二人の会話 〜岳と陽咲〜
「僕は紬を心から愛している」
「何よ。いきなり一人でやって来て。
十分知ってるよ」
「僕は紬が、僕のそばにいるだけで、存在するだけであの時は耐えることができた。
何でも乗り越えられる気がした」
「本当に愛が重いね」
「僕が高校を辞めた時、紬の存在は本当に大きかった。……でももう一つ僕を救ったのは陽咲が掛けてくれた言葉だ」
「私、何か言ったっけ?」
「ふふっ。この様子じゃ覚えてないよな」
「うん」
「あの時くれた言葉を今の陽咲にそのまま返すよ」
悩んで考えた所で、起きてしまった事や過去は決して変わらない。
焦って行動した所で、そのほとんどは上手くはいかない。
それだったら、今までの自分を、これまでやってきた日々を努力を信じてあげて、そして今のこの現実から決して逃げるな。
私たちも、紬も岳から絶対に逃げない。
「僕たちも、陽咲の今から絶対に逃げない。
……僕達の場合は僕達が陽咲から逃げると言うより、陽咲が嫌がっても毎日この病室には来るって意味だけど」
「ありがとう」
「陽咲のこれまでバスケに費やした時間は、決して陽咲から無くなる事はない。今はやすむ」
「ゆっくり前に進もう」
「……がっくん、トレーナーじゃなくてメンタルのトレーナーになった方がいいんじゃない?」
「……え?
……僕のあの一年間の勉強した努力は?」
「……すみませんでした」