爆弾女
「ガキだと? ガキで何が悪い、女でどこが悪い。お前らだって母ちゃんから生まれて来たんだろう! 男で済みませんって云うトコだろうが、其処は!」
言葉が終わらぬうちに手が出る。
しかも飛びかかっての拳は自分よりもかなり高い位置の顎に炸裂した。
相手も黙っては居ない。
全く遠慮会釈の無い殴り合いに切り替わったが周囲も慣れたものですでに場も開けていた。
胸ぐら掴んで転がり合っての取っ組み合いに終止符を打ったのは酷く冷静な声だった。
「止めろ、馬鹿ども。」
騒ぎが一瞬で引くほどの冷ややかな声。
野次馬と化した周囲も、もそもそと立ち上がった当事者同士も黙って声の主の前に立った。
埃にまみれた作業着のシャツはベルトからはみだし、短い髪もかき乱され、顎先の擦り傷と額の擦り傷が互いについている事がいっそ見事な調和を保っている。
無論傷の名残に至っては顔だけに及ばず、汚れた作業着の下の肌にも付いているだろう事は想像するまでも無い。
統計的に週一の割合で起こる諍い・・・殴り合いはこの二か月、四月の入学式から始まって几帳面なほど続いていた。
「神崎、今日の原因は何だ。」
呼ばれた名の男子学生がピシっと背中を伸ばした。
「はっ、朝倉が男で生まれた事を謝れと云いました。」
すぐ横に並んでいた女子学生が実に不満そうな表情で男子学生を睨み上げる。
「朝倉。」
振れば必ず。
「はっ! 神崎が私の事を女の馬鹿ガキは黙ってろと云ったのが最初です。」
二人の前で男は額を抑えた。
暫くの間固まっていたがやっとその顔を上げる。
「済まないな、教官たちの指導不足でお前達のボキャブラリーと知識と礼儀が一向に向上しない様だ。
確か、先週も先々週もその前の週も同じ事を聞いたと思ったが俺の記憶違いだろうか。」
「「いいえ、違いません。」」
見事にハモッた回答を聞いた途端男の表情が変わった。
触れれば切れるほどに鋭い隻眼がふたりを見下す。
「神崎、朝倉。両名に罰則として便所掃除を命ずる。舐めるほどに磨き上げて来い。」
「はいっ。」
揃った敬礼で応え走り出した背中に声が掛かった。
「今回は教員棟だ。」
振り返ったまだ幼い顔が引きつり、もう一人もゲッと声を上げる。
「教員に笑われて来い。行け!」
走り出した背中に解散の号令が掛かるのを聞きながら二人は提示された教員棟へと向かった。
どちらも口も利かない。
それはこの短大に入った直後から続いた因縁のなせる技であった。
日本陸軍短期大学は陸軍士官大学に併設された一般兵士を教育する機関である。
士官を養成するための陸士大とはかなり異なり、入学はそれほどの難関では無い為最初はとにかく生徒数が多かった。
その最初からこの二人は仲が悪い。
二か月が過ぎ、200人を超えて居た筈の新入生が150人を下回った今でも事有るごとにいがみ合い、殴り合い、罵り合っている。
神崎晴海は22歳、四年制大学を卒業後陸短に入ったどちらかと云えば変わり種であるし、朝倉悠里は高校卒業後入学した18歳、これも変り種である。
大学が義務教育に等しくなった昨今、高校から直で陸短は稀だったし、四大を出た上で一般企業に就職しないのもこれはこれで変わり者である。
ましてこれだけの年齢差が有るならそうそうぶつかる筈は無いのに揉め事は必ずこの二人が絡んでいた。罰則は常に便所掃除。
一年生教棟から二年生教棟、一年生宿舎から二年生宿舎を交代で何度した事か。
今ではすっかりコツまで掴んで教員棟は初めてにも拘らず実に手際よく磨き始めた。
「おお、神崎と朝倉か。またやったのか、懲りないな。」
「此処は初めてだな、綺麗にしろよ。」
