第20話 番外編 ミラ。
ミラージュ様とジャドウ国皇太子にお茶を出して、台所に下がる。
明日のパンを用意しなくちゃ、、、
生地をこねながら、先ほどの光景を、、、ミラ様の髪を指に巻き付けてもてあそびながら、耳元でプロポーズされていた、、、、
生地をこねる、、、
仕方がないと思う。僕との婚約は政略的なものだし、、ミラ様ならジャドウ国に嫁がれてもその知識と行動力で、あの国を豊かにしていくんだろう。
僕は、、、また違う女性と、、、?そうだね、、大公家を支えていくために、どなたかと結婚するんだろう、、、、
生地をこねる、、、、
あの方の近くに居れるように、、学業も、剣術も、社交も、、、努力してきた。長いこと。パンだって上手に焼けるようになった。
3つも下だし、、、、弟みたいに思っていらっしゃるんだろう。
いつまでもいつまでも追いつけない。並び立てない、、、
ジャドウの皇太子は、ミラ様の5つ年上と伺った。
金髪に濃い青の瞳、皇太子然とされた、自信のあるお姿、、、そうだよね、、、お二人はお似合いだと思う。
しかも、正妃でお迎えされるつもりらしい、、、申し分ないじゃないか、、、
生地をこねる、、、、
「何やってるの?ニコラ?パンが塩味になっちゃうわよ?」
お盆に飲み終わった茶碗を乗せて、ミラ様が立っていた。
「鼻水は入れないでよ?」
そう言って、付けていたエプロンで、僕の顔を拭いてくれた。
「なに?どうして泣いてるの?誰かにいじめられたの?言ってごらん。切り刻んできてあげるから。」
「・・・・・」
僕を流しにつれて行って、手を洗ってくれる。こびりついたパン生地がなかなか落ちない。
「ニコラ?」
「あの、、、ミラ様、、おめでとうございます。ジャドウ国に行かれても、ちゃんと、、忘れないでご飯食べるんですよ?何かに夢中になると、あなたはすぐ、忘れてしまうので。あと、、寝る時はちゃんと寝間着に着替えるんですよ?疲れが取れませんから。あと、、、、」
「ニコラ??」
「あと、、、この領地は僕が責任もって育てていきますから、、安心して、、、あの、、、」
「ニコラ?」
洗い終わった僕の両手をエプロンで包むように拭きながら、、、、
「ねえ?ニコラ、、なに?婚約解消するつもりなの?」
「だって、、、、」
「私ね、、、ずっと好きな人がいるんだけど、その人にね、、相手にされていないのよ?女として見られていないというか、、、」
「・・・・・」
・・・・そうなんだ、、、、想いを寄せる人がいたんですね、、、、
「いつもね、ここにいるのに、いないみたいな目で見られるのよ、、、つらいわ。」
・・・ミラ様を、、、そんな、、、どこの誰だろう?
「ずっと好きなのに、ずっと一緒にいるのに、、、キスももらえないのよ?一度もよ?どう思う?」
・・・・そ、、そうなんだ、、、、はああああ、、、、
「ね、ニコラ、、、あなたにとって私は魅力がないのかしら?どうしたらいいのかしら?どうして婚約解消とか言いだすのかしら?どうしたら、、、ちゃんと私を見てくれるの?私が安心して進んでいけるのは、いつもあなたが、私を支えてくれるから。私、あなたがいてくれれば、なんだってできる気がするの。」
「・・・・え?」
「え、と、、、年上は嫌だった?こればっかりは、、、どうしようもなくって、、、やっぱり、若いかわいい子のほうが良いわよね?あなたの回り、いつも小さくてかわいい子がたくさんいるもんね、、、、」
「ミラ様?」
「なあに?ニコラ、、、大好きよ。私の好きな人は、緑色の綺麗な瞳をしているの。ジャドウになんか行かないわよ。あなたがいないから。ね?え、、、と、、、好きだとも言われていないのに、、、ごめんね、、、あの、、、できれば、、、婚約は解消してほしくないんだけど、、、、」
もじもじするミラ様を初めて見る。
僕の知っているミラ様は、何時も自信に満ち溢れていたから、、、、
「ミラ、、、」
僕たちの初めてのキスは、台所で、だった。
*****
息子が、、ジャンがさっさと引退し、大公家を孫息子に継がせると、待ってましたとばかりに、嫁と一緒に、ミラの領に出掛けてしまった。まだ小さい末娘を連れて。
似てますね、、、仕方がありませんねえ、、、
私がまた、お留守番ですね、、、孫息子の教育をしながら、妻の帰りを待ちますか、、、
妻は、まめに手紙をくれます。
やってきたジャドウ国の第七皇子、聖女と勘違いされたエレナ、護衛騎士に扮したエタン国の第二王子、、、、あいかわらずミラの回りは忙しくて、楽しそうですね。
前回のジャドウ国の侵攻を止めた時、貯水池を抜いた後のジャドウの兵士の遺体処理が大変だったので、そのあと何年もかけて、もう一つ大きな貯水池を作りましたが、、、今回はすんなりいきそうですかね?
無きゃ無いなりに、無駄にならない国防、、、、実証できそうですねえ、、、
私に黙って、ジャドウの先の皇帝と文通していることも知っています。
ふふっ。
でもね、ミラがどこまで行っても、必ず私の所に戻ってくるのも、私は知っているんですよ。




