第2話 聖獣。
馬を大きな樹の下につなぎ、神殿の門を入ると、、、正面玄関から、物凄い勢いで白い、何か、、とてつもなく大きいものが突進してくる。
「・・・・聖獣?」
僕が驚いている間に、その大きなものは僕にとびかかり、その勢いでひっくり返った僕に、、、、襲い掛かってきた!!!
「え?」
はあはあ、と、荒い息が僕の顔にかかる、、、喰われる、、、、、、
僕は、、、、、意識を手放してしまった、、、、
*****
「で?どなたさん?今日、こんな朝早くからの来客の予定はないんだけど?」
寝間着姿のその女は、髪を無造作に結わえ、、、思いっきり不機嫌そうな顔で、第七皇子を背負った俺に言う。《《これ》》が?聖女??
「聖女様にご挨拶申し上げます。この方は、ジャドウ皇国の第七皇子、ライアン様です。」
客用のソファーにどかっと第七皇子を降ろすと、片膝をついて、その女に挨拶する。
「私は第七皇子付きの護衛騎士です。フェリと申します。」
「は?」
「あなた様は聖女様で?先ほどの犬、、、いえ、聖獣はフェンリル?」
「・・・・・?」
「・・・・・」
「・・・何を言っているのかよくわからないんだけど?私は聖女ってやつじゃないし、あの子の名前はフェン、よ。」
「・・・・第七皇子は、第一皇子の命で、この国の聖女と聖獣を我が国にお連れするようにと。」
「・・・・・いつの時代の話よ?いないんじゃない?聖女とか?おとぎ話でしょう?まあ、少なくともこの国にはいないと思うけど?」
「まあ、、、、犯人は自分が犯人だとは言いませんから。」
「・・・何の話よ?」
どう見ても、さっきまで惰眠をむさぼっていたらしい不機嫌なその女は、それでも、お茶ぐらいはご馳走してくれるらしい。
水瓶から、冷やしてあったらしいポットを取り出して、カップにお茶を注いだ。
「はい。お茶。美味しいわよ。」
気絶している皇子の分は無いようなので、自分の前に出されたお茶を頂く。おいしい。
「それで?こんな小さい子を連れて、わざわざジャドウから?あの山越えて?ご苦労さんね?」
その女も、うまそうにお茶を飲んでいる.起きがけのお茶は美味しいよな?
「・・・・そうですね、、、替えの皇子は沢山いるので、使い捨てなんでしょう。聖女も聖獣も、いたらラッキー、ぐらいなんじゃないかと。本当に連れて帰ったら、、」
「帰ったら?」
「第一皇子が側妃に迎えて、自分が皇帝になるとおっしゃっておりましたね。」
「・・・・・」
さっきの大きな犬、、、聖獣?が、俺の椅子の脇にぴたっと座って、俺をじっと見ている。・・・・知ってる、、、お前の狙いは、、、このお茶うけに出されたクッキー、だな?おおよそ、飼い主は厳しくて、人間と同じ食べ物はもらえないんだろう。
クッキーを食べては、、、かけらをこっそりそいつにやる。嬉しいらしく、、、大きなふかふかのしっぽがぶんぶん揺れている。よだれが零れ落ちそうだ。
・・・・撫でまわしたい、、、、
聖女?が、台所に立った隙に、そいつを撫でまわす。ふっかふかだ!!
目がとろんとして、腹を出す。腹だな?よしよし、、、あったかいなあ、、、
耳か?耳もか?よしよし、、、
首?首もか?うんうん、、、
いいな、おまえ、、、夏場は暑苦しそうだけど、、冬場には一緒に寝たら暖かいだろうなあ、、、そうか?うん、気持ちいいのか?うん、うん、、、
「あの、、、お取込み中、なんなんだけど、、、、」
はっ!しゃがみこんで、夢中で撫でまわしてしまった、、、
何事もなかったような顔を作って、すくっと立ち上がる。スラックスが、、、毛だらけだ。まあ、、、いいか、、、
「はい。何でございましょうか?聖女様。」
「聖女じゃないわ、、、エレナ、よ?あなたたち、朝ごはんまだでしょ?用意したから食べましょ?」