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魔触機装 ep8 冒険者ギルド

 その建物は、木造で出来た二階建ての建築物だ。

 入り口はどちらから押しても開くような作りになっていて冒険者らしき武装した者が頻繁に出入りしている。


『物騒な場所だ』

「荒事を職としている人達が集まっているから当然よ」

『荒事、どんなことをするんだ?』

「魔物狩り、護衛、探し物この辺りが基本で

 他にも警備、稀に運び屋的なこともするの。

 低ランクの冒険者は、ごみ拾いなんかすることもあるわね」

『何でも屋みたいなものか』

「まあ、人を相手にすることは滅多にないから対人戦は苦手な人が多いの」

『町の外はそんなに危ないのか?』

「うん、魔物がいっぱいいるからね。

 子供は勿論、男性でも危ないわよ」

『つまり、魔物は人を襲うのか?』

「ええ」

『どんな奴らなんだ?』

「色々種類があるから説明はできないの」

『そうか』

「でも、調べることは出来るわ。

 魔物討伐のプロが集まっているところだから情報は集めるのは難しくない」

『分かった』


 それならばおいおい、情報を集めて行こう。

 まずは、レイリアナの目的を達成させるべきだな。

 建物に入ると中は人がいっぱいだ。

 レイリアナは、人がいないカウンターに歩を進める。


「レイリアナさん!

 無事だったんですね!」


 カウンターの女性が、嬉しそうに声をかけて来る。


「ええ、何とか」

「深淵の洞窟から依頼者だけ帰ってきたときは驚きましたよ。

 何があったんですか?」

「ちょっと」


 レイリアナの表情を見たカウンターの女性は、一瞬悲しそうな顔をしてしかし、すぐに笑顔になり言葉を発する。


「私に言いたいことがあれば何でも言ってね。

 ギルドはあなたの味方だから」

「はい」

「それで、今日は、依頼の報告しに来たのよね?」

「いいえ、お金を下ろしに来たの」

「お金を?」

「ええ、少しばかり資金が必要になって」

「……この国を出られますか?」

「……」

「そう、ですか。

 残念ですが、これからのことを考えると仕方がないですね」


 カウンターの女性は表情を曇らせる。

 何があったのかを察したのだろう。


「もしギルドにして欲しいことが言って下さいね。

 上級冒険者のあなたを貴族のごたごたで失うのは惜しいわ」

「大丈夫」

「そう。

 じゃあ、少し待っててね」


 カウンターの女性がそう言って席を外す。


『感じはいいな』

「あまり信用しない方がいいですよ。

 あんな依頼を受けさせてきたんですから」


 あんな依頼というのは、おそらく僕と出会う前にやっていた以来のことだろう。

 詳しいことは知らないが、よっぽどひどい目に遭ったのだろう。

 カウンターのお姉さんと入れ替わるように一人の老人が、カウンターにつく。


「あなたは」

「すまない。

 今回のことは、まごうことなくギルドの落ち度だ。

 何が出来る訳では無いが、一つだけ渡したいものがある」

「いらないですよ」

「まあ、待て、今回の件は、グランドギルドマスターから直々に対応するとのことだ。

 だから、この紹介状を貰ってはくれないか?

 勿論、この紹介状を使う使わないは君が決めてくれて構わない。

 損は何も無い構わないだろう?」

『貰っておいて良いんじゃ無いか?

