表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【絶対に許さない!】結婚間近の恋人を奪われ、さらに冒険者パーティーから追放、貴族の圧力で街にいられなくなった。お前らの血は何色だ!剣聖ライン=キリトの復讐は始まる!  作者: 山田 バルス
第一章 ライン、追放された剣聖

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/146

第68話 ローデスの門を落とした翌日

 ローデスの門を落とした翌日、まだ夜が明けきらぬ時刻。ラインたちは短い休息の後、次なる準備に取りかかっていた。


 目指すは、王都攻略。そのための補給、情報収集、そして民衆の蜂起を促すための工作――それらを一手に担うのが、今この時だった。


「まずは補給拠点の確保が急務ね。ローデスの門内に残された物資だけでは、王都突入は不可能」


 ユイナが報告書を手に、仮設された作戦本部の中でそう言った。長机の上には、王都周辺の地図が広げられている。


「南側の村、ファルティアで協力者を見つけました。農民を装った密偵が、食料と薬草を備蓄しているとのこと」


「俺が交渉に行こう」

ラインが手を挙げる。「剣を振るだけが戦いじゃない。今の俺なら、話を通せるはずだ」


「同行させてください」

 テイシアが一歩前に出る。

「その者たちが危険を顧みず協力してくれるなら、王女として、感謝を伝えたい」


「俺も一緒に行くよ」

 ラービンが手を挙げた。

「物資運びとか斥候の配置とか、俺の得意分野さ」


 こうして、ライン、テイシア、ラービンは補給部隊とともにファルティア村へと向かった。


 一方、エイミーとユイナは、王都内の内通者との接触を担当することになった。


「王都には、未だに王女派の貴族や魔術師が潜伏しています。彼らと連携できれば、内部から混乱を起こせるはず」


「でも、間違えば全員処刑される……それでもやるの?」

 とエイミー。


「ええ」

 ユイナは真っ直ぐに頷いた。

「ここで怯むなら、何も変えられない。私たちは未来を選び取る側にいるのよ」


 二人は変装し、王都近郊に残された隠し通路から潜入を試みた。


 そして数日後――。


「ユイナ、来て」

 エイミーが小声で呼ぶ。二人は朽ちた屋敷の地下に潜む隠れ家で、ある男と会っていた。


 彼の名はクレイン。かつて王都防衛軍の魔導士であり、今は王女派の地下組織の一員。


「……剣聖ラインと王女テイシアが生きている。しかも、辺境で軍を率いていると聞いたときは耳を疑ったよ」


「彼らはこの国を変える覚悟があります」

 ユイナが答える。

「あなたたちの協力があれば、王都を無血開城することも……」


 クレインは少し黙ったあと、頷いた。

「まだ数は少ないが、王都内にも不満を抱く兵や市民は多い。反乱の火種はある。あとは火を点けるだけだ」


 エイミーが微笑む。

「その火は、もうすぐ燃え上がるわ」


 一方、ファルティア村でも事態は進展していた。


 ラインたちは村の広場で、協力者たちと対面していた。農民たちの中には、元軍人や放浪者も混じっており、その目は鋭かった。

「……で、本当に王都に攻め込むってのか? 相手は二倍の兵力だぜ」


「確かに、兵は少ない。だが、民意は違う。王都の人々が立ち上がれば、勝機はある」ラインはまっすぐに語った。


「私もそのために戻ってきました」

 テイシアが言葉を継ぐ。

「この国を、暴君の手から取り戻すために」


 その姿、その声に、誰かが小さく息を呑んだ。「……姫様だ。本物の」


 やがて、ざわつきは確信へと変わっていき、村の長老が口を開く。「ならば……ファルティアの誇りにかけて、協力しよう」


 食料、武具、馬車。村の全てが動き出し、王都突入に向けた準備が本格化する。


 ――そして、全ての段取りが整った日。再び、ローデスの門に仲間たちが集まった。


 城門の上から、ラインは静かに王都の方向を見つめる。


「いよいよだな」


 テイシアが隣に立つ。

「きっと……終わらせましょう、この戦いを」


 風が、春の匂いを運んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