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デレステで総選挙走ってアルジュナ爆死してたら遅れました

大石泉すき大石泉ボイス実装確定ありがとう

大石泉すき

「ふーん、大団円って感じだったんだ。なんか意外」

 

 カヨはクッキーをかじりながらそう言った。

 

「何その言い方。何故私たちの幸福を望まないのですか?って言われちゃうよ」

 

「何だっけ、それ。ネットのどこかに落ちてたネタだよね?」

 

 アヤネはカヨの屋敷に来ていた。

 昨晩あたり、カヨに「ロボットちゃんの恋愛ってどうなったの?」と聞かれたのに答えるついでに来たのだ。

 

 スキュブはディートリッヒと一緒に日向ぼっこに行っていて、時折部屋の隅にいた使用人が消えたり、帰ってきたりしている。

 おそらくディートリッヒに呼び出されているのだろう。

 

「ネタってよりか記事?作品?かな。」

 

「待って。思い出すから。

 あれだ。えーっと……めっちゃ追いかけてくるやつがいるアレ!」

 

「見るとどこまでも追いかけてきて、殺しにくる、だね」

 

「そうそう!逆に見てないと死ぬのもあったよね?」

 

「あったね。有名なやつ」

 

「あと、ピアノの音が出る傘とか……爆発するブロッコリーとか……」

 

「結構覚えてるじゃん」

 

「一時期めっっちゃ見てたからね……懐かしいなぁ……」

 

 カヨはしみじみとアップルティーを啜った。

 

「そんでさ、ロボットちゃんとその女の魔法使いさんはうまくいってるの?」

 

「うまくいってるんじゃないかな。この前楽しそうに二人で喋ってたよ」

 

 ロッパーの腕をひいて、ギルドに入ってきたへカテリーナの笑顔を思い出した。

 元々若々しく見えるへカテリーナだが、今はもっときれいに見える。

 まるで今までなくしていたものが、形は違えど戻ってきて、やっと時計の針が進み始めたようだった。

 彼女がおせっかいするのは何かしら、そこに原因があったのかもしれない、とアヤネはその姿を見て思った。

 

 一方、ロッパーの方はというと、へカテリーナに振り回されたり、あっちこっち連れて行かれたりで忙しそうだが、嫌そうな顔は全くしていなかった。

 戸惑うこともありながらも、共に思いあうことを学んでいっているらしく、その姿は覚えたての愛に笑む人間のようだった。

 

「恋でぶっ壊れておしまいじゃなかったかぁ」

 

「お前、バッドエンド派だったけ?」

 

「メリバ派だよ〜」

 

「……ああ、うん。そうだわ。そうだよね。」

 

 アヤネはこくこくと頷いて、炭酸水の入ったグラスをあおる。

 

「なにその『お前の性格ならそうだよな』みたいな顔!わたしが監禁型ヤンデレ女みたいじゃん!」

 

 カヨがぷりぷりと反論するが、アヤネはそれをじとーっとした目で見ていた。

 

「事実じゃん」

 

「そんな覚えないんですけどー」

 

「あーちゃんはわたしを一人にしないよねーとかって言って、時々わたしを部屋に閉じ込めてたのはどこのどいつ?」

 

「……それは不安がってたわたしの傍にあーちゃんがいてくれたってだけじゃない?」

 

 カヨがあまりにも当然のように言うので、アヤネはカヨの顔を二度見してしまった。

 

 まさか無自覚だったのか、お前は。

 

「いや、お前が離さなかったからでしょ」

 

「抜け出すことはできたでしょ?」

 

「できたっていうか……しなくても良かったっていうか……」

 

「じゃあ傍にいてくれたってことでいいよね?」

 

「……いや。待って。そもそもそうなった原因が、お前が閉じ込めてきたからで……」

 

「抜け出すことはできたでしょ?」

 

「いや、だから。そもそもお前がわたしを閉じ込めるような性格してるって言ってるんだよ」

 

