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Malicious mischief of God

「ままならない恋~年下彼氏~」の25部「砕けた心のカケラ」の徹sideです。

「ねぇ、あのカップル見て。すっごい美男美女!」


「ほんとだ~! 居るんだね、あんなお似合いのカップル」


「ねー!」


 少し離れた所で制服を着た高校生くらいの女の子達が騒いでいる。美男美女のカップル? 周りを見渡したけど、それらしきカップルは見当たらない。

 もう通り過ぎて行ってしまったのか?

 すると、森口さんが俺の袖をつんつんと引っ張った。


「私達のことだよ」


「え?」


「だから、あの子達が言ってるお似合いのカップル……」


 俺達のこと? 目線を向けると、さっき騒いでいた女子高生とバッチリ目が合った。

やばーい、目が合っちゃった~! と頬を染めながら二人組は逃げるように行ってしまった。


「ふふ。ああいう事言われると照れちゃうね」


 森口さんはそう言って嬉しそうに笑った。柔らかそうな茶色の髪が揺れて頬にえくぼが現れる。


「そうですね」


「あぁっ! また敬語~! 徹くんって結構ガード固いよね。いつまでたっても穂乃香って呼んでくれないし」


「すみません」


「また!」


「あ……」


 もう、年上ってことを感じさせないでよ~、と言いながら森口さんは俺の腕を軽く叩いた。口調ほどには怒っていないようだ。


「あ、やっぱり雨が降り出してる。傘持って来て正解だったね!」


 駅ビルから外に出ると、分厚い灰色の雨雲が空を覆い、強い雨が地面に降り注いでいた。普段は感じないアスファルトの匂い。雨のせいで気温が上がり、少し蒸しているのに風は冷たい。最近インフルエンザも流行ってるみたいだし、風邪を引かないようにしないとな。


「やーん、ブーツが濡れちゃう。下ろし立てなのにぃ」


「大丈夫?」


「全然。徹くんが私と付き合ってくれたら大丈夫になるんだけどなぁ」


「はいはい」


「あーもう、全然本気にしてくれなーい」


 俺と森口さんは足早に横断歩道へと向かう。今日は彼女のショッピングに付き合い、これから夕飯を食べて帰る予定だ。

 森口さんとこうやって会うのは2……3度目だろうか。

 最初は映画、そして先週はお互い試験だったから、図書館で勉強会を開いた。とはいっても大学も学科も違うから、お互い教え合う、なんて場面は無かったけれど。


「あ、もう信号変わるよ。行こう」


 促されて歩き出そうと傘の頭をやや後ろに動かす。

そして前方を見ると、俺は驚きのあまり目を瞠った。


 ――――綾乃さん。


 綾乃さんは水色の傘を差していた。

 きれいな色だねって言ったら、古いフランス映画に出てくる傘にソックリで一目惚れしたの、と照れくさそうに言っていたっけ。


「綾乃さん……」


 俺は無意識にその名を呼んでいた。綾乃さんも驚きを隠せないようで、その顔を強張らせている。


「―――榊さん?」


 そう言って綾乃さんに男が歩み寄る。それが誰か気付いた俺はさらに衝撃を受けた。その男(竹島)は動かない綾乃さんを不審に思ったようで、彼女の目線を辿り、その先に俺を見つけるとあからさまに眉をひそめた。

会いたくないやつに会ってしまった、そんな顔だ。

分かるよ、あんたの気持ち。俺が今思ってるのと全く同じだから。


 どうして、こんな時、こんな場所で会ってしまうんだろう。ほんの数分違えば俺たちは何も知らずにすれ違っていたはずなのに。どうして、こうも偶然ばかりを起こすんだ。

 もしも居るんなら、恨むよ、神様。おかげで人生最高に最低な気分だ。


 ……正直に告白するよ。俺は、どこかで期待してたんだ。綾乃さんはまだ俺のことが好きだって。

きっと世の中の男はみんなそう。

男は例え別れても、本当の意味でその相手を嫌いになることはない。だから、相手もそのはずだって。

男って馬鹿だよね。馬鹿すぎて笑える。


 年明けに引いた、おみくじのことを思い出した。


『待ち人、来たらず』


 正解だよ、神様。ドンピシャ、大当たり。


 ほんと良い趣味してるよ、あんた。



Malicious mischief of God:悪質な神の悪戯

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