第5話 さつまいも。
「試し掘りをしましょう。」
麦の刈り入れがひと段落した頃、聖女様がみんなを集めて言った。
畑にうにうにと蔓を伸ばす、さつまいも、という芋を掘るらしい。
「この芋は、もともと南国の芋なのよ。北限を調べるための試作をしてるんだ。」
そう言いながら、まず、蔓を刈り取る。まだ青々とした葉を付けている。
切ったところから、白い液体が出ている。これが、生きのいい状態なんだって。
蔓を切って、さっぱりしたところを、スコップで掘っていく。土が寄せてあるので、どこを掘るか分かりやすい。
「へえへえ、、どうせこういうのは俺の仕事でしょうよ。」
そう言いながらフェリがスコップを入れて、土ごと芋を起こしていく。
赤紫色の、変に長い芋が、一つの蔓に何個もついて持ちあがる。
「よく見て掘り上げて。芋を切らないで。わかった?」
「へいへい、、、あ、、、、」
「今言ったばかりでしょう?切るな!」
「あーーーーーーうるさい、、、」
聖女様とフェリは通常営業だ。いつもこんな感じ。
「へえーーーこれ?」
「はい!次々掘って、一か所に集めますよ。」
僕はテアちゃんと並んで、その芋を掘っていく。結構大きい。芋と言うとジャガイモみたいな芋しか思いつかなかったけど、、、、せっせとフェリが起こして、僕たちが掘り上げる。
フェリが間違ってスコップで切ってしまった芋を、聖女様が早速料理してくださった。
「はい、細く切って油で揚げた奴ね。塩を軽く振ってあります。」
おおーーーー甘くて美味しい!!ほくほくしている。
僕はテアちゃんと畑の隅に腰かけて、揚げたさつまいもを食べた。国元では食べたことがない気がするので、この国の物なんだろうか?
3日ぐらい寝かせてから、改めて聖女様がご馳走してくれた。
そうそう、、、芋を掘り上げた僕たちの手は、あの芋から出た白い汁に土がついて真っ黒になり、、、しかも洗ってもなかなか落ちなかった。
あの白い液体が乾いて、、、人間で言うとカサブタみたいになって、甘さが増すらしい。
「これは、蒸した奴。
蒸した奴は、そのまま食べても良いし、風通しのいいところで干すと、干し芋になる。保存食にはいいよね。」
美味しい。お腹がいっぱいになりそう。お茶、、、お茶が欲しい、、、
「それから、、、油で揚げた奴を、キャラメリーゼした奴!!」
・・・・外はカリっと、、中はもっちもっち。一口サイズに切ってある。これはもう、デザートだね!!!
テアちゃんと僕はミルクを貰って、黙々と食べる。
・・・・すごいね?さつまいも、、、おいしいね、、、
「これは、、あんまり寒いとダメなのか?」
フェリが聞いている。気に入ったのかな。美味しいもんね。
「そうね、、日当たりが良いとなんとか?でもね、寒いと掘り上げてから腐ってしまうのよ。保管が難しくて。長持ちしないの。そうすると、来年につながらないじゃない?種芋として冬が越せるかどうかなのよ。かといって、あんまり暖かいと発芽しちゃったり、カビが生えたりするしね?」
「ふーーーーん」
フェリが、さつまいもを眺めて考え込んでいる。気に入った?
*****
その後、しばらくしてから、干し芋、というのを食べた。あの芋を、蒸してから食べやすいように細く切って、干す。保存食。
「・・・・・」
「美味しいね。甘みが増した感じ?」
ライアンがテアと並んで座って、美味しそうに食べている。
これは、、、、非常食として備蓄出来たら、、、、、
「ジャガイモにしときなさい。言ったでしょ?保存がきかないから、寒いところでは。」
こいつ、、、、
「はいはい、さつまいものサラダ。干しブドウと相性がいいのよ。あとはねえ、、、もう少しして落ち葉がたくさんになったら、焼き芋をご馳走しよう!!」
「わーーーい」
喜んだライアンに聖女様が続ける、、、、
「じゃ、みんな、今週は残りのサツマイモを掘り上げて、みんなに配って、残りを保存用に小屋に運ぶ。いい?」
「はーーーーい」
騙されてないか?ライアン、、、
「あら、護衛騎士さんもいいかしら?」
「・・・・・」
掘って掘って、掘り続けた、、、、、人使いの荒い聖女だ。