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お願い一つ

二作目です。まだまだ未熟者ですが、最後まで読んでもらえると嬉しいです。

大学生、最後の夏休み僕は焦っていた。何もすることがないと、毎日ゲームをするか、好きなジャンルの映画を観るか、寝るかの生活、とても退屈で仕方なかった。持っているゲームもやりつくし、観たかった映画も観つくしていた。でも、寝るのはすごく好きだ。何故なら夢が見られるからだ。

夢は自分の好きなように物語を作り変え、その世界を心の底から楽しむことができる。なんて、素晴らし世界なのだろうか。出来る事なら、夢の世界で一生を謳歌してみたものだ。そんなことを考えているうちに夕食の時間になった。

この頃、時間が経つのが早く感じる。小学生のころなんか、5分がとても長く感じて、その時間に友達とドッチボールや鬼ごっこを心ゆくまで楽しんでいたのに、今となってはゲームでひと段落したころには、何時間も経っていることも珍しくない、あの時の時間感覚はどこに行ってしまったのだろうか。

考えれば考えるほど俺は虚しくなり、夕食も食べずに寝室に向かった。

ベットで横になり、今日は何の夢を見ようかと妄想を含ませながら、眠りについた。


夢の中はいつも一緒で、自分の視点に薄っすらと靄がかかり、場面が変わるごとに、世界が渦巻のように穴に飲み込まれて、建設作業のように、観たい物語が再建設されていく感覚を夢を見るたびに味わう。今日は、どんな夢を見ようかと頭の中の物語を崩壊、再構築を繰り返しながら、1回、2回、3回とずっと繰り返しているとき、見覚えのない、空間に迷い込んだ。辺りは薄暗い部屋の中、中央に小学校で使った覚えのある、木でできた椅子がポツンと佇んでいた。

俺は少し恐怖で震えていたが、なぜだろう。この空間がどの夢よりもとても心地よかった。来たことも、見たこともないのに、感じたこともないのに、なぜこんなに、心が浄化されるような、心地良さを感じるのだろう。俺はこの不思議な空間に魅了されていた時、俺の背後から小さい足音が聞こえてきた。

足音は軽く、コツコツと音を立てて、俺のほうに徐々に近づいて来ている。

俺は消えたはずの恐怖心がまた駆り出された。そんなことはお構いなしに足音は近づいて来ている、着実に俺のいるところに向かって来ている。足音もどんどん大きなって来て、早く夢が覚めくれないかと心の中で祈っていると足音が聞こえなくなった。心の底から安堵していると背後から声が聞こえてきた。


「あなたは誰?どうやってここに来たの?」


俺は不安になりながら、背後にいる人物に目線を向けた。

見た目は、小柄で、綺麗で艶のある長い髪に、水色のパジャマ姿の少女が立っていた。中学生ぐらいの年だろうか、そんなことより、この少女は誰なんのか。夢が作り出す世界は、今まで自分が見たことあるもの、感じたことのあるもの、会ったことのある人しか出てこないという話を聞いたことがあるが、この俺の前にいる少女には見覚えがなかった。なぜ、俺がここに迷い込んだのかを考えながら立ち尽くしていると少女の声が耳に響いた。


「何回も言わせないでくれる?あなたは誰なの?どうやってここに来たの?」


「俺にもよくわからないんです。夢を見ていたら、突然ここに迷い込んじゃったんです」


「本当に?そんなことで簡単にたどり着くところじゃないんだけど」


「本当なんですよ!俺はただ気持ちよく夢を見ようとしていただけなんです」


俺は狼狽しながら少女に答えた。少女が言った、「そんなことで簡単にたどり着くところじゃない」とはどういう事なのか。ここは一体どこなのか疑問が絶えなかった。湯水のように湧いてくる、疑問を解決するために少女に訪ねた。


「あの、ここは一体どこなんですか?それとあなたが言っていた、簡単につくような場所じゃないっていうのはどうゆうことなんですか」


「ここは言わば管理室みたいなところ、ここでみんなが見ている夢を管理しているの、気持ちよく寝てもらうためにね」


「そうなんですか!あなたのお陰で毎日気持ちよく眠れていますよ。ありがとうございます」


「感謝されるのってこんなにも心が温かくなるのね。初めてだから人と話すのは」


少女は胸に手を当てながら小さく呟いた。


「え?人と接したことがないんですか?」


「ないよ。私はここでずっとみんなの夢を管理してきたから、人と接したこともなければ外の世界も知らないの」


「淋しくないんですか?こんな空間でずっと一人で過ごすなんて」


「忘れちゃった。そんな感情、だいぶ昔に私の頭の中から消えちゃった」


少女は苦笑いしながら言った。

彼女はいつから、ここにいるのだろうか。そしてどれぐらいの時間を一人で過ごしてきたのだろうか、普通の人じゃ苦痛で耐えられないだろう。それをこの少女はずっと耐えてきた。とても同情の言葉で言い表すことができなかった。

