二十三話 悪魔の場所で
出口の無い真っ暗闇のトンネルを、随分と長い時間彷徨い続けた。目に見える物は何もなく、ただ暗闇の中、振り返る事なく前に進むしか方法は無かった。
私達の粘り勝ちだ。
久しぶりに前を見てみると、僅かだが小さな光が現れた。その光は次第に大きくなり、私達の歩むべき道を照らしてくれた。
すごくすごく長い時間だった。
その光は当然、私達の味方だと思い込んでいた。
何が起こっているのだろうか。
久しぶりに感じた胸の奥底にあるこの感情。
この響き。
急に蘇る、過去の雰囲気。教室の匂い。
みんなの視線が私に集中する、あの何とも言えない空気感。
手の震えが止まらない。
しばらくすれば私は、止めたくても止まない涙を、何回も何回も拭って、頭の中が色んな想像でグチャグチャになっても、また涙で視界がぼやけても、その涙を拭って電話を切った。
そして私は、全力疾走で、警察署に向かった。
築き上げる努力は、周りに与える信頼は、何時間も何日も何年もの時間が必要だ。
沢山の時間を掛けても、色んな努力をしたとしても努力が報われない事、信頼関係を築けない事は大いにあり得る。
でも努力は継続しなければ報われない事を、スポーツを通して私は知っている。
だからと言ってどんなに頑張っても必ず報われとも限らないのが努力だ。
そして信頼関係は、掛けてきた時間がどれほど長くても、たった一つの世間が思う『悪』の出来事で一瞬にして消え去る事も、私は既に知っている。
電話の内容はこうだった。
「岳が父を庇って通りすがりの学生に暴力をし、今警察署で取り調べ中」
父からの電話からは確かにそう聞こえた。
何かの間違いだ。
岳が暴力を起こすはずがない。
それも私の父の前でなんて。
絶対に何か理由があったに違いない。
岳の事を信じてはいる。
でも電話だけで、父の説明だけではその状況に理解できない。
そもそも今日、岳と父は話をする予定だったのに。
私の頭の中は何一つ解決できないまま、疑問だけが増えていった。
そして、やがて疑問は心配に変わっていく。
もうすぐ光が見えそうな、希望のある日々を送っていた所なのに。
あれからもう四年が経ち、この四年間は決して無駄では無く、前に進む為に色んな我慢をしてきたのに。
努力だってしてきた。
信頼関係を取り戻そうと頑張ってきたのに。
そして最後は岳の、今の心配に変わっていった。
岳は今、警察署であの頃の様に質問攻めにあっていないかな。
あの頃を思い出して辛い思いをしていないかな。
今度は周りの大人は、きちんと話を聞いてくれる人かな。
岳はまた諦めたりしていないかな。
泣いていないかな。
ああ、早く岳の元に行きたい。
岳の隣にいてたい。岳を強く抱きしめたい。
私は走って走って走り続けた。
そして辿り着いた警察署で、
私はそのまま...泣き崩れた。




