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サプライズの下準備

ままならない恋~年下彼氏~第16部「涙のサプライズ」の前日談です♪

 うまっ、ナニコレ?

俺は料理を一口、口に入れて目を見張った。


「徹、徹、なんだこれ?めっちゃうまいんだけど!」


 隣でカズが驚嘆の声を上げる。


「ここ、値段は高いけどどれもうまいな。ここで決定だな?」


 そうだな、と俺は答えてオシャレなグラスに注がれた水を飲み、店内を見渡した。土曜の昼間で店は混雑している。男の姿もチラホラ見受けられるけど、さすがに男二人で来ているのは俺達だけのようで、さっきから他の客の視線を感じる。しかたないだろ、こんなところに連れて来るような女の知り合いはいないし―――連れて来たいと思うのも、一人だけなんだからさ。




「カズ、明日の昼にフランス料理食べに行かない?」


 俺がそう誘ったのは、金曜――昨日の夜のこと。いつものようにレジ閉めを終え、ちょっと一服してから帰ろう、といつもの非常階段に出た時だった。


「はぁ? フランス料理ぃ?」


 煙草の煙を吐き出しながら、カズは怪訝な顔をした。うん、と感情を抑えたまま答えた俺をじっと見つめて、カズはなるほどな、と一人で頷く。


「そーゆーことね。もうすぐ誕生日だったな、そういえば。下見に行くワケだ?」


「分かってるならいちいち言うなよ。そんで、ニヤニヤもするな」


 俺はカズに悪態をつく。恋愛関連で人にからかわれる、という初めての経験に慣れない。おごり?とずうずうしくのたまうカズに、そんなわけねーだろ、と返す。


「えぇ~? ……まぁいっか。他でもない徹ちゃんのお願いだものな。お兄ちゃんがついていってやるよ」


「誰がお兄ちゃんだ」


 俺は、照れかくしにカズの頭を思いっきりこずいた。


 今頃、綾乃さんは店で一生懸命に働いてる頃だろうか。普通、社員ともなれば事務所のイスに座って本部からの指示の確認やデータ管理のためにPCをいじってることが多いものだ。少なくとも、綾乃さん以外の社員はそうだ。だけど、綾乃さんはちゃんと売り場に出る。レジを打ち、接客をし、売り場全体を見てる。自分の担当じゃない売り場までも。だから、スタッフ全員に好かれているんだと思う。新しくコーナーを作る時に、担当の社員を飛ばして綾乃さんに相談するパートもいるらしい。


 その信頼はスタッフだけに留まらず、彼女と話がしたくて店に来る客もいるほどだ。この前なんて、年配の女性が大きな袋を綾乃さんに渡しているのを見て、なんだろうと思って聞いてみたら、日ごろのお礼にと大量のみかんを貰ったらしい。しかも、去年も違う人に貰ったことがあるのだという。そのみかんは休憩室に置かれ、皆のビタミン補給に大いに貢献してくれた。なのに、仕事を離れるとちょっと頼りなくて放っておけなくなる。


 ―――そういう人なんだ。俺が好きな綾乃さんという女性は。


 おごるかよ、と言ったものの、付き合わせたお礼におごろうとしたら、カズは笑って二人分を支払ってくれた。頑張れよ、というニヤニヤ付きで。

 おごってもらったという理由からじゃないけど、カズはいいやつだ。ただ騒いでるように見えて、周囲の人をちゃんと見てる。面倒見もいい。俺と仲がいいのがその証拠だ。俺がもし女ならカズみたいな男と付き合いたいと思う。山下さんは見る目がある。


 カズと別れると、レストラン近くの花屋へ向かって、花を注文した。その店はペチュニアを仕入れてないらしく、特別に取り寄せてもらえることになった。


 喜んでくれるかな。……喜んでくれるといいな。

誰かの誕生日を祝うってこんなにわくわくするものなんだ。

会ってもいないのに、想うだけで、こんなにも……嬉しい。


 これが『幸せ』っていうものなのかもしれないな。



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