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第9話 お客様。

コックが牛肉を焼いている。


焼きたてをお客様に振る舞うらしい。次々に焼きあがった牛肉の乗った皿が配られる。

「・・・・俺、、、この子、、、一生懸命、、、育てて、、、」

「うん、うん、美味しいよ。頑張ったね。」

家畜班の青年が号泣しながら牛肉を食べている。隣で美味しそうに食べているのは婚約者なんだろう。日に焼けて、健康的な娘さんだ。


「俺の豚も美味いよ?」

豚の煮込み料理の前で、別の青年がみんなに豚を勧めている。


「今年のブドウは良かったなあ、、、さっぱりして飲みやすいだろ?」


このワイン?ワインも作ってたのか、、、、収穫の手伝いは行ったけど、、、


「リンゴのシードルはもうちょっと改良が必要かなあ、、、」

何人か紳士が集まってグラスを傾けている。


「来年は、ホップも作って、ビアなんかどうだろう?」

「それもいいがなあ、、、いよいよウイスキー、、、どうだろう?」

「飲むか?もう少し寝かせようかと思ってたけど、、、」


何でも作ってるんだなあ、、、、


ワインのグラスを持って、会場を見渡す。

ライアンとテアちゃんは座って料理を食べているようだ。

・・・・まあ、、、お似合いだからいいか、、、


聖女は見つけられませんでしたが、婚約者は見つけました、で、済むかな?


これと言った後ろ盾のない、、エタン国の名を出すとかえって不利だし、、小国でもジャドウの侵攻を阻止したソラル国の後ろ盾を得られるのはライアンにとってはいいことだろう。

でも、、姉上のように、、、、、粗末に扱われたりしないだろうか?

・・・・ライアンが、、、、あの子を守り切れるだろうか?


会場がザワリとした。雪で遅れていた楽団と、客人が着いたらしい。



*****


人の出入りがあったので、会場の空気が少し入れ替わった。暖まり切っていたから、丁度いいか。


「ライアン様、ご挨拶が遅くなりまして、申し訳ございません。王太子のサミュエルと申します。合わせて、ご婚約おめでとうございます。」


兄の鼻先が赤いのは、、、、よほど寒かったんだろう。

ライアンに挨拶してから、こちらに来た。


「大叔母様、御機嫌麗しく。今日もお綺麗ですね。遅くなりました。」

ミラばあさんの手を取って口づけている。相変わらず、キザだな。


「おお、我が妹よ!!婚約おめでとう!!お兄ちゃんに婚約者を紹介しておくれ!!」

「・・・・・殴るわよ?」

「おや?恥ずかしいのかい?むふふっ、、、お前とエタン国の第二王子の婚約は、随分前から話されていたんだ。最初は6歳。その頃はお前の身体が弱くて決まらなかった。次は18歳。お相手がジャドウに入っていたから保留になっていた。今回、なんていうの?飛んで火にいる夏の虫?棚から牡丹餅?」

「は?なんで?」

「なんでって、、、聞いてなかったの?お前が体が弱かったから、国王が外遊中にお前に初代フェンをもらってきただろう?次は18歳の時、今のフェンね。初代フェンが亡くなってなかなか立ち直れなかったお前のために、僕が貰いに行ってきただろ?その時改めてエタンの王太子と決めてきたんだ。」

「・・・・決めて、、、、」

「ここにきて、大叔母様が乗り気でねえ、、、運命なんじゃない!お前と互角に戦えるらしいし、よく働くし、、大叔母様が気に入るなんて!僕のコンスタンスと一緒じゃないか!!!」

「ああ、、、お義姉は?今回はご一緒じゃなく?」

「うふふっ、、子供が出来たんだよ、、、一緒に来たがってたんだけど、我慢してもらった。お兄ちゃん、早く帰んなくちゃ。」

「・・・・おめでとうございます。」

「うん、、、、本当に嬉しい。」


お義姉様は侯爵家の跡取りとして、徴農されてきた。

働きっぷりと、聡明さと、気質を買われ、大叔母様が皇太子妃に押した。

当然、侯爵家は猛反対。そこで、、、

侯爵家の次女に、自分の二番目の孫息子を婿に出し、跡継ぎにさせた。そこまで?と、みんな思ったが、、、、頭が良すぎて爆走してしまう兄上をきちんと尻に敷いて、上手くあしらっている。

・・・・大叔母様、、、、恐るべし、、、、


「とにかく、、、、何か食べさせて、、、話はその後でもいい?」


そう言って、兄は取り囲んだみんなの輪に嬉しそうに入って行った。


「な、、、何のんびり食べてんのよ?」

「豚。」

「・・・・・」

「美味いよ?お前も食べな。腹減ってんだろ?さっきからカリカリして、、ほら、」

「・・・・・」


フェリが豚のソテーのジャガイモ添えを取ってくれた。


「豚の煮物も取って来て。」

「・・・へいへい、、、」


兄が来たので、みんなわいわい集まっている。

私は壁際のテーブルに座り、豚のソテーを食べる。美味しい。

両手に料理と飲み物を持って、フェリが戻る。

「リンゴのシードルでいい?」

「うん。ありがとう。」


ドカッと向かいの席に座って、豚の煮込みを食べているフェリを眺める。

綺麗な銀髪に、菫色の瞳、、、食器の扱いは綺麗だな、と思っていた。剣の腕も立つ、教養も、語学力もある、ライアンに経営学を教えていたのもこいつだろう、ダンスも踊れる、、、なんか、、、ムカつく、、、、


「・・・・フェリックス様は、、、ご存じだったんですか?」

「ごふっ、、、何???普通に話して!怖いんだけど!!」


慌ててワインで流し込んでいるようだ。


「フェンのこと?あの子がいるってことは、王族関係者だろうな、とは思ってたけどね。この国にはいない犬だし。暑さ苦手だしね。うちの国ではそりとか引いて働いてるんだ。ふふっ。でも、、、、まさか、婚約とはね、、、」


当のフェンは、今日はコック長にべったりだ。わかりやすい子、、、、







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