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【絶対に許さない!】結婚間近の恋人を奪われ、さらに冒険者パーティーから追放、貴族の圧力で街にいられなくなった。お前らの血は何色だ!剣聖ライン=キリトの復讐は始まる!  作者: 山田 バルス
第一章 ライン、追放された剣聖

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第41話 王国直属の内偵部隊との戦い!

 灰色の雲が低く垂れ込める午後、ラインたちはテーラ村を早朝に出て北の鉱山跡に足を踏み入れていた。

 かつて栄えた鉱山も今では採掘の痕跡を残すのみで、風に揺れる枯れ草の音が寂しく響く。坑道の入り口は岩崩れを装って一部が封鎖されていたが、抜け道があることはユイナの情報で分かっていた。


「ここが奴らの隠れ家か……気を抜くな。相手は王国直属の内偵部隊だ」


 ラインが低い声で言うと、テイシアが頷いた。


「ただの斥候じゃないわ。精鋭が潜んでるはずよ」


「わたし、音に気をつけて進む。罠があるかもしれないから」


 ラービンがぴくりと耳を動かし、軽やかな足取りで前に出る。彼女の獣人としての感覚は、このような場所でこそ真価を発揮する。


「私も後衛から結界を張る。油断したら命取りになるわ」


 エイミーがそっと杖を掲げると、空気がわずかに揺らめいた。彼女の魔術は既に再調整を終えており、王国魔術師団にいたころ以上の制御力を見せていた。


 四人は坑道に足を踏み入れる。ひんやりとした空気が肌を刺すようで、岩壁には苔と鉱石がまばらに光っていた。奥へと進むたび、ただならぬ気配が強まっていく。


 そして、ある地点でラービンが立ち止まった。


「……いた。三人。息を潜めて、こっちをうかがってる」


 ラインは剣に手をかけ、テイシアが小さく指を鳴らす。その瞬間、前方の岩陰から影が飛び出した。


「気づかれたか!」


 黒い装束に身を包んだ者たちが次々と現れた。その身のこなしから、彼らがただの兵ではないことは一目瞭然だった。素早く、的確に急所を狙ってくる。


「散開して応戦!」


 ラインの指示と同時に、戦いが始まった。


 刃と刃がぶつかり合う鋭い音が坑道に反響し、テイシアの雷撃が一人の敵を吹き飛ばす。だが、敵はひるまない。訓練された動きで陣形を組み直し、魔術と剣技を織り交ぜて応戦してくる。


「やっぱり、ただの偵察部隊じゃない……! これは暗殺部隊の動きよ!」


 テイシアが叫び、エイミーの防御結界が間一髪で飛んできた火矢を弾いた。


「こんな連中を放っておいたら、辺境伯領どころか村まで……!」


 ラインの剣が唸りを上げ、一人、また一人と敵を斬り伏せていく。だが、敵もまた手練れだった。最奥から現れた大柄な男が、異様な気配とともに姿を見せる。


「ほう、貴様がライン=キルトか。剣聖と聞いていたが、若造ではないか」


 男の名は“黒鉄のバロス”。王国直属の暗殺部隊隊長であり、魔剣使いとして恐れられる存在だった。


「剣聖の力、見せてもらおうか!」


 バロスが抜いた剣は、黒く鈍い輝きを放っていた。それは呪詛が宿る刃——触れるだけで生命力を吸い取る、禁呪の魔剣だった。


 ラインは即座に反応し、バロスの一撃を受け止める。


 だが、衝撃は尋常ではなかった。


「ぐっ……!?」


 手首に伝わる力に、ラインが歯を食いしばる。だが彼は、反撃の構えを崩さなかった。


「俺はもう、仲間を……大切な人たちを、傷つけさせない!」


 叫ぶと同時に、ラインの剣が蒼白く光る。


「《剣聖奥義・閃流》!」


 気を一点に集中し、流れるような斬撃がバロスの胴を貫いた。だが、それでもバロスは倒れない。


「ぬるいぞ、小僧ォ!!」


 バロスが反撃に転じるその瞬間——


「させないっ!」


 ラービンが跳ね上がるように飛び、手にした短剣をバロスの肩に突き刺した。その動きを狙って、テイシアの雷撃が炸裂。


「エイミー、今!」


「任せて!」


 エイミーの呪文詠唱が完成し、巨大な氷槍が頭上からバロスを貫いた。悲鳴とともに、バロスの身体が凍結し、静かに崩れ落ちる。


 その場に静寂が訪れた。


 息を整える間もなく、テイシアが周囲を確認する。


「……全部で十三人。全滅したわね」


 ラービンは血のついた手を見て、小さく震えながらも言った。


「わたし、ちゃんと……やれたかな」


「十分だ。お前がいなかったら、俺たちは……」


 ラインが肩を叩くと、ラービンの耳がぴくりと揺れた。


「これで……辺境伯に顔向けできるな」


 エイミーが微笑み、テイシアも小さく頷く。


「でも、きっとこれで終わりじゃない。王国はまだ動いてくるわ」


「だからこそ、ここで止める。これからは、俺たちの手で未来を選ぶんだ」


 ラインの言葉に、仲間たちが頷いた。


 鉱山を出た四人を迎えたのは、晴れ間から差し込む柔らかな陽光だった。それはまるで、彼らの戦いが報われたかのように、温かかった。





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