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授業中の、魔王。

 {水無月さーん、水無月さんってば!}

 

 それは午後の最初の授業。食後の満腹感と、午後の暖かな日差しによって多くの学生が睡魔と戦う時間帯である。

 

 そんななか小声で前に話しかけること数秒。ようやく水無月さんは後ろを振り向いた。

 

 {何?……昨日の言葉私、守ってたと思うけど…}

 

 なにやら別の心配をしているようだけど、今聞きたいのはそれじゃない。

 

 {聞きたいことがあるんだけど}

 {何?今じゃなきゃ駄目?}

 

 {今がいいの。ねえ…、水無月さんって呼び捨てを許してる友達っている?}

 {え……?なにそれ突然……}

 {いいから答えは?}

 

 

 {今は……いないけど}

 

 

 

 {あー……うわー……}

 

 {ちょっと、アンタ自分から聞いて来ておいてその反応は…!}

 {ストップ。静かに!先生に気づかれちゃうよ}

 

 今は古文の鬼、菊地(キクチ)の授業である。

 

 “鬼”というからには怒ると物凄く怖いらしいのだが、実は涙腺がもろくて卒業式の日に毎回1人でこっそり泣いているのを同僚の先生達は皆知っている。

 まぁ、今は関係ないが。

 

 {……あのさ}

 {ん?}

 

 あれ、僕の聞きたいことはもう聞き終わったんだけど。

 

 {それって……アンタが私を呼び捨てで呼びたいってこと?

 だ、だったら私もアンタのことを呼び捨てにしても……}

 

 {…………はい?}

 

 ナンノオハナシデスカ?

 

 {……そんな急に呼び捨てにしだしたりしたらカップルみたいに見られちゃうよ?}

 

 そうじゃない?男女間で急に呼び捨てが始まったら、どっちかからの告白が成功したとしか思えないでしょ。

 

 

 そう言うと水無月さんは

 

 ガッチャーン!と大きな音を立ててペンケース(仮)を床に落としなさった。

 

 

 

 ??今の、動揺するところなんてあったっけ??

 

 

「大丈夫か、水無月」

 

 菊地センセーもさっきの音には流石に気づいた様子だ。

 こういうさりげない気遣いにキュン、とくる生徒も少なくないらしい。

 鬼の厳しさの中にチラリと見せる優しさ。

 いわゆる、ギャップ萌えというやつだ。まぁ、また関係ないけど。

 水無月さんはまた顔を赤くしている。何をそんなにテンパっているのだろう?

 

 

「えーと…そ、その………だ、大丈夫でみゅ!」


 あ……噛んだ。

 ていうか『みゅ』って……

 ヤ、ヤバい。この威力だと耐性のない人は……! 

 サッと見まわすと、教室中がピンク色の雰囲気になっていた(主に男子)。

 

 やっぱり顔はいいから……かね?

 

「ぷ…、くふふ…」

 

 忍び笑いが堪えられない。やっぱり最高だよ水無月さん。

 

「なっ、これ全部アンタのせい…!?」

 

「そこ、静かにしろ」

 

 水無月さんの声が聞こえたのか、菊地センセがキラリと眼鏡を光らせながら注意してきた。

 おお、確かに怖い。今一瞬後ろに“鬼”が見えたよ……。

 

 

 眼鏡の菊地。

 眼鏡のきち……く。

 

 ………。

 

 

 {はぁ。興味のない分野のネタまで頭によぎるようになると……アカンよなぁ}

 

 遠い目。

 

 {何で遠くをみてるの?}

 {いや、…我が身の業について考えてしまったよ…}

 {??}

 

 そんな感じなピンクの雰囲気で、午後の授業は終わった。

 

 菊地先生は余りスムーズに授業が進まなかったせいか少し不機嫌そうだった。

 しかし彼(30歳独身、一人暮らし)は自宅でハムスターを飼っていて、それの話を振るといとも簡単に機嫌が良くなるらしい。

 まぁ、今は関係ないけど。

 

* 


 さて、学校が終わったからには遂に放課後。待ちに待った瞬間である。

 

 その心境は……そう、まさしくガン○ムを待ち焦がれるグ○ハムさんのごとく。

 あ、劇場版も応援してます。

 

 という訳で、まだ真新しい教科書類も机に残し、教室を出た。

 そこから昇降口に向かい、上履きはロッカーに入れ、スリッパ履き替えてそこを後にする。

 

 撒き餌はこれで十分。

 

 

 

 後は食いつくのを、

 

 

 ―――この部屋で見るだけだ。

 ……まさかこんなに早くこの部屋を使うことになるなんて……。

 少し感じ入りながら“部屋”に入る。

 

 

 

 そこは、理科室とは違う僕の(くに)

 

 

 

 放送室Ⅱ(ツー)である。

 

 

 

 *

 

 そこはちょっと入り組んだ所にある。

 

 設計の時にわざと広く作ったらしい音楽室の防音壁の中。

 図面にはないその場所にそれはある。

 

 広さはそれほどでもないが防音は完璧、外からの電波受信は外部にのばしたケーブルからアンテナに繋いである。

 無線RUNはないが、今のところは盗聴・盗撮施設としてだけ使っていこうかな~と目下算段しています。

 

「さてさて、2ーAのカメラは……Bの9…あ、あったあった」

 

 カメラは火災報知器に似せて学校中に最近配置し終わった。

 流石に更衣室とかには置いてないけど、この学校の大体の場所は網羅している。

 

 あ、あとグラウンドの野球部の試合が見れたり。

 

 いろいろ楽しいことはいっぱいな部屋である。

 

「さて、どうかな……」

 

 モニターに映ったその映像には特に何の異常もない。

 ……予想が外れた。もう終わっているかと思ったのに。

 

 痕跡を探そうと、カメラを切り替えて視界を変えてみる、が何もない。

 

「今日はやらないのかな?」

 

 軽く失望しながらモニターから視界を外そうとしたとき、

 

 “それ”は、映った。

 

「………ん?」

 

 今のは……ビンゴ?

 

 

 

 

 

 と、何で…………水無月さん?

 

「な~にやってんでしょうね、あの狼さんは?」

 

 まったく、計画が台無しなのだけど。

 ここで出てくるなんて、もうファーストシーズンのスザク並みに邪魔なんだけど。

 

 それか、せっかくOO(ダブルオー)が格好いい戦闘をしている所で微妙な歌を唄う地味三十路姫(マリナ・イスマイール)とか。

 

 さくらと小狼がいい感じになろうとしたときに出てくるエリオルとか。

 

 Destinyでアスランに擦り寄るミーアとか。カガリをだせよっ!

 何で最後にメイリンを連れてきたんだうわー!!

 

 

 

 

 

 ……取り乱した。

 じゃなくて、一体全体何をやってるんだろう?

 

「やっぱり呼び出しからの精神攻撃(アタック)のコンボ?」

 

 状況を見る限りそうだ。

 何か囲まれてるっぽいし。何を言ってるかは、ボイスレコーダーは向こうだから分からないが、ピンチらしいのはわかった。

 

 だって、“あの”水無月さんが人前であんなに顔を歪めて……泣きそうなんだもの。

 

 ヒロインがピンチなんだから。

 ヒーローなんて柄じゃないが、雑魚なヒールをやっつけるくらいなら、

 

 僕にだって……ね?

 

 

 

 〈Sudunly,the end of story co-mes to us.〉

 But he is...

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