 もし罠だったとしても僕の力を使えば踏み倒せるだろう?』

「そうね。

 貰っておくわ」

「それは良かった」


 老人は、そう言って、スクロールを一つ取り出した。

 封印が施されており印には、独特の紋章が刻まれていた。

 それを見たレイリアナが息を呑む音が聞こえた。

 どうやらよっぽどの物のようだ。


「君のギルドに対する印象は最悪だと思うが、一つだけ覚えていて欲しい。

 誰がなんと言おうと君がギルドで残した功績はギルドの総力を挙げて守る。

 それが出来なくなるときは、冒険者ギルドは無くなるときだ。

 どうか覚えていて欲しい」

「……分かったわ」


 老人が下がると老人の話が終わるのを待っていたお姉さんが、入れ替わる。

 そしてお姉さんは、三つの袋を机に置く。


「貴方の預けてくれていたお金全部よ」


 全部、というのが多いのか少ないのか。


「一つは、オリハルコン貨」


 そういって一番小さい袋から一個のコインを取り出す。

 レイリアナが確認するのを見るとオリハルコン貨を袋に戻してレイリアナの前に置く。

 二番目に小さい袋のミスリル貨と一番大きい白金貨も同じようにしてレイリアナの前に置く。


「ありがとうございます」


 レイリアナは、そう言うとお金を懐にしまう。


「これからは、どこに行くつもりなの?」

「一旦師匠の家へそれからのことは後で考えます」

「そう、気落ちしないでね」

「大丈夫です」


 レイリアナは素っ気なく言うとその場を後にした。


『レイリアナ、師匠のことを報告しなくて良かったのか?』

「報告はしない。

 師匠は行方不明のままにする」

『そうか』


 レイリアナが、何を考えているかは分からない。

 だが、僕は、レイリアナの決断を尊重するだけだ。


『それで次は、どうするつもりだ?』

「そうだね。

 師匠達はこの国にいちゃいけないから他の国に連れて行く」

『どんな国があるんだ?』

「北は、亜人種連合国、南には聖国があるんだけどここからだと東の帝国かな」

『帝国か。

 師匠達が過ごしやすい場所だったらいいな』

「そうだね」


 レイリアナが話しながら歩いていると声を掛けられる。


「おい、そこのお前」


 声の方に意識を向けるとそこには筋骨隆々の大男がいた。


「お前、やっぱりレイリアナか!?」

 筋骨隆々の男はレイリアナの顔を見てひどく嬉しそうに近寄ってきた」

「ブルート」

『誰なんだ?』

『私の専属鍛冶屋』


 レイリアナに尋ねると簡潔な答えが返ってきた。

 レイリアナが軽々と持ち上げられる。


「本当に無事でよかった!」


 レイリアナも警戒感を出していないところを見る限り悪い人では無いのだろう。


「ところで、今から時間はあるか? 俺の店に来てくれ。

 そこで話そう」

「でも」

「深淵の洞窟から帰ったんだ。

 装備もボロボロだろ?」

「うっ」


 確かにレイリアナの服は、ぼろぼろだ。


「分かった」

「よし、じゃあ付いてこい」


 レイリアナは、大人しく付いて行く。

 しばらく歩くとブルートは、裏路地に入りある建物に入っていく。

 その建物は、一見普通の建物で、中に入ると武器屋になっていた。

 おそらく奥に鍛冶場があるのだろう。


「適当に座っていろ」


 レイリアナを椅子に座らせると、奥へと消えていった。

 しばらくしてお盆にコップを乗せて戻ってきた。


「ほら、これ飲め」


 手渡されたのはお茶だった。


『毒じゃないだろうな?』

『この人は大丈夫』

「美味しい」

「それは良かった。

 それで、本題だが、深淵の洞窟で何があった?

 お前ほどの冒険者がそこまでぼろぼろになるとは」


 レイリアナは、俯き少し考えて本当のことを伝える。


「依頼者に裏切られた」

「そうか、だからそんな格好をしているのか」

「うん」

「まぁ、とりあえず、今はゆっくり休め。

 装備は、修理が必要か?」

「お願い」

「分かった。必要な経費は出せるな?」

「うん、今降ろしてきた」

「そうか、白金貨一枚とプラチナ貨一枚、それと修理する武器と防具を出してくれ」


 レイリアナは立ち上がって袋からそれぞれ一枚づつ貨幣を取り出し。

 剣を一本と体に着けていた防具をカウンターに乗せる。


『それは、値段相応なのか?』

『大丈夫』

「確かに受け取った。

 しばらく待っていてくれ」


そう言って、また、奥に戻っていった。

奥から熱気と金属を打ち付ける音が鳴り続けて数十分、ブルートが戻って来た。


「終わったぞ」


 ブルートは、レイリアナが渡した剣と防具をカウンターの上に乗せる。

 確かに渡したときにボロボロで刃も欠けていた剣は見事に鋭さを取り戻していて、防具も凹んだり傷ついたものが新品同様になっている。


『どんな魔法を使ったんだ?』

『錬金術』

『錬金術って凄いんだな』

『そうでもないよ。

 材料費がとてもかかるの』

『そうなのか?』

『ええ、その代わりどんなものも修理できるの』

『やっぱりすごいんじゃないか』

『まあ、材料費に目をつぶれば確かに』

「どうした?

 大丈夫か?」

「あっ、ごめんなさい」

「疲れているなら帰ってもいいんだぞ」

「いえ、まだ、やることがありますから」

「そうか、無理はするなよ」

『レイリアナ、どうする?』

『取りあえず師匠の家に帰ろう』

『そうだな』

「ああ、そうだ、これを持って行け」

ブルートは、一振りの短剣を渡してくる。

「これは?」

「うちの工房の特注の魔道具だ。

持ってると、状態異常耐性が付く。

それに、お前さんが使うには丁度いい大きさだろう」

「ありがとう」

「それじゃあ、元気でな」

「はい」


 ブルートにお辞儀をしてレイリアナは、その場を後にした。

 そして、その後森で鳥を捕まえシショウの家へ帰宅した。

 シオンを説得して馬車の用意ができるまで三日かかってしまった。

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