魔触機装 ep3 英雄たる人形
「師匠!」
コールドスリープカプセルの中に居る人物を見てレイリアナが叫んで近付く。
コールドスリープカプセルの中には男性が眠っている。
その人が、探していた人だということだろう。
「早く助け出さないと!」
『待て、このカプセルから闇雲に出すのは危険だ』
「何でよ!」
『僕の記憶が正しければ、コールドスリープカプセルは、人を仮死状態にして保存する物だ。
だから、仮死状態の人を無理矢理外に出すと本当に死んでしまう可能性が高い』
「じゃあどうすれば良いのよ!?」
『それは調べてみないと分からない』
「師匠は、この状態で大丈夫なの?」
『大丈夫だ。
薄らとではあるが生命反応を感じる。
だから落ち着くんだ』
まあ、嘘だがな。
僕にそんな能力は無い。
それでもまずレイリアナを落ち着かせないと。
僕の言葉を聞いたレイリアナはカプセルを凝視した後、深呼吸をする。
「そう、分かったわ。
で、どうやって調べるの?」
『僕が、触手で接続を試みる』
「セツゾク?」
『要するにジェーン達にしたことと同じ事をこのカプセルにするだけだ』
「師匠になにかあったら許さないからね」
『分かってるよ』
まあ、師匠とやらに干渉はするけどね。
状態が分からない以上、調べるのは当然だ。
場合によっては、即刻敵対という事があるからね。
こういう機械は、接続する場所が決まっていてよっぽどのことがない限り接続可能な部分があるはずだけど。
触手でカプセルを万遍なく調べるが、接続できそうな部分は無い。
その上、この手の機械は操作する機械が一緒にあるはずなんだが見当たらない。
カプセルから伸びる線をたどろうにも後ろの壁に繋がっているためたどることが出来ない。
「……師匠」
心配そうに言葉を発するレイリアナ。
そんなレイリアナを観察しつつもどうしたものかと悩んでいると後ろからは戦闘音が聞こえてきた。
「また、ジェーン達?」
『いや、ジェーン達が隠れる場所は無かったはずだ』
この空間の殆どは直線で出来ていて、隠れるような場所は無かったはずだ。
そもそも、ジェーン達が、そういった戦術的な行動をとれるとは思えない。
『取り敢えず見に行ってみるか後ろが気になっていたら落ち着いて調べることも出来ない』
「そうね、分かったわ見に行きましょう」
僕たちは、師匠とやらを後にして、騒ぎのする方へ向かった。
後ろでカプセルが煙を動き始めたのに気が付くことは無かった。
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code:admiration.
type:hero of the end.
…………loading
……………………succeed.
system all clear.
start-up.
damy mind in preparation.
………………………………completion.
request:all enemy destroy.
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「ええ!?」
戦闘音の方へ行ってみると大惨事になっていた。
具体的には、ジェーン達が体中から触手を出している状態だ。
見た目から人から離れた存在になり果てているため、触手が自分と同じ物でなかったら敵対存在にと認識してしまうであろう光景だ。
「ちょっと大丈夫なのあれ!?」
『少し聞いてみないと分からないな。
おーい、何があった?』
『ああ、本体か。
なに、ちょっと味方が増えただけだ』
『そうか、因みに何所から出て来たか分かるか?』
『ああ、最初は驚いたが、そこの壁からだ』
触手が体中から伸びた一人のジェーンから話を聞いて壁を調べる。
確かに他の壁とは違う厚さの壁がある。
そういう仕掛けか。
周りの壁と同じ見た目なので扉という認識が出来なかった。
どうやら見た目以上にこの場所は広いようだ。
『中に入れたのか?』
『ああ、一人潜入している』
『取り敢えずジェーン達は、広めに配置して入れる所から入っていこう』
『勿論、そのつもりだ』
ジェーン達と打ち合わせをしていると背後から足音が聞こえてきた。
そちらを見ると師匠とやらがこちらに歩いてきた。
「師匠!
良かった!
目を覚ましたのですね!」
そういってレイリアナは、師匠に走り寄る。
余りに無表情の師匠を見ても師匠が無事だった事に安堵し油断しきっているレイリアナは、違和感を抱かなかったようだ。
次の瞬間レイリアナは、壁にぶつかった。
「かはっ!?」
咄嗟に触手を展開し衝撃を和らげるが、殺しきれない。
しかし、どうやら味方というわけではなさそうだ。