「曹長からの依頼だそうだぞ。お前らは便所掃除がめっちゃ得意だそうだな、頑張れよ。」
幾つもの声が掛かったがそれはどれも冷やかしの類から抜け出なかった。
「何でこうなる。お前と居ると碌な事が無い。」
便器を磨きながら神崎が呟くと朝倉も肩を竦めた。
「知らないな、お前の精進が足りないんだろう。」
便器に俯いていた神崎の顔がゆっくりと上げられた。
「・・・いいか、良く聞け。これから先は戦場になる。軍人になると云うのは簡単な事じゃ無いんだ。
お前みたいなガキが出る幕じゃない。ガキはガキでおとなしく親元に引っ込んで居ろ。」
何時もなら此処で取っ組み合いになるが、今日は違った。
朝倉悠里はその大きな眼を神崎に向けた。
「親だと? 私には親なんて居ないんだ。何処で死のうと生きようと誰はばかる事は無い、お前と違ってな。」
それはこの二か月の喧嘩相手の言葉では無かった。
神崎晴海は喧嘩相手の顔を見直した。
何時に無い言葉の後で少し膨れたような表情を見せながら朝倉が呟いた。
「気にするな、私は慣れている。」
どんなにいがみ合っても手は今までを覚えている。
日頃の喧嘩が嘘の様に息の合った呼吸で次々と片付け、磨き上げていく作業は完璧だった。
そして朝倉が完璧なのは便所掃除だけでは無かった。
僅か二か月とは言え教科も実技も朝倉は見た目と違って実に優秀だった。
「お前、何者だ。」
例え誰が横に居ても聞き取れない低い声で尋ねれば、
「さてな、ただの女の子だろ。」
フザケルるなよ。神崎の声は届かなかった。
黙々と清掃に勤しんだ後二人は一年生宿舎に走った。
夕食はギリで間に合う。
最初の頃は何度か喰いっぱぐれる事もあったが、慣れとは恐ろしい物で今ではきっちりと間に合う時間に帰り着くようになっていた。
当然この時間では二人で食べる構図になるが、いつもなら寄ってくる筈の互いの応援団は今夜に限って居なかった。
神崎は何処か気まずい思いを抱きながらそれでも朝倉の向かいで食べ始めた。
朝倉はさっきの会話を忘れた様な何時もとなんら変わらない態度を貫いている。
黙々と食べながら・・・耐えかねたのはやはり神崎だった。
「お前、親は死んだのか。」
「生きてるさ。」
しれっと応えたクラスメイトに神崎が切れかけた。
「さっきは居ないと云っただろうっ。」
つい荒くなった語気に朝倉がふふんと笑った。
「馬鹿が、親が居なければ私が此処に居る筈が無い。
居ないと云ったのはこの日本には居ないと云う事だ。私の親は子供の自主性を尊重しているからな、だから放し飼いなんだ。」
ムッとしながら神崎は最後の一口を飲み下した。
ほとんど同時に朝倉も食事を終えてきちっと手を合わせて、
「御馳走様でした。」
何時もの事ながら何度見ても似合わない。
態度も口も超悪いこのガキは、食事時の礼儀は完璧で宿舎の食堂職員には絶大な人気を誇っている。
野生丸出しで喧嘩になると相手が誰であろうが罵り倒すし飛び掛かったうえに殴り倒す。
口も手も抑える気も無いくせに何でだ、と思った傍から言葉になって出していた。
「飯時だけはちゃんとするんだな。」
即行で返されたのは、
「だけって何だ。お前以外の奴になら礼儀は弁えてるだろうが。」
何で俺だけ外す。しかも礼儀を弁える対象に奴って何だ。
ツッコミ処満載の返事だったが、神崎が口を開く前に相手は食堂を出て行った。
「奴はどうです?」
丁寧な、しかし妙にどすの利いた・・・いや年季の入った声が振って来た時、男は自分の受け持ちの生徒のプロフィールを見つめていた。
顔を上げるとやはり。
「野生児ですよ、どうしたらあんな風に育つんだか。」
見上げた先の厳つい顔に滅多に見せない笑顔を向けた。
