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泥酔した美少女をお持ち帰りしたら懐かれた件   作者: ナツノヒ
懐かれてしまったのかもしれない
20/30

優しさの意味

 「本当に面倒くさい。いつもいつも……何をしても危なっかしくて、迷惑だけかけて何の役にも立たない」

 ……お姉ちゃん?

 え、なんて言ったの……?

 迷惑……?

 役立たず……?

 ……き、聞いたことない。

 今までそんなこと——

 「今回のことだって、そもそも乃亜ちゃんが自棄を起こしたのが発端みたいだし、考えてみれば自業自得だよね」

 ……分かんない。

 だ、だって……お姉ちゃんは優しくて……。

 昔から、私のことなんて放っとけばいいのに……一緒に遊んでくれて、宿題を手伝ってくれて、一緒に暮らそうって言ってくれて……。

 そういうのが嫌味っぽくて、素直に受け取れないことも多かったけど……お姉ちゃんだけは私を見てくれてるんだって思ってた。

 お姉ちゃんは私の味方だって……そう信じてた。

 ——頭が、真っ白になっていく。

 目頭が熱くなってきて、みるみる視界が滲んでいく。

 そんな中、お姉ちゃんはこれまでの鬱憤を晴らすかのように、私への不満を吐き捨てていった。

 ……内容なんて、入ってこない。

 

 でも、そうだよ……。

 何を今さら……。

 

 普通に考えて、お姉ちゃんみたいに一人で何でも出来ちゃう人が、私なんかに構う必要なんてない。

 今までのだって、やっぱり全部……嫌味とか、自己満足のために決まってる。

 ……バカだなぁ、私。

 少し優しくされただけで、自分の都合のいいように捉えて、あっさり信じちゃって。


 そう。

 だから、こんなことになるんだよ……。


 最上君が——


 変に優しくしたりするから。

 こんな私の性格がいいって言うから。

 下手くそな私の料理を、また食べたいとか言うから。

 

 ——面倒な酔っ払いを、持ち帰ったりするから。


 最上君といる時間は、すごく楽で、温かくて、心地よかった。

 でもどうせ、これも私の勘違いなんだ。

 彼の優しさにもきっと何らかの意味があって、私はいつの間にかそれに騙されて、甘えちゃって……。

 やっぱり、疑わなきゃダメだった。

 ……関わらなきゃ良かった。

 けど——

 「でもよかったんじゃない? ここにいればお父さんたちも乃亜ちゃんも楽じゃん。それに……どんな関係か知らないけど、求められて幸せでしょ」

 ——もう、やめて……!

 分かったから……お姉ちゃんもお父さんたちと同じなんだって。……私のことが、邪魔なんだって。

 それは分かったから……これ以上、最上君に聞かせないで。


 嫌われたくないの……。

 誰にも嫌われたくない……。

 でも、違うの。

 最上君には、絶対嫌われたくない。


 止めたいけど、唇が震えて上手く動かせない。

 ……情けないな。

 自分の事なのに、泣くことしか出来ないなんて。

 ……あの頃のままだ。

 やっぱり、私には何も——


 「あんたらが……そんなんだからだろ」

 


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