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泥酔した美少女をお持ち帰りしたら懐かれた件   作者: ナツノヒ
懐かれてしまったのかもしれない
22/30

ご褒美

 思わず、後ろに手を着いてしまう。

 その衝撃から少し遅れて、ふわりと甘い香りが悠の鼻孔をくすぐってきた。

 何が起こっているのか……一つしかないと思いつつも、理解が追い付かない。

 それなのに、ドクドクと鼓動だけがいたずらに早くなっていく。

 「だ、大丈夫……?」

 ゆっくり顔を下ろすと、見慣れた淡金色の髪が目の前にあって——乃亜の顔が悠の胸に埋められていた。

 「もう少しだけ……待って」

 「……おう」

 乃亜の吐息が薄いティーシャツ越しに肌をくすぐってきて、全身がゾクゾクとむず痒さに襲われる。

 (やばい……何だこれ)

 呼吸もままならず、このままでは理性やら何やら色々とまずい気がして、悠は咄嗟に距離を取ろうとする。

 ——しかし、すぐにやめた。

 キュッと服を掴んでくる乃亜の手が、震えていたからだ。


 力は弱々しい。

 やろうと思えば簡単に振り切れてしまう。

 けど……そんなこと出来ない。

 離れちゃいけない。

 あの時と同じだ。

 こうして、彼女が身を寄せられる相手さえいれば……。

 なら、せめて今だけは。


 ——悠は目を閉じて、深呼吸をした。

 耳を澄ますと……トクットクッと、小さな鼓動が聞こえてきて、自分のものと交互になり続ける。

静かなはずの部屋が、何だかうるさい。

 それに、自分の心臓の音だけが直に聞かれていると思うと恥ずかしくてたまらない。それでも落ち着くのを待つしかないため、悠はジッともどかしさを堪えていた。

 すると、乃亜が胸に顔を埋めたまま口を開いた。

 「ね、ねぇ……」

 「……っ! な、なんだ?」

 胸が振動して、くすぐったい。

 悠は何とか我慢して、乃亜に応じる。

 「あ、あれってさ……ほんと?」

 「あれ……?」

 「だ、だから……私に励まされてるとか何とか……って」

 「うっ……」

 本音とは言え、勢いで口走ってしまったセリフを指摘されて悠は顔を真っ赤に染める。乃亜に見られていないのが幸いだ。

 「ほ、本当……だけど」

 相手に直接聞かれるというのはあまりに照れ臭いが……だからと言って、ここではぐらかしたりするのは絶対に良くない。

 そう思い、悠は正直に答える。

 心做しか、乃亜の震えが小さくなった気がした。

 「じゃ、じゃあ……何かご褒美……ほしい」

 「……ご褒美?」

 乃亜のまさかの要求に、悠は首を傾げる。

 論より証拠……ということだろうか。

 「何か欲しいものがあるとか?」

 「ない」

 「何か作って欲しい料理がある?」

 「違う」

 「じゃあ、何かしてほしいことがあるとか」

 悠の胸の中で、乃亜が無言で頷いた。

 つまり、物ではない……ということらしい。

 かと言って、要求の趣旨的に何か言ってほしいということでもないだろう。

 そうなると、残るは純粋に"行動"ということになるのだが……乃亜は依然として悠から離れようとしない。

 ——もしかして。

 「今じゃなきゃ、ダメなのか……?」

 「……うん」

 今の身動きが取れない状況で出来る、相手を褒める意味を持つ行動。

 限定的過ぎて一つしか思いつかず、でもまさか……と逡巡する悠だが、よくよく考えてみれば、最も乃亜らしいかもしれないと思った。

 (でも、俺なんかがそんなことしていいのか……?)

 悠はこれまで、乃亜の警戒度を上げないようにと、自分からだけは絶対に乃亜に触れないようにと心がけてきた。

 自分のため、ひいてはお互いのために。


 ——けれど、警戒って何だろう。


 いくら追い詰められていたとしても、疑いを持っている相手にこんな風に、寄りかかってくることがあり得るだろうか。

 さすがに変じゃないだろうか。

 いや、今回だけじゃない。

 そもそも最初から、彼女の行動は矛盾ばかりだった。


 それなら。

 もしかすると。

 本当は——


 悠は右手を床から離して、ゆっくりと持ち上げていく。

 それを空中で少し彷徨わせるようにしてから、目の前にある乃亜の頭に置いた。

 「んっ……」

 一瞬、乃亜の肩が跳ねる。

 これでいいのかと不安になる悠だが、乃亜はすぐに体の力を抜いた。

 そのまま、優しく撫でてみる。

 こんなの、照れ臭いにも程がある。

 それなのに……サラサラと手触りがよくて、ずっとこうしていたいと思った。

 胸にかかる重みが、次第に増していく。

 どうやら、これが答えのようだ。

 そのうち乃亜の震えは完全に止んだが、乃亜は離れない。

 ドクッ——

 落ち着いてきていた鼓動が、再び早鐘を打ち始める。

 それも、悠だけではないようだ。

 (ったく、これのどこが警戒なんだか……)

 子犬のように甘えてくる乃亜があまりに可愛らしく、そんな無防備さに少し呆れながらも悠は遠慮なく甘やかすことにした。

 もう、確信と言ってもいいんじゃないだろうか。

 さすがに好かれている……とまでは言い過ぎかもしれないが、もはや疑われているわけなどなかった。

 だから、少なくとも……そう。


 ——懐かれてしまったのかもしれない。


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます!

本編がなろう初投稿ということで、拙くお見苦しい部分もあったことと存じますが、それでもたくさんの方々に読んでいただけていることが嬉しくてたまりません。

これからも皆様にお楽しみいただけるよう、精進してまいります!

と言いたいところなのですが……実はこの度、健康上の都合で活動を一時休止せざるを得なくなってしまいました。

私の不摂生の致すところで目も当てられないのですが、さほど深刻な話でもありませんので半年以内には復帰できるかと思います。

私事で大変申し訳ございませんが、本編はまだまだ投稿していくつもりです!

これから二人の関係がどう進展していくのか——

楽しみにお待ちいただけますと幸いです!

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― 新着の感想 ―
いつか続き楽しみにしてますー
いつになるか分かりませんが、続き待ってます
どうかお大事にしてください。次の投稿を楽しみにして、お待ちします。
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