「鍵あけてたもん。監禁じゃなくない?」

 

「監禁じゃなくて軟禁だって?」

 

「いつでも外には出られたよ?」

 

「逃げたら殺すって目で見てたじゃん」

 

「それってあーちゃんの感想じゃない?わたしは言ってはないもーん」

 

 まったく収拾がつかない。

 昔からそうだった。言い合いではカヨが一枚上手であることが多い。

 

「度し難いってこういうことを言うんだろうね」

 

 アヤネが頬杖をつく。

 

「言いくるめがうまいって言って?」

 

 カヨがウインクをしてみせた。

 今にもいたずらっぽく舌をちろりと出しそうな顔は、どうも文句を引っ込ませるような気分にさせる。

 アヤネはため息を軽くついて、クッキーをつまんだ。

 

 

 外で人の話し声が聞こえた。

 部屋の隅にいた使用人が姿を消し、すぐに屋敷の扉が開く音がする。

 途端、騒がしさが廊下にざっと広がった。

 聞き覚えのない、言葉にならぬ声だ。怯えや混乱を含んだそれに、カヨはちらりと目をやる。

 

 アヤネは食べかけのクッキーを持ったまま、ぴたりと硬直した。

 

 声が低い。地を這うような低い声だ。

 女性の低い声とは違い、太くがっしりとしている。

 反射的に声の主の姿を想像してしまうと、急に血の気が引いていくような気がする。

 

 カヨはアヤネの様子を見て、すっと真顔になった。

 カヨが手を叩くと、すぐにカヨの隣に使用人が現れる。

 カヨは使用人に何か短く囁くと、使用人はこくりと頷いてすぐに消えた。

 

 直後、声がぴたりと止んだ。

 廊下の騒がしさはさっと引いて、いつもの静けさが戻ってきていた。

 

「あーちゃん、大丈夫?」

 

 カヨは微笑みを浮かべている。

 

「……大丈夫。ごめん」

 

「謝らないで。当然のことをしただけだし、あーちゃんが怖がるものはわたしが全部始末してあげるから」

 

 カヨの微笑みは、すべてを受け入れてくれそうな、優しい笑みだ。

 だが、そこには冷たく閃くような、ナイフが光を反射して、ぎらりと光るような恐ろしさもあった。

 

 この笑みを見るたび思い出す。

 学生のころ、アヤネに何かと言い寄ってきた男のロッカーに、虫の死骸やら、カミソリやらが入るようになり、次第に靴に画鋲が大量に――しかも鋭い針が刺さるような方向で――入るようになったり、机の中からはその男のプライベートな写真が、ぞっとするほど入っていたりするようになったことがある。

 男は最初こそ怒りをあらわにしていたが、だんだんとやつれていき、遂には学校に来なくなってしまった。

 暫くしたある日、その男が転校したことを先生が告げたとき、カヨの表情は驚きを装っていたが、手で覆い隠した口元は笑っていた。

 

 アヤネがそれを見て何かを察し、ぴくりと身じろいだのをカヨは見逃さなかった。

 びっくりだね、あーちゃんと言ってこちらへ振り向いた表情は、今と変わらぬ微笑みだった。

 

 部屋にディートリッヒが入ってきた。

 申し訳無さそうな顔をしたディートリッヒの服は血でびっしょりとしており、頬には手で拭った跡がある。

 

「申し訳ありません、お姉様がいるのにヒトの雄を連れ込んでしまって。」

 

「もー。ディーくんったら。雄の食肉候補持ってくるときはあーちゃんがいないとき、でしょ?」

 

 カヨは頬を膨らます。

 

「お兄様との時間を邪魔されたのに腹がたってしまい、つい……本当に申し訳ありません」

 

 ディートリッヒはこちらに向かってさっと一礼した。

 

「いや……別にいいよ。ここにいれば何が来ても安心だし」

 

 この屋敷にいれば安心というのは事実である。

 というよりもカヨと同じ部屋にいればほとんど安心なのだ。

 カヨは戦闘においてはたびたびミスをしたりすることもあって、いつもはアヤネがそのサポートをしたりすることが多いのだが、アヤネに危機が迫ったときの動きは一切の無駄もなく素早い。

 それに関してはスキュブもかなり評価しているほどだ。

 

「スーちゃんがいないときは、わたしがあーちゃんを守ってるからね!

