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アイスに恋とスターチス  作者: 由寺アヤ
プロローグ
1/33

6月



 春が始まった。

 


 私は大河内岳の事をずっと目で追いかけていた。

気になるその気持ちが、恋に変わった瞬間を今でもはっきりと覚えている。



 ある日の昼休みだっただろうか。

窓際の席で私は、食べ終わった弁当箱を片付けながらみんなと話をしていた。


男子はご飯を食べ終わると、すぐに運動場に行って遊ぶのが日課である。

女子の私たちからすると、早朝から朝練をし、授業が終われば駆け足で部室に向かい部活の準備をし、夜まで練習をすると言うのに何が楽しくて、ご飯を食べ終わったらまた駆け足で運動場に向かうのか。本当に理解に苦しむ。


流石に本職を昼休憩になってまで制服でする男子はいない様だ。

大体は皆、運動場でもすぐにできるバスケをし、バスケ部はとりあえず外に行ってキャッチボールをしている。

とにかく体を動かしたいのだろうか。

お昼に運動場でスポーツをしているのは、スポーツクラスの男子だけだ。

もちろん毎日ではないが、昼休憩に窓の外を眺めれば、誰かしらは制服の袖を捲りバスケをしている姿が見えた。

 


 そんなある日、私の目に唐突に飛び込んで来たのが空手部の大河内岳だった。

 


この忙しい高校生活にも少し慣れ、大河内岳は無口な性格であると分かった頃に私は、彼のとびっきりの笑顔を見てしまった。

彼のギャップに心を射抜かれてしまったのだ。


私は小学生の頃から彼を知っていたが、今までに見たことの無い表情だった。

あんなに無邪気に、あんなに子供っぽく楽しそうに笑う大河内岳を見れるとは思いもしなかった。


この数ヶ月で、彼が空手部だけに心を開いている事は何となく気付いていた。

クラスの中でもほとんど空手部としか話さない。

女子とは会話しているところを見た事がない。


空手部全体のイメージも何となく他の部活生と比べるとどこか大人っぽく、みんな落ち着いてる。

教室の中でも基本的に賑やかなのはバスケ部男子だ。

だからか空手部が運動場でバスケを楽しむその姿は新鮮だった。

 


 初めはチラッと見た運動場に、いつもの様にスポーツクラスの男子がバスケをしているのが目に入った。

次に大河内岳を見つけ、私はしばらくバスケをする大河内岳を目で追った。

 

中々のセンスの持ち主である事を一瞬で知る。

彼が上手いからか、皆が彼にボールを回す。

身長も高く、鍛え上げられた体格が圧倒的に有利なのか、敵が目の前にいても軽々とゴールを決める。


すると近くで座って見ていた本業であるバスケ部たちが、大河内岳に近づき右手をソッと突き出す。

会話の内容は聞こえる訳もないが、まるで我がバスケ部に勧誘している様な素振りだった。


大河内岳もソッと右手を出し固い握手をしてる。

交渉が成立したかの様に見えたが次の瞬間、すぐに体格の良い他の空手部員が、我が空手部の次期エースをバスケ部なんかに取られまいと二人の握手を解く。


それらのやり取りが、遠くからでも楽しそうにしているのが分かった。

大河内岳も冗談にのったりするのかと考えながら、また再開したバスケを私はしばらく見ていた。

 


 その時だった。

またゴールを決め仲間とハイタッチをする彼。

その笑顔が目に焼き付いて離れない。

私の眠っていた心臓が突然動き出した様だった。

彼の笑顔を見た私は、この気持ちが恋であるとやっと気づいた。


 私が彼に恋をした日だ。


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