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ミルフィーユ戦記  作者: まきの・えり


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ふみゃあああ

 ふみゃあああ、とミルフィーユが、大きなあくびをした。

 僕も、うみゅううう、と僕にしたら、大きなあくびをした。

 平和だ。


 テレビが、大きな音を立てている。

 音量を下げて欲しいな、と僕は思ったが、何も言わなかった。


「アンモナイト一家に起こった争いは、たちまちのうちに、枯草が次々と燃えていくような勢いで、世界中に広がっていきました」とテレビが喋っている。

 いつものおじさんではなく、おばさんの声だ。


「私達女性は、働いて、働いて、働いて、働いて、働いて、参りました。

 生まれた時から、女性には、その道しかありませんでした。

 物事を決めるのは、男性。

 男性の決めたことに、黙って従うのが、女性。

 

 女性には、政治を決めることもできませんでした。

 男性が言うことに、賛成することしかできません。

 これを女性の賛成権と言います」


「にゃははははは」とミルフィーユが、笑っていた。

 僕には、よくわからない話が、ミルフィーユには、わかるのだろうか?


「ご覧ください」とテレビが言うので、僕は、テレビの方を見た。

 首が痛くなりそうだ。


「これが、駆除されてきた、動物達です」

 見たことの無い、動物達が、順番に映っている。


「何年か前に、大型動物駆除法案が、国会で可決されました。

 このお陰で、世界から、大型の動物達がいなくなりました」

 そうか、見たことの無い、大型の動物なんだな、と僕は思った。


「実のところ、私達女性は、そんな法案があったことさえ、知りませんでした。

 朝から晩まで、働いて、働いて、働いていたからです」


「にゃはははは」とまた、ミルフィーユが、笑った。

「働いて、働いて、働いて、ってにゃに? 食べられるにょ?」

 ミルフィーユが、話をよくわかっている、と思ったのは、間違いかもしれない。


「しかし、今回の、小型動物駆除法案は、初めて、私達女性の目を、政治に向けさせることになりました」


「お母さんだにゃあ」とミルフィーユが、言った。


 テレビの画面には、ミルフィーユのお母さんが映っていた。

 音声は聞こえないが、ミルフィーユのお母さんが、お父さんのアンモナイト氏を、平手で張り倒す場面が映っていた。

 お父さんは、後ろに吹き飛んで、しばらく空中にいた後、お尻から地面に着地していた。


 バッチーーーーン!!!

 ドドドドーーーーーーーン!!!

 という音が聞こえてきそうだ。


 まさに、あの時の場面だ。

 いつ、誰が、撮ったんだろう?


「たまたま、偵察用の小型ドローンが、とらえた映像です。

 このショッキングな映像は、世界中の女性達を目覚めさせました。

 女性の中に眠る、太古のネアンデルタール人を目覚めさせた、と言ってもいいと思います」


「ネアンデルタール人て、にゃに?」とミルフィーユが、僕を見た。

「さあ、食べられるのかな?」と僕も、ミルフィーユみたいに答えた。


「私自身も、うちのアルファルファを駆除するという、夫に向かって、生まれて初めて、『ノー』と言いました。

『駆除するなら、あなたの方よ!』と私は叫びました。

 そんなことを、自分が言うなんて、それまで、想像もしていませんでした」


 大勢の巨人族の女性達が、お互いに腕を組んで、歩いている。

 映像だからいいけれど、実際に見たら、怖いだろうな、と思った。


「こうして、国会は、女性達によって、占拠され、通過したばかりの、小動物駆除法案を廃止にしました。

 私達女性は、長い年月、働いて、働いて、働いて、働いて、働いてきたのです。

 行動を起こせば、男性よりも素早く、決断力もあるのです。


 恐ろしいことに、小動物駆除のために、開発されたばかりの、新型爆弾『カミナリ1号』が、まさに発射されようとしている所だったのです。


 本当に、科学者の言う通り、小動物だけを駆除するのでしょうか。

 もしかすると、世界から生き物が、すべて駆除されるところだったのかもしれません…」


 いつの間にか、テレビからは、音楽だけが流れていた。


 新型爆弾?

 カミナリ1号??


「カミナリが落ちたにゃら、食べ物も無くなってしまうんだにゃあ…むにゃむにゃ」

 

 いつの間にか、ミルフィーユは眠ってしまっており、寝言を言っていた。


 それって…


 何か知っている話のような気も…


 あれ?

 


 


むにゃむにゃむにゃ

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