第7話 冬ごもり。
「そうそう、いいね、ライアン、もう少し胸を張って。」
僕は、テアちゃんの手を取って、曲に合わせてステップを踏む。
テアちゃんは笑顔を忘れていない。僕もつられて笑う。
「そうそう、、、足元ばかり気にしないで、笑ってね。」
神殿のホールに備え付けられていた小さなピアノを弾きながら、聖女様がダンスのレッスンをしてくれる。
暖炉の薪がぱちぱちと燃えて、ほんわりと暖かい。
一曲終わって、礼をする。
テアちゃんは今日はカワイイ黄色のワンピース。スカートをつまんでのご挨拶は、小さな淑女、だね?かわいい。
僕は、、、、この国に来た時に着てきた洋服は小さくなってしまって、、、テアちゃんのおばあちゃんのミラさんが、どっからかおさがりを沢山持ち込んでくれた。フェリの着替えも。靴も来た。おさがりよって言ってたけど、結構物が良い。凄いね、テアちゃんのおばあちゃん!!
休憩のお茶の時間も、マナーを学ぶ場になった。
紅茶のカップが、きちんとソーサー付きになる。
ケーキも出る!これは、聖女様お手製らしい。この間頂いた、スイートポテト、というさつまいものケーキも美味しかった。
今日は、、、、
リンゴとさつまいものタルト!!
隣の家からミラさんもいらして、みんなでテーブルを囲み、和やかに紅茶を頂く。
「ただいまあ、、、え?お茶の時間?俺の分は?」
フェリが雪まみれになって、帰ってきた。
「あんた!雪はらってから入れって、何回言ったらわかんの?バカなの?」
「へいへい、聖女様、、、」
「ちょっと!!フェンの毛についた雪もちゃんと払ってよ!!!」
後から嬉しそうに駆けこんできた聖獣様は、フェリの近所の雪かきについていくので、白い毛に雪玉がぶら下がっている。どうも、体温で溶けた雪に雪がくっいて、雪玉が出来上がるらしい。
「へいへい、、、ほら、行くぞ、外でブラシだ!寒いなあ、、、働いてきた俺にいたわりの言葉もないなんて、、、とんだ聖女様だ、な?あーーー寒い、、」
「だから!聖女じゃない!終わったら着換えてきなさい。お茶の時間よ?」
この神殿は雪国使用になっているらしく、玄関が二重に仕切られている。客人が玄関を開けても冷たい空気が流れ込みにくい作り。おかげで、フェリと聖女様が玄関先で攻防を繰り広げても、玄関わきのホールは暖かい。
「美味しいですわね、おばあ様。このお芋のケーキ。」
「そうね。あら、ライアン、紅茶お代わりする?」
テアちゃんのおばあちゃんが優雅な手つきで、ポットから紅茶を注いでくれる。
・・・・もう、あの二人の言い合いはみんな慣れっこになっているので、誰も気にしない。ここでも、、仕事場でも、、、
和やかに話していると、着替えたフェリと、綺麗に拭いてもらった聖獣様が戻ってきた。
聖獣様は遊び疲れたのか、暖炉の前で眠り込んでしまった。
「ミラ様は本日も麗しく、、、」
フェリがちゃんと主賓に挨拶している。テアちゃんのおばあちゃんは今日は少しくすんだ赤の素敵なドレスだ。
「聖女様は本日も騒がしく、、、くくっ、、、」
フェリに紅茶とケーキを運んでくれた聖女様の椅子を引きながら、、、、フェリ、、、
「あんたは!!」
「おや?どうされましたか?お客様が驚かれますよ?」
フェリが人差し指を唇に当てて笑っている。
着換えたフェリは、銀色の髪を緩く結び、黒の上着に、茶色のベスト、タイは少しくすんだ赤、、、ミラさんに合わせたのかな?黙って座ったら、貴公子みたいなんだけどなあ、、、、実際、国元でも城付きの侍女や女中に待ち伏せされたり、、、モテモテだった。
「ふふーーん、、、いいわねえ、、、」
「?」
「ねえ、エレナ?月末にお客様がいらっしゃるでしょ?私の所で、舞踏会にしようかしら?テアにもライアンにも、いい勉強になると思うしね。ライアンの歓迎会もまだだったし。支度はこちらで用意するから。」
「・・・・はあ、、、」
めんどくさそうに聖女様が返事をする。
「ねえ、あなたたち、メインは何がいい?」
「牛肉がいいですわ、おばあ様。」
「僕は、、、鶏も好きです。」
「「豚!!!」」
聖女様とフェリは同時に口にして、また言い合っている。
この二人は、、、仲が悪いのか良いのかよくわかんないなあ、、、
ミラさんが楽しそうに笑っている。