優しさの意味
「本当に面倒くさい。いつもいつも……何をしても危なっかしくて、迷惑だけかけて何の役にも立たない」
……お姉ちゃん?
え、なんて言ったの……?
迷惑……?
役立たず……?
……き、聞いたことない。
今までそんなこと——
「今回のことだって、そもそも乃亜ちゃんが自棄を起こしたのが発端みたいだし、考えてみれば自業自得だよね」
……分かんない。
だ、だって……お姉ちゃんは優しくて……。
昔から、私のことなんて放っとけばいいのに……一緒に遊んでくれて、宿題を手伝ってくれて、一緒に暮らそうって言ってくれて……。
そういうのが嫌味っぽくて、素直に受け取れないことも多かったけど……お姉ちゃんだけは私を見てくれてるんだって思ってた。
お姉ちゃんは私の味方だって……そう信じてた。
——頭が、真っ白になっていく。
目頭が熱くなってきて、みるみる視界が滲んでいく。
そんな中、お姉ちゃんはこれまでの鬱憤を晴らすかのように、私への不満を吐き捨てていった。
……内容なんて、入ってこない。
でも、そうだよ……。
何を今さら……。
普通に考えて、お姉ちゃんみたいに一人で何でも出来ちゃう人が、私なんかに構う必要なんてない。
今までのだって、やっぱり全部……嫌味とか、自己満足のために決まってる。
……バカだなぁ、私。
少し優しくされただけで、自分の都合のいいように捉えて、あっさり信じちゃって。
そう。
だから、こんなことになるんだよ……。
最上君が——
変に優しくしたりするから。
こんな私の性格がいいって言うから。
下手くそな私の料理を、また食べたいとか言うから。
——面倒な酔っ払いを、持ち帰ったりするから。
最上君といる時間は、すごく楽で、温かくて、心地よかった。
でもどうせ、これも私の勘違いなんだ。
彼の優しさにもきっと何らかの意味があって、私はいつの間にかそれに騙されて、甘えちゃって……。
やっぱり、疑わなきゃダメだった。
……関わらなきゃ良かった。
けど——
「でもよかったんじゃない? ここにいればお父さんたちも乃亜ちゃんも楽じゃん。それに……どんな関係か知らないけど、求められて幸せでしょ」
——もう、やめて……!
分かったから……お姉ちゃんもお父さんたちと同じなんだって。……私のことが、邪魔なんだって。
それは分かったから……これ以上、最上君に聞かせないで。
嫌われたくないの……。
誰にも嫌われたくない……。
でも、違うの。
最上君には、絶対嫌われたくない。
止めたいけど、唇が震えて上手く動かせない。
……情けないな。
自分の事なのに、泣くことしか出来ないなんて。
……あの頃のままだ。
やっぱり、私には何も——
「あんたらが……そんなんだからだろ」