「校長、私に敬語は止めて下さい。貴方の軍歴には逆立ちしても到底追い付かないんですから。」
男はあきらかに面白がっていた。
「何を仰る、貴方はあの・・・まあ、判りましたが。」
何とも曖昧な校長の答えに男はまた笑った。
「いずれにしろ能力は隠し持ってますよ、ただ何処まで有るのかはまだ見せようとはしない。
なかなか食えないガキを送り込んで来たな。」
独り言の様な呟きに校長が嬉しそうな表情を見せる。
「両親の薫陶が行き届いている、か。」
「まったくです・・・それでも・・」
深い想いに沈む男に叩き上げの校長はそっと囁いた。
「待って居た甲斐が在った。」
「・・・ええ、本当に。」
六月の夜は既に何処かに雨の匂いをさせていた。
戦闘服に背嚢を背負い小銃を担いだフル装備は生半可な重量では無かった。
夏休みも返上しての軍事教練は延々と続き、まして一日の大半を走り回る日々に公務員の甘い夢など消し飛んでしまう。辞めて行った者は此処まで考えて居なかったのだろう。
真夏の太陽が頭上から照りつける中、吹き出す筈の汗さえ既に干上がっていた。
「神崎! 右に回り込め!」
呼ばれた名前さえ罵声に聞こえる。それでも神崎は班の仲間と共に右から走り出す。
それに合わせる様に中央から小柄な姿が率いる一隊が飛び出した。朝倉だった。
(くそ、早い・・)
朝倉班の速さは並では無い。
担当教官が組んだ班分けは神崎班が主力として攻撃を担当するが、この数日は朝倉班と入れ替わっていた。身が軽く脚を重視した朝倉班だが装備に何ら変わりは無い。
チビな朝倉では後ろから見ると背嚢に背負われて居る様だと云って取っ組み合いになったのはつい最近の事、それなのに大の男でさえ顎を出す教練に後れを取った事が無い。
いやむしろ班では先頭切って走って行く。
しかもまるで熟練者の様な隙のない身ごなしは距離を取ってもすぐに解かった。
それにつられるかのように班の連中も動きが速く滑らかになっている。
展開の速さ、一瞬の判断、テンポの良い指示と担当教官の動きを読み取る感は生まれながらの兵士だと神崎でも認めるしかなかった。
結局神崎班は朝倉班に後れを取ったまま教練は終了した。
「どうしたんだ、今日は最低だったな。」
いきなりの売り言葉に反射して身体ごと向き直った神崎はだが相手の顔を見て動きを止めた。
何時に無い真面目な表情はらしくない。
怒りはすっと消えた。
「どうもこうも無い、単に動きが悪いだけだ。」
喧嘩相手に同情されるのは不本意だったが、この八月も終わろうとする今、差は開く一方だった。
如何にも面白く無さそうな神崎に、だが朝倉は思わぬ言葉を告げた。
「お前は甘すぎる、陸短が最終目的ならそれも良いが私たちはこの先へ行くために此処に来た筈だ。」
宿舎の廊下には二人だけだった。
昼の訓練で疲れ切った仲間たちは既に自室に入り早ければ眠り込んで居る筈だ。
「何が云いたい。」
それは聞かなくても神崎には解かって居た。
だが喧嘩相手の口から出る言葉で自分の踏ん切りを着けたい思いが在ったのも事実。
そして出された言葉は意表をついていた。
「甘えるな、気付かないお前じゃないだろう。」
神崎の詰まった顔を見限る様に言い捨てて背中を向けた。
それは知って居た。
自分の甘さぐらいは解かって居る。
朝倉の叱咤を受けなくたって・・・
「くそっ!」
翌日の教練は今までに無い厳しさだった。
シルバーチップと呼ばれる擬似弾は衣服で防げるが至近から喰らえば失明する程度の威力は有る。
眼だけは護る様にゴーグルをはめたまま神崎は班の仲間を走らせた。
次々と出される指示に一人が音を上げる。