俺はどうしようかと、言葉を考えていると、少女は俺の考えていることを見透かしているのか「同情なんてしなくていいよ」と言ってきた。

誰かに心臓を握りしめられているかのように、心が苦しくなった。

俺は何とかして、この少女が少しでも楽しくいられる方法はないかと熟考したが何も思いつかなかった。

彼女はいつもどのように過ごしているのか気になり、また訪ねてみることにした。もしかしたら、いいヒントが得られるかもしれないと思ったからだ。


「あなたはいつもどのように過ごしているんですか?」


彼女は不思議そうに答えた。


「そうね。さっきも言ったけど、私はここで夢の管理をしているの。

それ以外だったら、寝てみたり、椅子に座って壁を見ていたりしてる」


聞いては見たものの、とてもヒントになり得そうな事はなさそうだった。

「待てよ」少女はいつも夢の管理をしているのなら、日頃から現実の世界の様子を観ているのなら、夢を通して何かやってみたいことがあるんじゃないかと

思い、気分が高鳴りながら、少女に聞いた。


「いつも、夢の管理をしているのなら、俺たちがいつもどのように過ごしているのか、現実を謳歌しているのかわかりますよね?みんなの夢を観てきているのなら、何かやってみたいこととかこととかないんですか?」


少女は、また不思議そうに首を傾げて答えた。


「やってみたいこと?」


「そうですよ!何かないんですか?」


「そうね。考えてみる、少し時間を頂戴」


ただでさえ、静かで少し不気味なこの部屋に、より一層、静寂な時間が流れている。ここは夢の中のはずなのに空気も冷たくて、身体の体温も奪われていく、少女は彫刻のように固まって、首を左右に傾けながらずっと考え込んでいる。俺は少女の答えを待っている間に部屋の様子を見回しが、これといって面白そうなものはなかった。ゲームもなければ、テレビもないどころか、家具が一つもない、あるのは木でできた椅子のみ、まるで映画に出てくる刑務所の独房の中にいるように感じているのに、不快ではないのはなぜなのだろうか。

俺も少女のように首を傾げていると、彼女は俺の肩をつついて紙を手渡してきた。


「はい、これが私のやってみたいリスト」


そのリストにはこう書いてあった。


・やりたいことリスト

・綺麗なお花畑を見に行きたい

・牧場に行って、馬に騎乗してみたい

・美味しい物を食べたい

・遊園地に行きたい

・海に行きたい

・水族館に行きたい

・私の名前を覚えてもらいたい


この子の年齢はわからないが、年相応な感じがして、何とも可愛らしいが、一つ引っ掛かることが書いてあった。名前を覚えてもらいとはどうゆうことなのだろうか、他の言わばお願いことは、行きたいところ、食べてみたいこと、してみたいこと、なのに。何故、八つのしてみたいことの一つに名前を選んだのか、やはりこの少女は、口では忘れたと言っていたが、心の中では淋しく感じていたのだろうか。少女のちょっとした笑顔が、今この瞬間は、俺の目には穏やかに映った。


「どうかな?私のやってみたいこと」


「すごくいいと思いますよ!」


少女は口元が緩みながら言った。


「そう?ならよかった。じゃあ、そろそろ、夢から覚める時間よ」


「もうそんな時間ですか。そういえば、どうやってここから出ればいいんですか?」


少女は薄暗い部屋の奥にある廊下のほうに指をさしながら言った。


「こっちよ。行きましょう」


突如として出現した、廊下に動揺しながら少女についていくと、次はドアが見えてきた。またもや、ゲームの隠しギミックのように、出現したドアに混乱していると、少女は少し笑みを浮かべて言った。


「一応、ここは夢の中よ?私の好きなように書き換えれる」


「確かに、そうでしたね」


ここが夢ということに忘れている自分に苦笑いした。


「ここのドアに入れば、現実世界に帰れるよ」


「ありがとうございます。でも、あなたはどうするんですか?

また、ここに来られる保証はないのに」


「そこは心配しなくても大丈夫、私も現実世界に行くから」


俺は思わず「え?」と口に出ていた。

この少女は夢の中の人、俺の奥底に沈んでいる記憶だと思っていただからだ。

俺には何が何だか、わからなくなっていた。少女はそんなの俺の心情なんかお構いなしに、喋りかけてきた。


「じゃあ、また後でね」


色々、言いたいことはあったが、今は言葉を吞み込んで少女に「また後で!」と手を振って、ドアノブに触れようとしたら、少女は何かを思い出したかのように開けようとしたドアを閉めて言った。


「忘れるところだった。早速、一つ目のお願い事をかなえてもらおうかな」


「もうですか?!」


俺は驚きを隠せなかった。


「私の名前を覚えてもらうよ」


「名前ですか?」


少女はドアに指をさしながら言った。


「えぇ、あっちに行っても、忘れないでね?」


「私の名前は、夏希美玖なつきみく、一応、君の名前も聞いておこうかな」


「そうですね。俺の名前は山田陸やまだりくです」


「そう。いい名前だね」


美玖はそう言うとドアを開け闇が光に包まれ、そのまぶしさに目を開けていられず、両手で視界を防いでいると、美玖の声が聞こえてきた。


「絶対に忘れちゃだめだよ」


手の隙間から美玖が笑顔で手を振っている。



午前10時半、今日は寝すぎてしまった。そう思い、重い足取りで洗面所に向かい顔を洗い、歯を磨きながら、何か忘れているような。寝起きの脳みそで何を忘れているのかも分からず、朝食の準備をしていると、家のインターホンが、俺の準備を邪魔するように部屋に鳴り響いた。

こんな面白みのないアパートに誰が来るんだと、思いながら髪をかきむしりながら、玄関のドアを開けると、小柄で水色のワンピースに麦藁帽を被っている少女が立っていた。俺は不思議そうに少女を見ていると、少女は不機嫌そうに言い寄ってきた。


「まさか忘れたの?」


俺はやっと何を忘れていたのかを思い出した、そして目の前にいる少女が、昨晩の夢に出てきた子なのも思い出した。

ここまで読んでいただきありがとうございます。時間はかかりますが、ゆっくりと第二章を書いていくのでよろしくお願いします。

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