした。

「最低限だよ、あれは狙撃手には向かないし私は貴方ほど教えられないからね。」

それに、とキッドが続けた。

「こんな練習は出来なかったから。」

少ない予算をやり繰りして弾薬を押さえていた状態では実戦でしか使いようがない。

それも無駄弾は撃てなかったと笑う。

ましてシルバーチップは高価で未だに買えないとも。

過去の経験から此処での練習用に、山ほど運んで来たモクに誰よりも喜んだのはキッドとキリ-だった。

「実弾で練習は出来ないな、確かに。」

今の己の状態ではシルバーチップでも心許ないがオリ-やリオウならばカバーの範囲内だった。

だがキリ-やフレアとなると・・・精度を上げるしかない。


そして連携を始めて僅か三日で自分でも驚くほどの域に達していた。

むしろ利き目でない方が余計な力が抜け集中できるようにも感じる。

その精密さ、弾の数ミリまで見切って撃ち分ける技術はもはや神技とも呼べる。

躊躇も無く全力で走り抜けるフレアの援護を完璧にこなしその背中を完全に護っていた。


呆れたようにキッドとキリ-が顔を見合わせた。

「・・・・何でだ。」

「一般的に身体能力は年齢と共に落ちるが戦闘兵士とスナイパーでは使う力が違うし、精神的な要素が与える影響が大きい。休んだ事で、そして本人の意思で復帰した事で良い結果が出たんだろう。」

「ちびの最大戦速でも余裕だ・・・気持ち良いだろうな。」

「羨ましいか。もう出ないからな、あの速さは。」

笑うキッドの頭を軽く小突いて肩を包む。

「おい、仲が良いのは結構だが此処でいちゃつくな。手元が狂う。」

ふと銃を降ろしてモクが苦笑した。

「暁に中てたらまた泣かれる。」

コールを出して練習終了を告げると一つしか無い眼をキリ-に向けたが、

「何だ、おかしな顔をして。」

夫婦揃って妙な表情を見せてキッドが尋ねた。

「泣いた? ちびが?」

「ああ、去年それで連絡しただろう。レインとの連携で被弾して、相当怖かったのかしがみついて大泣きした。相変わらず鼈並みに張り付いて剥がすのに苦労したぜ。」

キッドが答える前にルウがフレアとオリ-、リオウを連れて戻って来た。

「気持ち良く走れた、やっぱりモクは凄いなぁ。」

開口一番の満足気なフレアの台詞にまんざらでもなさそうな表情でモクも笑った


一同が連携プレーの練習から帰ると情報端末のレクチャーを受けていたエランとランス、ハルがホセと揉めていた。

間に入ったイヴがうんざりした様な顔であしらっている。

「いい加減にしろ、しつこい奴だな。」

「ホセ! お前はまた何をしている!!」

すっ飛んで行ったフレアにホセは酷く真面目な顔を向けた。

「安心しろ、手を出す気は無い。だが話だけは着けたい。お前が惚れて日本まで追いかけて行った男はどれだ。」

ハルが眉間を押さえ、オリ-が動きを止める。

聞き間違いのない言葉に狼狽えたのはフレアだった。

「・・・馬鹿を云うな、そんな事の為に日本に云った訳じゃ無い。」

「確かに表向きは仕事だろう、だが俺はお前が十歳の時に云った言葉を知って居るぞ。『もう十歳だ。大きくなったから日本に行く。』そうキッドに云っただろう。俺が此処に来る前に居た男との約束を・・・」

バスッ!

