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【絶対に許さない!】結婚間近の恋人を奪われ、さらに冒険者パーティーから追放、貴族の圧力で街にいられなくなった。お前らの血は何色だ!剣聖ライン=キリトの復讐は始まる!  作者: 山田 バルス
第一章 ライン、追放された剣聖

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第11話 ライン、試練の洞に挑む!

 ライン、試練の洞に挑む!


 朝露に濡れた木々の匂いが、隠れ里フィエルに広がっていた。陽はまだ低く、東の空をかすかに染め始めたばかり。


 ラインはその静かな時間に、村長の屋敷を訪ねた。


 「……剣聖の力について、聞かせてください」


 長老は目を細め、湯気の立つ茶をゆっくりとすすった。


 「ふむ。いきなり重い問いじゃの。なにゆえ、それを知りたい?」


 ラインは真剣な眼差しで、答えた。


 「俺には、守りたい人がいる。アルテイシア、そしてこの村の人たち……。そのために、力が欲しいんです」


 しばらくの沈黙の後、長老は小さくうなずいた。


 「剣聖の力。それは、選ばれし者だけが辿り着ける道じゃ。無理に手に入れようとして得られるものではない……が、そちに資格があるかどうか、確かめる手段ならある」


 そのときだった。


 屋敷の縁側に座っていた狐が、突然ぴたりと動きを止めた。


 次の瞬間、全身が金色の光に包まれ、その姿が眩い輝きとともに変化していく。


 目を見張るラインとアルテイシアの前に現れたのは、狐耳と尻尾を持つ銀髪の少女だった。


 「久しいな、人の子よ。我が名はユイナ。森に仕える神獣にして、かつて剣聖を導いた者」


 少女――ユイナは、小さく微笑む。


 「そなた、力を求めるか?」


 「……はい」


 「ならば、我が案内しよう。剣聖の記憶が眠る“試練の洞”へ」


 ユイナが手をかざすと、空中に魔法陣が浮かび上がった。木々の中に隠された道が、一本の光の線となって伸びてゆく。


 「さあ、ついてこい。心せよ、そこは“心”を試される場じゃ。剣の腕だけでは通れぬ」


 ラインとアルテイシアは視線を交わし、うなずいた。


 こうして、三人は試練の地へと足を踏み入れた。


     ◆


 森の奥深く、獣道すら消えた密林の先に、それはあった。


 黒く裂けた岩肌の間にぽっかりと開いた、巨大な洞窟の口。


 そこからは冷気が吹き出し、ただならぬ気配が漂っている。


 「ここが……」


 「剣聖の記憶が刻まれた地、“剣聖の洞くつ”じゃ」


 ユイナはそう言うと、ラインに向き直った。


 「中に入るのは、そなた一人。試練を乗り越えねば、剣聖の鍵は授けられぬ」


 アルテイシアが心配そうにラインの袖を握る。


 「……気をつけて。私はここで祈ってる」


 「必ず戻る。俺は、逃げない」


 ラインはそう言い残し、洞窟の中へと踏み入った。


     ◆


 中は暗く、冷たく、静まり返っていた。だが、次第に目が慣れてくると、壁に刻まれた模様や、古い剣のレリーフが目に入ってくる。


 やがて、最初の試練が現れた。


 〈心の幻影〉――


 それは、ラインの過去の記憶が形となって現れる場だった。


 かつての仲間の嘲笑、裏切りの声、自らの無力さ。


 「どうせ、お前なんて……剣聖にはなれない」


 「誰も、お前を必要としてない」


 幻影が囁き、剣を抜こうとする心を鈍らせる。


 だがラインは、目を閉じ、心を深く沈めた。


 (俺には……アルテイシアがいる。あの笑顔を、守りたいんだ)


 その想いが、幻影を貫いた。


 次の瞬間、幻影は霧のように消え、奥への道が開かれた。


     ◆


 第二の試練――〈命の剣〉。


 それは、一振りの剣が突き立てられた石の祭壇。


 「この剣を引き抜け。ただし……その刃は、生と死の境を越える」


 試すのは覚悟。


 ラインはゆっくりと剣に手をかけた。


 過去への未練、恐れ、弱さ――すべてを断ち切る覚悟。


 「……俺は、前に進む」


 剣を引き抜いた瞬間、眩い光が洞窟全体を満たした。


 剣が消え、代わりにラインの胸に熱が灯る。


 それは、剣聖の鍵。


 選ばれし者に与えられる、力の核だった。


     ◆


 洞窟を出ると、アルテイシアが駆け寄ってきた。


 「おかえり……!」


 「……ああ、ただいま」


 ユイナが微笑み、神々しい光の中で言った。


 「そなたは、鍵を手にした。剣聖の力を継ぐ者として、これから試され続けることになるじゃろう。だが忘れるな。その力は“誰かを守る”ためにある」


 ラインはうなずいた。


 「……そのつもりだ」


 こうして――ラインは、剣聖の力を得るための第一歩を踏み出したのだった。

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