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第12話 炭焼き班。

雪解けと同時に、三分の一くらいの人員の入れ替えがあった。


帰って行く若者には、名残惜しんで泣く者や晴れ晴れとした顔で去って行く者、、いろいろだ。3年の任期が終わると、それぞれの領地や職場に戻っていくらしい。

年配者の、爵位を譲るタイミングの人たちは、割と自由。そのまま残る人もいる。

このタイミングで、、、国から留守中監査が入っているらしい。なるほどねえ、、、よく考えてあるよね?


新しく来た者は、基本、くじ引きで配属の班が決まる。


どなたも、良家の子女。鍬なんか持ったことがないだろうと思われる。みんな色白で、女の子は質素な服装だが、化粧はみっちり。男の子もきちんと髪を整えている。最初はこうなんだなあ、、、

そのうち、見てくれるのが狸や豚だと気が付く。たぶん、、、3年たつ頃にはこんがり焼けているから。


畑班、果樹班、家畜班、、、もう一つ、炭焼き班があることを春になって知った。


「炭焼きまでさせるのか?3年間も?」

「そうよ。」

「山の中で?3年間?」

「そうよ。ここで使う材木も作ってくれてるわ。冬の間に、切り出した木を降ろしたでしょ?あなたも手伝ったじゃないの。あの班の人たちは舞踏会には来てないの。必要な食料はここから山まで上げている。それ以外は狩りをして自分たちで調達してるわ。」

「・・・・・」


恐ろしく孤独な感じがするが、、、、


「基本、夫婦が3組。大事な仕事よ?」

「まあ、、、、」

「もう少し暖かくなったら、ハイキングに行きましょうか?そこまで。」

「・・・・・」



*****


家畜班に預けてある馬を引き出して、ライアンとテアを乗せる。

両脇にみっちり荷物を積み、背負子と呼ばれるフレーム付きのリュックにもぎゅうぎゅうに荷物を積み、フェリに背負わせる。私は5人分のお弁当を背負う。もう一頭の馬に、トムじいが乗っているから。フェンが嬉しそうにしっぽを振っている。


「いいお天気になって良かったわねえ。」

「・・・・って、、、重いんだけど、、」

「頂上に着く頃、丁度お昼ね。今日はあんたの好きな鶏のサンドもあるわよ?」

「ありがとう、、、、って、、、聞いてる?」


「おめえらは相変わらず仲がいいなあ!」

「「どこが??」」




*****


緩やかに山に登っていく野道を行く。道幅は思ったより広い。荷馬車が通れるくらいか?もう少し広い。春先の花が咲きだしている。のどかだなあ、、、


果樹園の柵に添って登っていくと、かなり大きな貯水池。ぱっと見、湖か?というくらい。水は満水ではない。冬の間はある程度抜いてるのかな?雪解け水も入るから。


その池を回るように続く道。その上にもう一つ、先ほどより少し小さな池。池、というより、沼くらいの大きさか?


小さめの池の側で小休憩。眼下に果樹園が広がっている。山に伸びた斜面には葡萄。

少し小高い丘の上に、ミラばあさんたちの家とこいつの家。そこから広がる畑、、、

荒耕と呼ばれる、馬で耕す作業が始まったところだ。

その広々とした畑の向こうに、家畜用の放牧地と畜舎が見える。

個人個人の家は、森の木々に隠れて屋根が少し見えるくらい。


「今日はみんな休みだから、、、この池に釣りに来てる人もいるわよ。向こうの端で見ずらいけど。沢山釣れたら、おすそ分けが来るから、、、今日はマス料理かもね。」


穏やかで、、、良い土地だ。春先の穏やかな暖かさの中に佇んでいる。


こいつが前に言ったように、ここに住み着いてのんびり暮らす選択も、、、、無いか、、、無いんだろうな、、、この穏やかさごと、守らなくちゃいけない、、、、自分の国も含めて、、、、


「さて、行きますか。」

自分のリュックを背負いなおして、エレナが声を掛けた。


黙々と山道を歩いて、、、森の中に、ぽつんぽつんと民家が見える。

この道をライアンと下ってきたはずなのに、全く気が付かなかったな、、、


「やあ、思ったより早かったですね。いらっしゃい!」


出迎えてくれたのは、エプロンをかけたかっぷくのいいご婦人。毛皮を干していたみたい。

どう見ても、、、森の狩人のその奥さん、って感じ。


「荷物はこちらに。あら、あなたがライアン殿下ね?少し背が伸びたわね?テアちゃんもようこそ!大きくなったわね。婚約おめでとう!」

「??」

「あなたが、、、、エレナ様の婚約者ね。さすがに気が付かなかったわあ、、、」

「???」

「でしょう?私も知らなかったわ、、、、」

「?なあ、エレナ、何の話?」

「あら、、、うふふっ、、」


馬に積んできた荷物と、背負った荷物を、そのご婦人の家の前に降ろし、お茶をご馳走になる。

「ここのところは、どう?」

「そうねえ、、不法入国者が3人ぐらい?どうしようかと思ったんだけど、めんどくさかったから、、、、」

「ああ、、」

「え?めんどくさかったから、、、どうしたの?」

「ふふっ。」



出されたお茶を飲む。いい茶葉だ。こんな山奥なのに。薬草茶、とかが出てくるのかと思った。

ライアンとテアちゃんは近くを探検している。イノシシ用の罠にはまんなよ?と言いながら、トムじいが付き合っている。


「上まで行くんでしょ?今日はうちの旦那が行ってるわ。ということは、、婿殿、本決まりだわね、、、」

「まあ、、、ね、、、王命だし。ライアンとテアは置いてくわね。トムじいも。これ、3人分のお昼ね。」

エレナが、がさがさと自分のリュックから、お弁当と飲み物を取り出している。


「なあ、、、、何の話?」



一体何の話だったのかは、、、、山頂について分かった、、、、



「こ、、、、、」


「ああ、フェリックス様いらっしゃいませ。さすがに、そこまでは見抜けませんでしたなあ、、、失礼しました。」


森の雑木を抜けて、針葉樹の森も抜け、ふいと現れた山頂からは、、、、何もかも見渡せた。こんなに、、、、


「見てください。あなた方が通った山道です。脇道に至るまですべて把握できます。

ジャドウ国からこの国に入るには、正攻法で街道を通り、辺境伯領を横切るか、、、訳ありの人は、この山を越えてきます。山道はいろいろあるように見えて、一本しかありません。そう作ってあります。

脱国者だったり、駆け落ちだったり?あなた方のように、訳ありの人。

15年前のジャドウ国の侵攻は、この道を通りました。兵の数、1500。不意打ちのつもりだったのでしょうね?」


「・・・・・」













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