全体重の乗った実に見事なストレートパンチがホセの鳩尾に炸裂した。

膝を落したホセは当然声も無い。

背を向けて走り去るフレアを見送ってキッドは困った様に頭を掻いた。

娘そっくりな仕草にハルは内心笑ったが、その視線を隻眼の男に向けて眼を逸らした。

判らない訳が無い。

そして誰もが言葉を失くしたなか。


「デイル、これを預かってくれ。」

静かに告げると自分の狙撃銃をデイルに渡して男は足を踏み出した。

フレアの去った方向に行きかけて振り向いた。

「キリ-、そいつを押さえておいてくれ。」

目線が蹲ったままのホセに投げられ、キリ-が応えた。

「承知。」



「良い牧草地だな、俺は街中の生まれだからこういう仕事は出来ないが気持ちの良い処だ。」

牧場の囲いに凭れたフレアの背中に穏やかな声が掛かった。

消してない足音と馴染んだ気配で、誰が来たかは声を聴くまでも無く解かったが顔も上げない、いや上げられない。

「気にしてるのか? どうせホセは勝手に思い込んでいただけだろう。お前が取引の為に日本に来たのはみんな知ってる事だ。」

ポンとフレアの頭に柵越しに手を乗せる。

「一石三鳥で来たんだろ。」

だから、と云いかけたモクを遮ったのは低いフレアの声。

「違うよモク。私は貴方を追いかけて日本に行ったんだ。」

するりと立つと柵を挟んで真向いに立った。

「ごめん。こんな形でこんな時期に云う気は無かったんだけど。ホセが云った事は本当の事だ。」

真っ直ぐモクを見つめて、

「貴方が好きだ。」

沈みかけた夕陽を浴びて、眩いほどフレアは綺麗に見えた。

「貴方の傍に居たい。貴方には釣り合わないのは判ってるけど、でも貴方と一緒に生きたいんだ。」

沈黙は永く・・・永く・・・


(お前の好きなレースの様な真昼の月も、遥かな夜空を彩る星も、お前が望むなら盗って来よう。

一つ残ったこの眼も心臓も、お前になら喜んで呉れてもやろう・・・だが。)


