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あけましておめでとうございます。今年も頑張って読んでください。よろしくおねがいします

 アヤネとスキュブが復帰した朝、颯爽と歩くスキュブの姿は、ギルドの皆の目を引き付けていた。

 いつもは三つ編みにして片方の肩にかけていた髪の毛がポニーテールになっているのは勿論だが、胸を張るような姿勢で堂々と歩く姿はまるで別人のようで、一瞬別の人がアヤネの隣にいるのだと思うほどだった。 

 悪意を持ってアヤネに話しかけてくる人物への対応も変わった。以前は間に入って睨んでいたが、今日はすぐさま頭を引っ掴んで床に投げつけていた。しかも、満面の笑みで。

 

 そう、ギルドの誰も、スキュブの笑顔を見たことがなかった。こんな風に笑うだなんて、誰も知らなかったのだ。いつも無表情で不安げで、どこか寂しそうなのがスキュブだった。

 生まれ変わったみたいだった。まるで、数年ぶりに友達とあったときのような気持ちを、皆は目の当たりにした。

 

「どうしたのさスキュブ!まあまあ髪型まで変えて!こっちも似合うじゃないか!どうしたのどうしたの?休んでる間になんかいいことでもあったのかい?」

 

 これに食いつかないわけがないへカテリーナは、挨拶をするや否やスキュブの周りをくるくると廻り、目を輝かせていた。

 

「ええと……まず髪型ね。いつもはアヤネに結ってもらってたんだけど、ちょっと自分でもやってみたくて。でも、梳いてもらうのはアヤネにやってもらってるんだ。アヤネに髪の毛やってもらうの、好きだから。

 それと、色々気にならなくなってこんな感じになったの。休んでる間にいいことがあった、ってことでいいかな」

 

「まぁ〜!そんなふうな喋り方だったっけ?なんだか明るくなったねぇ、良かった良かった……」

 

 へカテリーナは感動したように頷く。受験に受かった孫の話を聞いたおばあちゃんのようだ。

 

「表情の軟化……以前より、いい顔になった、と言うべきだろう。祝福、おめでとう、を送りたい」

 

 へカテリーナの傍にいたロッパーも頷き、モノアイをにこりとさせた。

 

「ありがとう、ロッパー。ロッパーも前より素敵になったよね」

 

 スキュブが微笑み返す。

 

「へカテリーナのおかげだ。共に良い家族を持ったな」

 

「そうだね。わたしも、家族のおかげだもん」

 

「いいねぇ、二人とも……やっぱ長生きするもんだねぇ……ね、アヤネ!」

 

 二人の和やかな雰囲気にしみじみとしていたへカテリーナが肘でアヤネをつついた。

 

「本当だよ……生きてて良かった……やば、また泣きそう……」

 

 我が子の初登校を見守る親のようなまなざしで二人を眺めていたアヤネの目が潤む。


「まだアヤネは若いけど……涙もろくなってもいいんだよぅ……こんな風に家族がいい顔をするようになったら、泣いてもいいのさ……」

 

 へカテリーナはアヤネの背中をさすった。なぜかうちの子をしみじみと語る保護者会のような雰囲気である。

 

「アヤネ、また泣きそう?」

 

 スキュブが心配そうにアヤネの顔を覗き込んだ。アヤネはサムズアップをして返す。

 

「大丈夫。泣かないさ……感動はしてるけど……」

 

「涙腺崩壊っていうやつ?」

 

「大丈夫大丈夫。もう崩壊したとこ修理したから……」

 

「嬉し泣きなのは分かるけど、アヤネが泣くと心配になっちゃうから……本当に修理完了してる?水漏れとかしてない?」

 

「水漏れしそうになってるかな……」

 

「水漏れしちゃだめ〜!」

 

 スキュブはアヤネをぎゅっと抱き締めた。元気がいいが優しい抱擁だった。

 

「やば……水漏れする……」

 

「え?逆効果なの?え〜、どうしよう……」

 

 幸せそうに天を仰ぐアヤネに、スキュブはあたふたとする。

 とりあえずこうか、と差し出された手はアヤネの両頬を優しく包むもので、アヤネは天から光が注がれるような心地を感じていた。

 

