第1話 聖女。
「ぎゃあああ、、、、!!!!!」
あ?朝早くから何?
エレナは額に皺を寄せる。寝てたのに、、、
カーテン越しに庭を見て見ると、フェンが来客を歓迎しているところだった。
フェンのあまりの大きさに、卒倒してしまう人がたまにいる。しかしな、、、こんな朝っぱらから、、、、
「フェン、来なさい。」
渋々、やっとの思いで、、布団から抜け出し、、、
玄関を開けて、フェンを呼び戻す。
客人を大歓迎して、転がして、馬乗りになって、顔をべろんべろん舐めまくっていたであろうフェン、、、歓迎された人はまだ寝転がったままだ。気絶している?後ろに護衛騎士です、って感じの男が佇んでいる。護衛付き?誰?
何なのよ?まだ朝日が昇ったところじゃないの、、、、、、
*****
「隣国の豊かさは、聖女と聖獣がいるかららしい。」
珍しく兄弟そろっての朝食時に、長兄が切り出した。
「聖女様が?」
まあ、兄弟そろって、と言っても、今朝は7人。全部でたぶん、男女合わせて20人ぐらいはいる。皇帝でいらっしゃる父上には側妃がたくさんいるので。
「ああ、、、そこでだ、ライアン。お前行って、連れて来い。」
「・・・聖女様をこの国にお連れするので?」
「ああ、、、俺の側妃にしてもいい。聖女が来たら、俺が皇帝になる。」
「・・・・・」
「いいな?なんとしても、連れて来い。」
「・・・・はい。」
逆らえるはずもない。僕の亡くなった母は側妃だったし、長兄の母は正妃だし。
帝国の役に立つなら、と、引き受けた。他の兄たちはニマニマしている。僕が、、、野垂れ死にしようが、夜盗に襲われようが、、、この国にとっては何にも変わらないから。
そうして僕は旅に出た。
護衛騎士は、前から仕えてくれているフェリ一人。異国民だ。
馬、2頭。少しの路銀。
帝国を出て、山脈を越え、野宿しながら隣国を目指す。
火を焚いて、捕まえた山鳥を焼いてくれたり、川で魚を取ったり、、、フェリがいなかったら、飢え死にしていたかも。
文字通り、野を越え山越え、、、やっとの思いで隣国にたどり着いた。
隣国は、、、緑にあふれて、、、丁度、小麦の収穫期、、、、
「この国は、、穏やかで、豊かだね?」
「そのようで。」
「これも、聖女様の力かな?」
「・・・・・」
川も綺麗だ。所々に、粉引き用なのか、水車が回っている。
農作業をしている人を捕まえて、フェリが聞き込みをしてくれている。まだ夜が明けたばかり、、、、と言っても、陽は登っていない。
「この先の神殿に、聖獣がいるらしいです。」
「本当に?だ、、、大丈夫だろうか?」
「どうでしょう?」
僕たちは、神殿に向かって伸びる、一本道を馬を引いて進む。
途中から、小麦畑は途切れ、見たことのない青々した蔓の伸びた畑が続く。
さっきの農民が言っていた神殿が見えてきた。はるか遠くの山の端から朝日が昇っていた。
「ここかあ、、、、」
「そのようで。」
*****
「お仕事中申し訳ない。」
「ああ?なんだあ?こった朝早く?」
「このあたりに、聖女様と、聖獣がお住まいだと伺ったのですが、、、、」
「聖女?聖獣?・・・・って、、、どんなんだ?」
「聖女は、、、大きな力を持った女性?聖獣は、言い伝えによると、とても大きな白い狼かと、、、、、」
「ああ!大きな白い犬ならいるいる!この坂をまーーーーっ直ぐ上ったところに、白い家があるから、そこにいる。でっかい犬な。そんなの探してどうするんだ?あとなあ、、、、聖女、ってのはわからねえが、おらたちが女神、って呼んでる人もそこにいる。女神なあ、、、魔王?かな?がははっ」
「・??・・・・・ありがとうございます。」
「おめえは、、、ジャドウからか?あの山越えて?」
「あ、、はい、、、」
「ほおーーーーーまあ、がんばれ。」
「・・・・・?」
ソラル語はそれなりに話せると自負していたが、所々わからない。なまりがひどいからだろうか?
畑の見回りをしていたらしい農民に感謝を告げて、待っている第七皇子のところまで戻る。日がゆっくりと昇ってきた。越してきた山脈の稜線が明るくなる。