そしてモクが告げる。

「お前を貰うことは出来ない。」

一言の釈明も無く、言葉の中に曖昧な欠片も無い、それははっきりとした拒絶としか聞こえなかった。

これ以上ない、そして間違いのない言葉だった。

「帰るぞ。」

それでもモクはフレアが動くまで待ち、今までと何の変わりも無いように歩き出した。



「ちびは?」

エラ-の問いに応えたのはキリ-。

「屋根裏部屋に籠って飯も喰わない。」

「見事玉砕した娘の敵討ちはどうする?」

溜息を吐いたキリ-にエラ-は続けた。

「俺の経験からすると多少強引なやり方の方が旨く行く場合も有るんだが。」

「それはお前の場合だけだろう。」

胡散臭そうなキリ-をエラ-は鼻で笑った。

「コオに蹴り込まれたお前にだけは云われたくない。」

ギョッとした表情でキリ-が狼狽えた。

「な、何でそれを知って居る・・・」

滅多に見せない男の動揺しまくった顔を実に楽しげに見てエラ-が囁いた。

「ガールズトークを侮るなよ。」



「どうして男は女の気持ちが解からないかね。」

イヴのぼやきに呑気そうにキッドが笑った。

「詰まんない事に拘り過ぎるんだね、歳だの世間体だの。」

「笑ってる場合か?」

「モクの気持ちなんか判るだろ、心配ないさ。」

呆れたように肩を竦めて、

「私達に判っても本人が判らなきゃ駄目じゃないか。」

「・・・・・それもそうだ。」



「ホセがあそこでああ出るとは思わなかったな。」

ランスの声に応えたのはハル。

「馬鹿な野郎だ、大人しく兄弟やってれば良いのに。」

珍しく声に怒りが込められている。

「暴露したってフレアが自分の物になる可能性なんて欠片も無いのに。」

「ラテン系は短絡だからな。」

オリ-の言葉に珍しくリオウが声を上げた。

「単に身勝手と云うんだ。女性の気持ちも判らない奴は愛の恋だの言う資格なんかない。」

おおぉっ、と思わず全員が歓声を上げた。

「フレアの可愛い恋心を汚い手でつつく奴は許せない。」


そうだそうだ、思い知らせてやれ、とおかしな具合に盛り上がる若い声を通路を挟んだドア越しに聴きながら、モクは自分の部屋のベッドに転がっていた。

複雑な心境を分析するまでも無い。

自身がどれほどフレア・・暁を待っていたか誰よりも承知している。

最初は確かに自分の子供の様に思い、父親ぶっていなしていた。

だが陸短で再会した暁は、G倶楽部で共に過ごす暁は既に子供では無かった。

自分の気持ちに気付かない振りを続けたのは眩しかったからだ。

弾ける若さと躍動感が、艶やかな肌が、ハルやオリ-、リオウ達と笑う姿はモクにはただひたすら輝かしく見えて真面に眼も向けられない。

釣り合わないのは暁じゃない。

父親のキリ-よりも年上の自分が、義務も責任も逃げて来た自分が、あの煌めく暁にふさわしい訳が無い。

だから決めた、何が有ってももう心を揺らすまい。



だがその決意は実にあっけなく崩れ去った。

翌朝ルウが飛んできて告げたのは、

「大変だ、ホセがちびに勝負を仕掛けて来たっ。」

「何でそうなる。」

尋ねたモクをルウは初めて怒鳴り飛ばした。

「あんたのせいで何時ものちびじゃないぞ! 負けたら嫌でもホセの嫁だ!」

一瞬にして血の気が引いた。


転がるように駆けつけたモク達の眼に信じられない光景が映った。

ボロボロになったフレアと対峙する意気盛んなホセ。

一目で判る。今のフレアがホセなど相手に出来無い事は。

寝て無いのだろう、顔色も悪く小柄な身体がより一層小さく見え脚も動きが悪い。

見てる間にも殴られる。

「止めさせろ。」

見ていたキリ-の肩を掴んで叫んだが、

「駄目だ。これは此処のルールだ。」

酷く冷静な声にモクがぶちぎれて怒鳴る。

「何がルールだ!」

飛び出そうとしたモクをキリ-の手が止めた。

「タイマン勝負を受けたのはちびだ。介入は出来ない。」

「応援なら出来るよ、モク。」

イヴが真顔で囁いた。

「四歳からの想いは気の迷いとは言わない。」

キッドが続ける。

「親の私達でも泣き顔なんか見た事がない。貴方だからそれを許せるんだ、自分自身に。」

「此処で負けたらちびはホセの嫁だ、奴は十四歳のちびをレイプしようとした男だぞ。」

真剣なエラ-の声が耳で爆ぜた。

ハルやオリ-達の声援で多少は持ち直したフレアだが、初手の数発が効いたのか脚が心許ない。

捉まれば体重で押し切られるだろう。と、ホセの腕が伸びフレアの胸ぐらを掴んだ。

瞬間!

「暁! 勝って此処まで来い!!」

咄嗟に出た声に全員が振り返った。

今しも殴られかけたフレアの身体が跳ねた。

距離を取って眼がモクを捉える。それに向かって、

「負けたら許さんぞ!俺の処へ来い!!」

おおおっっ!!!

フレアとホセの勝負よりも注目を浴びながらもモクはもう気にもしなかった。

視界のなかには暁しか居ない。

あの、遥か昔の別れ際と同じ・・・真っ直ぐな眼差し。

その暁が僅かに頷いた。

と、いきなりの反撃に出た。


転がったホセに眼もくれずフレアはゆっくりとモクの前にやって来た。

唇は切れ、頬は腫れている。

細い顎には擦り傷が出来て脚も引きずっている。

モクの手が伸びその身体をしっかりと抱きしめた。

「参った、降参だ。」

「嫌々なら殴るぞ。」

「・・・・喜んで降参する。」

「好きだって言ってくれ。」

「・・・・二人の時まで待て。この状況を見てみろ。」

顔を上げたフレアの眼に新旧のG倶楽部員が笑いながら囲んでいる光景が映った。

「こう云うのを野次馬って云うんだな。」

「馬鹿が、単なるデバガメだ。」

突っ込みはやはりハルから入った。




「ちびが十歳になるまでモクを覚えているとは思わなかったんだ。一言も云わなかったからね」

フレアの手当てをして寝かしつけてからキッドが話しはじめた。

キリ-夫婦の居間には夫妻とエラ-夫妻、ルウとモクだけだった。

珈琲を渡しながらキリ-が続けた。

「十歳の誕生日にいきなり云い出した。『大きくなったから日本に行く、モクが待ってる。』俺は言葉も無かったよ。

日本に行くのは良いが、如何に何でも十歳児をあんたに押し付ける訳には行かないからな。困り返っていたらディランが助けてくれた。『身長が伸びてる間は大きくなったとは言わない、十六七歳までは伸びる筈だ。』家庭教師の言葉は親よりも効いたようで以後は毎日身長を計り続けていた。」