「すみません!スキュブとアヤネが復帰したと聞いて……」

 

 そこに駆けつけてきたのはルイスだった。すれ違ったギルドの者から話を聞いたのだろうか。

 

「そうだよルイス!ほら、アヤネ!こっちに戻ってきて!」

 

 ルイスに気づいたへカテリーナは手を叩き、天に召されそうになっているアヤネを戻そうと試みた。ロッパーもそれにのって腕を振っている。

 

「おはようルイス。そうだよ。心配かけてごめんね。」

 

 なんとか戻ってきたアヤネはスキュブに両頬を包まれながらルイスに挨拶をした。

 

「おはようルイス。心配かけちゃってごめんね。わたしはもう元気だし、平気だよ」

 

 スキュブがアヤネに促されたわけでもないのに、すらすらとそう言ったので、ルイスは目を丸めた。

 いつも不安そうに、言葉を選ぶように話していたのに、滞りなく話している。

 

「……スキュブ、あなた……」

 

 ルイスは急に眩しいものを見たような気がして、一歩下がった。

 

「色々、気にしなくなったの。だからもう、大丈夫。怖いものはまだ怖いままだけど、もう負けたりしない」

 

 スキュブはアヤネの頬を撫でてから、ルイスに歩み寄った。

 

「今まで色々気にしてたから、ルイスに変なこと言っちゃってたと思う。ごめんね。もう大丈夫だから……またお話してくれる?」

 

 スキュブが俯きがちに、しかし最後はちゃんとルイスの目を見てそう言った。

 薄紅色の明るい瞳に見つめられて、ルイスは一瞬息が止まるような、目の眩むような感覚に襲われた。しかし、冷静を装って笑顔を作る。

 

「……ええ。また……近いうちに。社交辞令ではなく……本当に。」

 

 アヤネと同じようなまなざしで目を細めるルイスに、スキュブは少し首を傾げた。

 やはり、この人は身内を見るような目で自分を見てくることがある。

 

「さて!挨拶も済んだしアヤネとスキュブは元気になったし!仕事を始めるぞ〜!

 アヤネの方はもう仕事入ってるんだろう?カヨが緩めにしといた〜っては言ってたけれど、それでもびっくりスケジュールだろう?」

 

 へカテリーナが空気を変えるように手を叩き、アヤネの肩を軽く叩く。

 

「あ〜そこまでびっくりなほどじゃないけど……そろそろ仕事に行かないとね。スキュブも元気満タンみたいだから、モンスター連続狩りしながらあんまり採れないやつの採集かな……」

 

 アヤネは軽く言ったが、それは他者にとってはびっくりスケジュールである。カヨが直してもそうだというのは、カヨがアヤネの影響を受けてしまったからなのだろうか。

 

「それじゃあ行こう、アヤネ」

 

 スキュブはアヤネの先を行くように歩き出し、手を差し伸べた。

 朝の光を浴びたその表情は頼もしく、そしてずっとずっと明るい。

 

「うん。病み上がりだけどバシバシ行くよ!」

 

 アヤネがスキュブの手をとると、スキュブは頷いて駆け出した。

 アヤネがぎりぎりついていけるかどうか、という速度で走るので、アヤネは引っ張られるようにギルドの中を走っていくようなかたちになる。

 

「ちょ、スキュー!速くない?いつもより速くない?」

 

「アヤネはこれくらいの速さで走れるでしょ?」

 

「そうだけど……ていうか、わたしが出せる速度で走ってるよね?」

 

「そうだよ!」

 

 スキュブはころころと笑いながらアヤネと共に駆けていく。ギルドを抜けて、人と人の間を抜けて、子どもたちが遊び場へ向かうように。

 

「もう……かわいいんだから。わたしもちゃんと走るけど、置いていかないでよ?」

 

 アヤネが困ったように笑うと、うん!と元気な返事が返ってきた。

 年相応の、はつらつとした声だった。笑顔は雲一つない空に浮かぶ太陽のように眩しく、あたたかかった。

 

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