第13話 開幕です。
何事もなく一年を過ごした。
俺は相変わらず畑班でこき使われ、少し大きくなったライアンは、家畜班に回された。毎日へとへとになって帰ってくる。
「今日は鶏当番のおばさまに、卵を頂きました!」
と、嬉しそうに言っていたが、卵料理が出来る前に、うとうとしている。
こんなんでも容赦なく、食後の勉強会へと続く。
テアちゃんはこの時期は果樹班の摘果を手伝っているらしい。みんなよく働く。
「で、お前は今日は何やってたの?」
「あたし?炭焼き班に食料を届けに。ついでに、池の様子を見て、ついでに魚を取ってきた。今日のメインはマスの包み焼よ?」
「あ?、、、、」
「いや、ほら、、ミラばあさんが魚が食べたいって言うからよ?さぼってたわけじゃないわよ?」
「へえ、、、、」
「あ、あら?疑ってるのかしら?それとも、私と一緒にいたかった?婚約者殿?」
「は?バカか?」
こんな毎日。平和だ、、、、
*****
翌年の春に、、、、俺たちが来て1年半後に、事態は動いた。
「来たわね。」
「来たね。」
知らせは炭焼き班から鳩で届く。念のため、同じ内容で、2羽飛ばしているようだ。。
走って知らせるより、早いから。
もちろんその前に、何の音さたもない第七皇子を捜索に行く。という情報は入っていた。そんなに心配なら、出さなければよかろう??ま、、、いいけど、、、、
「数は、、、2000か、、、思ったより多いわね。馬は、、50?」
「ほぼほぼ歩兵か。甘く見られたもんだな。軽く、威嚇するつもりなんだろうな。」
「山脈を越えるから、、、その数だと、3日後かな?」
「そうねえ、、、早くて3日。統制が取れていないだろうから、もう少し遅れるかもね。」
ミラばあさんの家に主要な者たちが集められる。
「じゃあ、予定通りに。」
*****
主要街道を選ばなかったのは、長兄の判断だ。
ソラル国の辺境伯軍と交戦するのは不利なので、杣道を通って、不意打ちを狙う、と言われた。自分で行けばよかろう、、、面倒な、、、そうも思った。
こちらには、第七皇子が行方不明という、大義名分があるんだから。
まあ、その辺で野垂れ死んでいても、それはそれで、開戦の理由にはなる。
ソラル国の者に殺されたんだと叫べばいい。
引き受けたのは、これでソラルを従属出来たら、俺にも皇帝への道が開けるからだ。
兄とは同腹。正妃の息子だ。継承権は当然、俺にもある。長兄のわがままに呆れている者も多いから、、、、いい機会だ。軍事力を強化したエタン国に比べたら、のんびりした農業国だと聞いている。兵は、大方は街道寄りに配備されているだろうし、、、、なんなら、美しいと評判の王女を娶って、ソラルの王になってもいい。今いる妃など、どうでもいい。・・・・いい考えだなあ、、、、そんなことを考えながら、馬上にいた。
「どうした?」
隊列が止まった。中々動かない。
「山道をイノシシの大群が横切っているようで、、、馬が嫌がって進めません、、、」
「ちぇ、、、」
先頭を行く歩兵たちは、姿が見えなくなった。
馬一頭通るのがやっとの狭い道に差し掛かったので、仕方がなく馬を降りた。
ここからは下り道になるようだ。
「落石です!!!」
叫び声と同時に、土ぼこりを上げて、土砂が崩れる。飛んできた岩をよけて、崩れた先を見上げると、、、人が立てそうにない高い場所に、、、、白いドレスの女、、、、ぎょっとする。
「皇子!大丈夫ですか?」
なおも崩れ落ちる土砂と岩に、、、足を挟まれてしまった。
「早く!何とかしろ!!他の兵はどうした???」
「歩兵は先に行ってしまったので、連絡は付きません。私たちと同行の兵は、この土砂の下敷きになったかと、、、、馬を降りていたので、、馬は逃げたようです。」
「はあ?お前早く、俺を出せ!」
周りを見回すと、、、、砂埃の舞う中、土砂の下敷きになった者のうめき声だけ聞こえる。
「早く!俺を助けろ!!!」
俺はこの時まだ知らなかった。突如洪水が起き、先を行った歩兵1500が流されて、その下にある湖で全員溺死したことを。
後でその報告をした兵によると、、、腹の調子が悪く、道を外れて用を足していた。
隊列に戻ろうとして、、、、目の前で突然、大洪水が起こった。あっという間。
そのあふれる水の下に1500の歩兵、、、丁度道が広くなったので隊列を組みなおした。その隊列ごと飲み込まれた。水はそれを押し流しながら、下の湖に流れ込んだ、、、、折り重なるように人があふれ、、、
・・・その時、白いドレスを着た女が、俺を見下ろして笑ったんです、、、、
俺は、、、腰を抜かしましたが、、、這いながらここまで来ました、、、そう言って、その男は泣き崩れた。
やっとの思いで土砂崩れの場所から、安全そうなところまで逃げた。
残ってまともに動けるのは、10人ほどか、、、けが人は捨て置いた。
テントを張らせたが、俺の足のケガ、、、血が止まらない。
水を汲んできます、と、沢に降りて行った者も戻ってこない。
もう一人、水を汲みに行かせたが、そいつも戻らない、、、、
がさり、、、、と、土砂を越えてくる音がしたので振り返ると、、、、歩兵のたった一人の生き残りだった、、、、