差した指先には小刻みに印しのついた柱。

「エラ-から聞いたが荒れていた原因はホセか。」

「そうだ。十歳宣言で火が点いた・・・と云うよりこのままじゃ盗られると思ったんだろう。ホセはちびと一緒になる心算だったから。」

「毎日追い掛け回して、十四歳の時に押し倒そうとした。」

イヴの言葉にさすがにピクリと反応した。

「キリ-よりもキッドが怒ったねぇ。半殺しにされて、以来キッドには一言も逆らわない。ちびも一切隙を見せなくなったけど、もう怖いぐらいピリピリしてた。」

エラ-が引き取った。

「陸短で貴方が待ってるなら早く出してやろうと、どうせ経歴なんか詐称しなくちゃならないから歳も同じだと意見が一致したんだ。」

つまり、とキッドが締めた。

「ちびの恋は私たちみんな知って居たんだ。ただこれは本人が云わなくちゃならない。釘は挿したけどね。

モクに既に相手が居た場合、真剣に嫌がった場合は諦めろ、食い下がる事は許さないと。

ちびには一発勝負だったからホセの暴露はやりきれなかった筈だが・・・まぁ、まとまって良かった。」

呆れてしまう。

「良ったと云うのか? こんなオヤジの何処が良いんだか俺にはさっぱり判らんぞ。」

憮然としたモクに全員が笑った。

「嫁にしようと、恋人でいようと、戦闘兵士とスナイパーコンビだろうと形なんか構わない。ちびを好きなら一緒に生きてやって。あれはもう四歳からあなたの物なんだ。

戦闘兵士としての力をつけたのは貴方を護るためだし、独学で料理を覚えたのも好みの激しい貴方の為なんだから。」

キッドの言葉にキリ-が深く頷いた。

「男が胃袋勝負で勝てる訳が無い。」

確かに、して遣られたのはモクだけでは無い。キリ-を落したキッドの教えが余す処無く後継に伝えられた見事な事例であった。




それとなく気付いていた事が在った。

フレアはG倶楽部として動く時必ずモクの右側に着く。

それはモクの死角を護るためだと解かって居たが、一日の終わりにモクの部屋で話す時は常に左側、モクの視界の中で笑顔を見せると。

輸送機内の今もモクの眼に映っていた。

ただ、今は笑ってはいない。

真面目な表情で読んでいるのはキリ-が作成したフェニックス、立川連隊両G倶楽部の過去の事案とこれからの課題のデータ。

こんな大人びた顔を見ると確かに子供には見えなかった。

いつまでも持ちそうも無いな、と苦笑した。

元よりそっちの自制心の緩さには自信が在る。


「どうしたモク、何が可笑しい?」

見るとギリギリまで研修を受けていた若手一行は疲れて爆睡中。

それを確認してフレアの耳に囁いた。

(頼むから、早く二十歳になって呉れ。)

フレアが頬を染める様は可愛い。が、返された言葉は、

(大丈夫、母ちゃんも十九歳だった。)

頭を抱えたオヤジににこやかに告げた。

「聴いただろ、ホセの事は。その騒ぎの後で母ちゃんとイヴとDr佐和の三人とでいろいろ話し合ったんだ、ガールズトークと云う奴だな。みんなの初体験の話は役に立つ。」

「・・・・・・そうか、そりゃぁ良かったな。」

情報筒抜けは覚悟しておこう。今更だが。

「明日からはガードの特訓だし、その後には本番のアルバインが控えている。帰りにベルリンに寄って来るんじゃちょっと先になりそうだな。持つか?」

「・・・・・・・努力しよう。」

モクに残された時間は確かに多くは無いし、フレアと共に居られる時間も限られている。

だがそれを承知してなら構わない。

自分の総てを好きなだけ持って行くが良い。



帰国した一行を迎えたアリスは誰よりも目聡く変化した二人の関係を見抜いたようだった。

お世話係は伊達では無い。

次に首を傾げたのはさすが女性のトーイ、ロブは気付かない。

モクとしてはわざわざ振れて周る気は無かったが、あっけなく暴露したのはフレア本人だった。

「モクに告白して付き合う事になった。」

満面の笑みで告げたフレアに真顔のロブの一声は、

「何の研修に行ったんだ。」

首を竦めたフレアは、だが瞬時に頭を切り替えた。

「安心しろ、研修はきちんとやったから。」


出したのはキリ-メモ。

「父ちゃんのレポートだ、部外秘だがみんな眼を通して置いた方が良い。」

大半のG倶楽部員が揃う中、レポートに沿ってモクが報告して行く。

これからのG倶楽部としての活動、その限界までをまとめた内容にロブが唸った。

「さすがはキリ-だ。今の世界情勢まで網羅している。」

「打ち合わせもして来た。これはロブ、お前の許可も居るんだが、先ずはハルを欧州に出す。ランスは此方の都合がつき次第キリ-に預ける。フェニックス基地では表の陸軍と絡んだ作戦までしているから此処でも考えた方が良いな。今後は裏も表も込みで動いた方が今の情勢から見て有利だと思うし。」

モクの言葉にロブも頷いた。

「そうなればあの二人も使えるか。」

「問題もあるがな。」

部外要員の二人は基地が違い、G倶楽部だけの都合で使える訳では無い。

まずはそれを動かして立川連隊に属させる。

出来れば一部隊丸ごとをG倶楽部直属と出来ればなお良い。

二人をその部隊に入れて置けば思う様使い倒せると云うものだが。

「実際動くのは来期だが今から当たりは付けておいた方が良い。提案は何時でも受ける。ロブか俺に出してくれ。」

締め括ったモクに一同は頷いた。





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