「神崎、待ってくれ。」
誰かが云えばそれは次につながった。
「速すぎだ。」
「脚攣りそう・・」
神崎の動きが不意に止った。振り返ると一言、
「着いて来れる奴だけで良い、此処が正念場だ。行くぞ!」
走り出した神崎に追いすがって来たのはわずか数人だけ。
そして・・・また朝倉班に後れを取った。
「ふざけるなよ、お前が朝倉に負けたくないのはお前の勝手だろう。俺達を巻き込むな。」
「いい迷惑だよな。」
「俺、脚がまだ攣ってる、救護室で休んで来たい。」
座学の為に戻った教室で神崎は吊るし上げを喰らっていた。
「奴の脚に着いて行くのなんか意味は無いだろう、俺達は主力部隊だ。遊撃隊とは役割が違う。」
言い張る高橋に神崎は首を振った。
「そうじゃない、今此処での編成なんかそれこそ意味は無い。入隊したらこれよりきついんだぞ、此処で付いて行けなければ軍では弾かれるだけだ。」
「何処に配属されるか判らないじゃないか。俺は司令部に上がる積りなんだ、走る事は二の次だ。」
「だいたいお前が指揮を執るのなんかそれこそ此処だけの事だ、勘違いするなよ。」
「多少歳が往ってるだけで偉そうなんだよな。」
「おやおや歳までいじられるか、気の毒に。」
振り向くまでも無い耳に馴染んだ声に答えたのは神崎では無く高橋だった。
「朝倉、お前の挑発でこうなったんだぜ。これ以上余計な事は云うなよ。」
ずいっと右隣から乗り出した朝倉の眼は神崎には判る、それは完全に挑発する眼差しだった。
対象が高橋に変わっただけの。
「お兄ちゃん方、間違えるなよ。走れもしない鈍臭い奴は兵隊になんかなれないぞ、さっさと辞めてぬるい職場へ再就職しろ。お前らなんか人の足を引っ張るだけで役にはたたねぇ、邪魔なだけだ。」
投げつけられた台詞が自分に向けられた物じゃ無ければ笑えるのだと初めて知った。
しかも朝倉の表情は笑みさえ浮かべている。
高橋達には初めての罵詈雑言・・・とまでは云えない朝倉にしては実にぬるい言葉だったが。
「俺達はお前の喧嘩を買うほど馬鹿じゃない、神崎と一緒にするな。引っ込んでろ。」
「ほほう、どれほどお利口なんだ? 神崎の馬鹿たれが頭を張っての神崎班だろうが。
お前の名前は何だっけ?」
高橋の表情が変わった。それは手痛い一発。
ひと月前に行われた班分けは身体能力に加えて講義、講習からなる教科の成績と、不定期にそして不意に行われる一連の大小試験の結果からなる物だった。
クラスどころか学年の試験成績は神崎がダントツ、毎度公表される以上隠せるものでは無いし四班に組まれた時点で担当教官から明言されていた。
「ふ、ふざけるな、このクソガキ!」
出た。
何時もなら神崎の台詞だったが当のクソガキは実にいけしゃあしゃあと笑って見せる。
少なくとも今日は口喧嘩で済ます心算らしい。
「お前語彙が乏しいぞ、生憎そんな台詞は聞き飽きた。だから神崎のボケナスに頭を取られるんだな。」
「うるさい! 体力勝負しか能の無いお前に云われる覚えは無い! 黙ってろ!!」
「そんだけのガタイが勝負も出来ないか、実に無駄な容器だな。中身も人並みだし、良いとこねぇなぁ・・・何とか君。それで司令部狙いだって? ケツが茶を沸かすぜ。」
「臍だ、茶を沸かすのは。」
思わず声が出てしまったが朝倉はにんまりと笑って、
「ナイス突っ込み、さすが班長。」
くるりと高橋に向き直り不意に真顔で切って捨てた。
「着いて行けない自分より人を責めるならその時点でお前は軍人にはなれない。
敵は神崎じゃない、高橋、お前のそのクソの役にも立たないチンケなプライドだ。
神崎の脚にも頭にも付いて行けないなら辞めてしまえ。」
