魔触機装 ep4 vsシショウ
師匠とやらからの攻撃を触手で受けレイリアナが受けるダメージを軽減させたが、ダメージが無かったわけでもなく。
その上レイリアナは、味方と思っている師匠から攻撃を受けた衝撃により混乱している。
「し、師匠?」
レイリアナは、恐る恐る顔を上げる。
師匠は、ゆっくりとこちらに近づいて来る。
「師匠! 私ですよ!
分からないのですか!?」
レイリアナは、悲痛な叫び声を上げるが、師匠には届かない。
師匠は、腕を振り上げる。
「し、しょう……?」
『ボーッとするな!』
腕と足は、僕なので攻撃を防ぐことが出来るが、流石に腰を抜かしているレイリアナが動いてくれないことには座った状態で攻撃を捌く状態をしいられる。
ジェーン達と違い師匠は、強い。
手刀だけで大剣を防いだ触手が弾かれる。
その手刀が叩きつけられる。
何度も何度も……、体勢が悪すぎる。
両腕両脚の触手を総動員して何とか防げている。
何とか隙を作って、行動を取らないと。
レイリアナは力が入らない状態だ。
こちらからの身体干渉による行動制御に抵抗出来ないはずだ。
だから、隙が出来た時のために準備をする。
「な、なななな!?」
『このままでは一方的にやられるからな。
僕がレイリアナを動かす。
君はまず落ち着くことだ』
レイリアナの体を覆うように触手を這わせる。
「いやっ!」
『抵抗するなら立ち上がってくれ』
抵抗されるとうまくいかない。
まあ、本気で抵抗されればの話だが、レイリアナも今のままでは不味いのは分かっているようで本気の抵抗ではないので体のコントロールを奪える。
触手がレイリアナを覆いつくして体をこちらの意志で動かせるようになったのを見計らって、ジェーンの一人が師匠を背後から大剣を叩きつける。
しかし、まるで来るのが分かっていたかのように体を反転し大剣を受け流し受け流した力を利用してジェーンを吹き飛ばした。
吹き飛ばされたジェーンは壁にぶつかりそしてそのまま動かなくなった。
師匠の背後をとった僕は、触手で師匠を拘束するために触手を伸ばす。
しかし、先ほどと同じように分かっていたかのように背後から迫る触手を弾いて見せた。
『どうして後ろからの攻撃が分かるんだ?』
「師匠だから?」
『答えになってないな』
何かしら絡繰りがあるとは思うが、師匠の動きのキレが増してきている。
どうやら本領はまだ発揮されていないようだ。
ならば悠長に様子見するわけにもいかない。
『ジェーン達全員で掛かるんだ』
『『『分かった』』』
『物量で押し切るしか無い』
見るも悍ましい方法でジェーン達から伸ばされた触手が師匠に絡みつく。
流石にこの量を捌くことが出来ないようで、抵抗するが拘束に成功する。
僕も触手を伸ばし動けない師匠の耳から入り込む。
そして奥に進むとエネルギーの塊を見つける。
エネルギーの塊に触れると抵抗があった。
『ダレダ?』
『レイリアナの使いだ』
さて、どう出る?
『れいりあな……?』
反応したか。
『れいりあな、れいりあな、れいりあな!
……ワタシハ……、ダレダ?』
『レイリアナの師匠だろう!』
ボケてるのか?
『れいりあなのシショウ?
ワタシハ……、ボクハ……、オレハ……、し、しょうだっ……。
お前が、誰か、分からない、が、レイを、頼、む』
『頼むって、何故だ?』
返事が無い。
『……、急に黙ってどうした?』
反応がない。
それに抵抗も無くなった。
まあ、好都合だ。
このまま、体を乗っ取らせて貰う。
しかし、レイリアナに何て説明するべきか。
師匠の精神は、死んだのだろう。
それは、つまり師匠が死んだことに他ならない。
それをレイリアナに伝えるか?
……それは余り良くないな。
下手をすればここで師匠の後を追ってしまう可能性がある。
ならば僕のやることは1つだ。
----------
師匠が生きていた。
師匠が生きていた?
師匠が生きていた!
勿論、これっぽっちも死んだなんて思っていなかったけどけどちゃんと生きていた。
その師匠が私に対して刃を向けてきた。
私は知っている。
その手刀は、下手な刃よりも鋭いことをその斬撃は、下手な剣士よりも鋭いことを……。
何故?
どうして?
師匠が私を襲うのか?
体が動かない。
ジョンが、応戦してくれている。
師匠と戦ってここまで持ちこたえるなんてありえない。
いや、そうか。
師匠の刃には心が乗っていない。
軽いのだ。
師匠が戻ってこれなかったのは正気を失っていたからなんだ。
でもなんで正気を失っているの?
どうやって師匠の正気を奪ったの?
私は、知っている。
ジョンならそれができるだろう。
あるいはジョンに似たような存在がいれば、可能ではある。
認めなければならない。
師匠がこうなった以上、打倒して正気を取り戻さないといけない。
でも体に力が入らない。
あの師匠に私なんかが勝てるだろうか?
正気を失っただけの師匠に私は勝てるのだろうか?
ジョンが、提案してくる。
その提案は私にとって最高の逃げ道だ。
ジョンが戦ってくれる。
強くて優しい怖くて厳しいあの師匠と私が戦わずに済む。
抵抗はしなかった。
下手に抵抗すれば、見捨てられるかもしれない。
今の私は両腕両脚が無いことを忘れてはいけない。
何より、私が師匠に勝てる気がしない。
私は、体の主導権をジョンに託した。
私が動いても勝てないのだ。
だったらジョンに戦って貰うしかない。
……本当にそれでいいの?
師匠を助けるのを他人(?)に任せて。
……私は、どうすれば……。