第15話 聖獣か?
議会のメンバーは揃っていた。
一段高いところに、皇帝をはじめとして、皇位継承権を持つ皇子が並ぶ。
長兄は、、、、この短い時間に、開き直ったらしく、堂々としている。さすがだ。
「父上、ただいま戻りました。」
ライアンが皇帝たる父上に挨拶をする。
嘲笑いながら送り出した七番目の弟は、おどおどした小さな子供だったが、、、、きちんとした身なりで、やけに堂々としているように見えた。エタン国から援助でも入っていたのか?金も十分持たせなかったからな。
「この度、兄上の命で、ソラル国の聖女様と聖獣様をお探しし、ジャドウ国にご招待することが出来ましたことをお慶び申し上げます。」
ライアンが恭しく、聖女と呼ばれた女性をエスコートする。すぐわきには、大人の腰の高さほどある白い、、、、聖獣?
どよめきが起きる。
「・・・・ああ」
玉座で父上が、短く返事をする。この人は、、、第七皇子ライアンがいなくなったことすら気づいていなかっただろうなあ、、、
「幸いにして、私は聖女様と聖獣様のご加護を頂くことが出来ましたこと、報告申し上げます。」
恐ろしいほど美しいその聖女は、口元だけで笑った。
議場は水を打ったように静まり返る。
・・・先の皇帝が、大王が常々言っていたが、伝説だろうと思われていたソラル国の聖女を目の当たりにして、、、声が出なかった。荘厳、というのだろうか、、、得も言われぬ、絶対的な圧迫感がある。
「そして、大変残念なことに、ジャドウ国はソラル国に侵攻し、兵2000を犠牲にしてしまったことを皆様に報告しなければなりません。ここへ。」
小さい、何の力もない皇子だったはずのライアンが指示をすると、次兄、アテオがライアンの護衛騎士に連れられてきた。右足を負傷しているらしく、太ももまで包帯が巻かれている。両手は拘束されている。異様な光景だ、、、、彼は、皇子だから。
「説明は、、、ご本人から。」
ライアンに促されて、、、
「俺は、、、、長兄に命令されて、、、俺の意志じゃない!!!」
「兄上、、、聖女様がご覧になっておりますよ?」
ひきつった顔で、聖女を見上げた次兄は、、語りだした。
「洪水で、、、1500の兵が、、、土砂崩れで、500、、、皆、、、聖女様の怒りに触れたから、、、、あわよくば、、、ソラル国を従属させようと、、、とんでもないことを長兄が言いだすから、、、、俺は、、、従っただけだ、、、、この方に、、、逆らうべきじゃない。」
聖女が冷ややかに笑う。
「長兄は、、、、ライアンが聖女を連れ帰ったら、側室にして、自分が皇帝になると言った。俺は知ってるぞ!長兄は、、、父上に、、、遅効性の毒を盛っている。どちらにしろ、父上も、、、、死ぬんだ、と、、、、そう言っていた。兄上も、そこに居並ぶ弟たちだって、父上の側妃と関係を持っているんだ。もう、、、この皇室は腐り切ってるんだ!!」
あらら、、、まあ、俺も五番目。継承権があると言っても、皇帝になれるとは夢にも思っていない。楽しく、、、面白おかしく人生が送れたら、まあ、いいか、と思っていたけどね、、、、
「アテオ!!気がふれたか!!」
長兄が、剣を抜いた。皇帝の御前だ、、、近衛に取り押さえられる。
「嘘だ!!こいつ、自分が勝手に出兵したのをごまかすために、俺のせいにしようとしているんだ!!なにもかも、出まかせだ!!!」
ざわついた議場に、、、聖獣の遠吠えが響き渡る。
「静かに。」
落ち着き払ったライアンが、良く通る声で言った。
「みなさん、私は確かに、聖女様と聖獣様《《が》》選んだ者を皇帝にする、と、長兄が言ったことを聞きました。選ぶのは、もう、あなた方ではない。それで、、、よろしいですね?兄上?」
「・・・・・」
「我が、、、きちんと言ったであろう?ソラル国には聖女がいるから、立ち入るな、と。」
「大王!!!」
議員が総立ちになる。皇帝陛下も首を下げる。
皇帝の印である大太刀を杖代わりにして、先の皇帝、大王が現れる。
離宮で隠居生活を送っていたが、、、、出て来たね、、、
「この我が愚息も、我の言いつけを守らず、ソラル国に侵攻した。もう16年前だな。あの時、お前が見殺しにした兵は1500だったか?エタン国にも侵攻して、大した成果もあげれなかったな。」
「・・・・・」
「言ったであろう、、、自分の国も治められないのに他国に出るなと。特に、ソラル国には立ち入るな。と。」
父上も、流石にたじたじだ、、、自分と同じ過ちを犯した長兄を責めるのも、、、ねえ、、、
「それで、ライアンは見てきたのであろう?どうだった?あの国の豊かさは、何によるものだった?」
皇帝の座った玉座をどかせ、大王が座る。
「御祖父様、、、、聖女様のご加護はもちろんでございますが、、、皆、老若男女問わず、土を耕し、木を植え、、、そして、それが《《大事なことだと忘れないこと》》でございましょうか。」
「そうか、、、、いい勉強をしてきたようだな。」
「はい。」
「それでは、議会の皆も揃っていることだし、次期皇帝をここで決めよう。いいな。希望通り、聖獣様がお決めになる。異論はないな?」
静まり返った会場に、カツカツと聖獣の爪の音が響く。
末席のライアンのところまで来て、その白く大きな聖獣は、すとんと座る。
「決まりだな。」
「ち、、、父上!!」
「お前も選ばれなかったな、、、残念だったな。さっきアテオが言っていたことは本当だ。調べさせた。お前は、、、治療に専念したほうが良かろう。先は、、、短いようだがな、、」
皇帝陛下が崩れ落ちる、、、長兄は引っ立てられていく、、、
「さて、皇帝は決まった。まだ若輩者故、聖女様が補佐してくださるのだろう。皆の者、ライアン新皇帝だ!!」
わあああーーーと、議場から歓声が上がる。合わせるように、聖獣が遠吠えする。
大王に手渡された大太刀を、頭上高く掲げるライアン。
新皇帝が決められた瞬間だ。