何時もの様な罵声では無い。
怒鳴る訳でも無い。
むしろ静かな、そして凍りつく様な冷ややかな声に教室内は静まり返った。
「其処までだ、授業に入る。」
担当教官の声で我に返った。いったい何時から居たのだろう。
教官は神崎と朝倉の毎度御馴染みの喧嘩騒ぎとは異なる対高橋戦に何の反応も見せないまま教壇に上がった。
「授業の前に新たな班割を行う。今までのひと月はテスト期間だったが、明日から学年末までは固定だ。入隊すれば同じようにチーム単位で動くし、男女の別も無い。仲間と云う意識を常に持って行動するように。」
神崎の驚いた顔に一瞥もくれずに担当教官はノートを広げて読み始めた。
ノートが有ると云う事は今の騒ぎとは関係なく事前に決まっていた事か、それでも神崎はどこかホッとしていた。
高橋とその仲間たちとは以前から折り合いが良いとは言えなかった。
頭脳派を自負する彼らにとって試験結果が常に上の神崎は面白い存在では無いだろう。
それでも中には神崎の肩を持ってくれる者も居たのだが・・・
クラスは入学時に比べればだいぶ減って居て50人以上居た筈が今では40人を下回っていた。
だからだろうか今までの四班制が三班に組み直され、又かと思いながら神崎は顔を上げた。
「第三班神崎班、豊田、森・・・」
幾つかの名前の後、最後に呼ばれたのは、
「朝倉、以上だ。」
教室がざわめいた。
当然だろう、今まで幾度となくいがみ合い殴り合い罵り合って来た猿と犬が同じ班で無事に済む筈も無い。
だが神崎から出された言葉は、
「教官。」
「神崎。」
「はい、私では班長は適任では有りません。朝倉を推薦させて下さい。」
きっとまた揉めるだろうと思っていた大半は度肝を抜かれたまま神崎の顔を見つめた。
「却下だ。」
揺るぎ無い担当教官の即答は予測していたからか。
それでも神崎は食い下がった。
「何故でしょうか、朝倉は班長として適任だと思います。」
何人かが窓の外を見て空模様を確認していたが担当教官は微かな笑い含みの声で尋ねた。
「では聴くが、お前は朝倉の下に着くと云うのか? 朝倉が班長になると云うのはそう云う事だが。」
この質問に対して神崎は微動だもせず答えた。
「はい。」
今度ははっきりとした幾つかの声が上がった。
「大丈夫か神崎。」
「壊れたな、お前。」
「在り得ねぇ・・」
「さっき庇って貰ったからだろう。」
はっきりと侮蔑を含んだ声に一瞬で静まり返った。
それは高橋の初めて聞く冷淡な声だった。
「喧嘩相手に救って貰ったんだ、礼ぐらいしなきゃ拙いだろ。まして班長の器とも云い難いしな。」
今回の第一班の班長は高橋だった。そのせいか妙に居丈高な口調で続ける。
「確かに朝倉の方が向いて居るかも知れない、がどちらにしろ騒動しか起こせない奴同士だ。麗しく譲り有っても無駄な気がするがな。」
「教官。」
手を上げたのは朝倉。どう云う訳か、いつもなら教官が居てもお構いなしの強行突破の爆弾女がお手本のような態度と驚くべき冷静さで言葉を発した。
「私は教官の指導を受ける身です、教官の決定に何ら異議は有りません。が、神崎一年生に提言が有ります。」
「許可する。」
「有り難う御座います。では神崎一年生、私は貴方が一学生である以上担当教官の指導に意を唱えるべきでは無く、貴方自身がより成長する為にも班長任務を果す事を勧める。さらに言うなら自分よりもレベルの高い配下に囲まれて育成されるなら確実に一段階は昇れるだろうし、無様を晒して笑い者にもなるまい。安堵して私たちに任せろ。」
完全にぶちぎれた。
前作よりも丁寧に描きたいと思っています。
どうか、ご意見ご感想を是非、戴けたら幸いです。