レベル1 邂逅
ゼルトの生まれ育った村は、ポトラ村といって地図で言うと北西のはしに位置する小さな村だ。
父さんも母さんも特別な能力があるわけではないけど、元勇者を家庭教師に雇ったおかげでゼルトは優秀な勇者になれた。明日は旅立ちの日だ。村ではその祝賀会が催されている。
村人「ゼルト!いよいよ明日だな!」
村人「魔王を倒して世界に平和をお願いね。」
村のみんなは俺に期待してくれているようだ。
ゼルト「もちろんだよ!世界のために頑張ってくるよ。」
宴は夜遅くまで行われた。
翌朝―
母「支度は済んだ?忘れ物無い?」
ゼルト「大丈夫だよ。俺ももう子供じゃないんだから。」
母さんは心配性だからいつまでも子ども扱いだ。
父「ゼルト。世界のこと、頼んだぞ。苦しくなったらいつでも戻ってきていいからな。」
父さんはいつでも俺を応援してくれる。
ゼルト「ありがとう。行ってきます!」
家族との別れを済ませ、俺は南へと旅立った。
まず目指すはここから南の街エルラーザだ。
しばらく南進していると森へと入った。
ポトラ村南の森-聖邪の森だ。
森の中は基本的には弱い魔物しか生息していない。
旅立ちにはちょうどいい。
ゼルト「今日中には森を抜けて近くの宿に泊まろう。」
宿屋は街以外でもあちらこちらにある。
街と違って魔物の脅威が大きいから宿屋ごとに、魔物の強さに合わせた傭兵を雇っている。
危険なところにある宿屋ほど冒険者や商人などが多く利用するから稼ぎも少なくないわけだ。
森に入って数刻すると、魔物の気配を感じた。
ゼルト「3匹か・・・?」
あっという間にアルバラット(弱いねずみの魔物)3匹に囲まれた。
ゼルト「よし!ようやく俺の初陣ってわけか。行くぞっ・・!」
ゼルトは剣術と魔術を駆使して撃退した。
すると大きな魔物の足音が聞こえてくる。
ゼルト「しまった・・!初陣で張り切りすぎて音を出しすぎた!」
明らかに近づく足音。
足音が鳴りやんだころには視界に入る位置に魔物の姿があった。
ゼルト「!! そんな・・。デビルドラゴンだって?」
こんな森にいるはずがない凶悪な魔物。
ゼルト「でもやるしか・・・!」
持ち合わせの剣技、魔法を繰り出して撃退しようとしたがまるで歯が立たない。
ゼルト「こんなところで・・・!」
そんな時だった。向こうの木の陰から視線を感じる。よく見ると俺より少し幼い少年のようだ。
ゼルト「おい!そんなところにいるとやられるぞ!逃げるんだ!」
そんな注意もむなしく、魔物は少年に気づき、前足を振りかざす。
ゼルト「こっちだ!やめろ!」
ありったけの魔法をデビルドラゴンに打ち込み、こっちに気を引かせようとしたが、見向きもしない。剣技で止めようと突撃したその刹那だった。デビルドラゴンは攻撃をやめ、森から飛び立ち、どこかへ行ってしまった。
ゼルト「大丈夫か?!どこかケガは?」
ゼルトは少年のもとへ駆けつけ、様子を窺った。
その少年は目の赤い不思議な雰囲気の少年だった。