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んにゃああ
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「んにゃあ~~」とミルフィーユの声がした。
居眠りから、ハッと目覚めた僕は、空耳かと疑ったが、確かに、ミルフィーユがいる。
ゴロゴロゴロゴロという喉の声も聞こえる。
お母さんの膝の上で、機嫌よく丸くなっているようだ。
お母さんが口を開こうとしたので、周囲に集まっていた、数えて十三人は、さっと帽子のようなものをかぶった。
僕は?と頭に手をやってみると、同じような帽子をかぶっている。
どうやら、誰かが、多分しずかちゃんが、かぶせてくれたのだろう。
「私が」とお母さんが言うと、皆、帽子の耳のところを押さえた。
僕も皆にならい、慌てて、同じように押さえた。
「人質になります」
お母さんが息を整えたので、僕達も息を飲んだ。
「ミルフィーユが人質なんて、可哀想過ぎますし、私なら、たとえ人質になったとしても、相手の脅威になりこそすれ、危害を加えられる恐れは無い、ということです」
よく見ると、お母さんの腰の下には、大きなクッションがあり、膝の上には、ミルフィーユがおり、周囲には、大小のカバンが三個ほど置いてあった。
ミルフィーユの餌とか、お母さんの食べ物とかが入っているのだろうか。
「△◎×☆〇〇〇」という絵が彫られた木が、お母さんの横に立ててある。
何という意味なんだろうか?
「作戦本部、と書かれています」
僕の心の声を読んだかのように、しずかちゃんが、小声で説明してくれた。
「敵は、ミルフィーユ様をスパイだと疑って、お母さんのアンモナイト夫人を逆スパイとして、送り込んだものと思われます」
「スパイだなんて、とんでもありません!」
お母さんが突然、大声で叫んだので、僕達全員は、その声の風圧で、後ろになぎ倒されていた。
確かに、人質とかスパイというよりは、新型兵器と言えなくもない。
「そもそも」
僕達は、倒れたまま、お母さんの話を聞いていた。
「どこに、戦争があるんですか」
これは、根源的な問いだった。
そもそも、どこに、戦争があるのか。
戦争があるとして、どうやって始まったのか。
原因は?
そして、どういう経過をたどって、今に至っているのか。
「戦争なんか、どこにも無い」という、お母さん以上の大声が響き渡った。
お父さんのアンモナイト氏だ。
一体、どこから現れたのだろうか。
お父さんの声は、お母さんよりも、もっと破壊力があった。
僕達は、寝たまま、少し後ろに、移動させられた。
声圧だ。
「駆除だよ、ただの駆除。戦争だなんて、笑ってしまう」
実際に、お父さんは、「わあっはっはっは」と笑って、僕達は、もう少し後ろに押し出された。
「駆除ですって?! まあ、あなたまで、何を言っているの」
アンモナイト夫人、つまり、ミルフィーユのお母さんは、心の底から驚いているようだった。
「実際」とアンモナイト氏。
「チョロチョロチョロチョロと動き回って、目障りだ。人が寝ている真夜中に、屋根裏で、ドタバタドタバタと走り回って、眠れやしない」
僕達の運動会のことを言っているらしい。
夜中に眠れなければ、ミルフィーユみたいに、昼寝でもすればいいのに、と僕は思った。
「そんな有害な小動物は、駆除するしかないだろう」
くじょ、くじょと言っているけど、苦情の間違いではないだろうか。
「これは、国会でも決まった、『小動物駆除法案』だ。お前だって、知っているだろう?」
何か、お父さんは、お母さんに対して、物凄く偉そうだ。
すご~く、上の方から、物を言っている感じがする。
ま、僕達にしたら、二人とも、物凄く上の方にいるんだけど。
「私は、忙しくて、そんなことは、少しも知りませんでしたわ」
「ふん。勉強不足だな」とお父さんは、話を打ち切ろうとしていた。
「たかが、家事ぐらいのことで忙しいとはね。ふふん」
空気が、恐ろしく、緊迫していた。
怖くて泣いてしまいそうだ。
これが、戦争というものなんだろうか。
僕達は、少しずつ後ざすって、かなり離れた場所まで移動していたが、それでも、安心だという気分には、なれなかった。
「なあああんですってえええええ!!!」
新型爆弾、炸裂!
お母さんは、ミルフィーユを抱いたままだ。
ミルフィーユの耳は、大丈夫なんだろうか。
ミルフィーユも、こっちに逃げてくればいいのに。
「これだから、女ってやつは」とお父さんは、勇敢にも言った。
「政治も経済もわからない。すぐに、感情的になる。ふふん」とまだ偉そうだ。
「そんな、寝ているばかりで、餌を食う以外には、何の役にも立たない、ミルフィーユなんていう、小動物のために、家族の迷惑も考えずに、人質になる。
女には、脳が無い。子宮で考えるとは、よく言ったものだよ」
「ふんぎゃああああ!!」とミルフィーユは、叫んだ。
巨人族にも負けない声圧だ。
「んんぎゃ、ぎゃぎゃぎゃぎゃああああ!」
遠目で見ていると、巨人族に比べると、小さなミルフィーユが、お母さんの手から飛び上がって、お父さんの顔面に、爪を立てているようだ。
凄まじい速さで、僕の目には、見えない。
「うぎゃあああ」とお父さんの叫び声が聞こえて来た。
「何をする、ミルフィーユ。お前のお父さんじゃないか~~~」
と言いながら、アンモナイト氏は、遠くからでもわかる、殺意のこもった光線を目から放っていた。
「お前にゃんか、お父さんじゃにゃい!」
ミルフィーユは、とっとと顔面から離れて、美しく地面に着地。
その勢いで、全速力で、僕達の方に走って来た。
なんて、脚が速いんだ、ミルフィーユ。
と思いながら、僕達も走っていた。
バッチーーーーン!!!
ドドドドーーーーーーーン!!!
物凄い音に続いて、地面が地震のように、揺れる。
ミルフィーユと僕達の身体が、地面から浮き上がった。
「お母さんの勝ちだにゃあ」とミルフィーユは、走りながら言った。
ぎゃぎゃぎゃぎゃああああ!