 武器はいつでもスタンバイ!」

 

 カヨがアイテムポーチから、自身の身長よりも大きなハンマー――本来なら身の丈ほどの大きさ、と言うべき大きさだが、カヨは身長が低いのでそのような表現になる――をずるりと引っ張り出した。

 

「ちょっと、急にデカイ武器ふりまわさないでよ」

 

「まだ振り回してないよ?」

 

「まだって言うことはお前、振り回す予定だったのかよ」

 

「害虫が侵入してくれば、その予定だったけど?」

 

 人間のことを当然のように害虫呼ばわりである。

 けろっとした顔でハンマーを担ぎながらそれを言われると、少し笑えない。

 

 すると、部屋の騒ぎが気になったのか、スキュブも部屋に入ってきた。

 

「ディート、廊下の床が血だらけだが、掃除するか?」

 

 そう言うスキュブの口の周りも血だらけだ。

 散歩中に何かつまんだのだろうか。アヤネはポケットからハンカチを取り出して、スキュブのもとへ駆け寄った。

 

「スキュー、口のまわり血だらけだよ。何食べたの?」

 

 口を拭こうとするとスキュブが僅かに距離をとる。

 

「……廊下に転がってた、人間の腕。

 おいしそうだったから、一口食べた」

 

「血、触らせたくないの?大丈夫大丈夫。

 ほら、おいでスキュー」

 

 スキュブはしぶしぶアヤネに近づいた。

 アヤネはハンカチで優しくスキュブの口のまわりを拭う。

 ハンカチが血で汚れたが、こういうことはよくあったので、アヤネにとっては、トマトソースを拭くのと変わらなかった。

 

「お姉様、そのハンカチはこちらで洗濯します。それとお兄様、掃除は使用人にやらせますので、お構いなく。」

 

 差し出されたディートリッヒの手にハンカチを乗せると、ディートリッヒは指をパチンと鳴らして使用人を呼んだ。

 すぐにディートリッヒの隣に使用人が現れ、ハンカチを受け取ってすぐに消える。

 

「あと……お兄様。アレは家畜のエサにでもしてやろうと持ってきたものです。お兄様が口にするのはもっと上等なものにしてください。」

 

「そこそこおいしかったぞ?」

 

「とっても美味しい、じゃないと駄目です。お兄様の口に入るものは良いものでないと」

 

「でも、わたしが食べている家畜は、アレを食べて育っているのだろう?」

 

「普段は食べさせません。ヒトは共食いしない生き物ですから」

 

「じゃあなんでエサにしようとしたんだ?」

 

「お兄様との時間を邪魔したことが、どれだけ愚かで罪深いことか教えてあげようと思っただけです。

 ヒトは基本的には共食いしませんが、うちの家畜は私が命令すれば食べますので」

 

「うむ……確かにディートとひなたぼっこして、うとうとしていたところを邪魔したのは、つみぶかい……つみぶかい……な……」

 

 言葉をもごもごと繰り返し、納得したようにスキュブは頷く。

 

「でしょう?まあ、うちの使用人に首を斬られてしまいましたが、それは私のミスが原因ですので。

 いたぶりたいのも私の趣味、というだけですし、結局エサになるという結末は同じですから、賠償金はその命で、というのは変わりません。」

 

 兄弟の仲良しタイムを邪魔された腹いせにしては、過激なことを当たり前のように話す。

 しかし、ディートリッヒにとって身内でもないただの人間は家畜のエサ、くらいの認識なのである。

 

 むしろ控えめな方だとも言える。

 過去にはカヨと目を合わせたからという理由で人間を地下に監禁、調教したこともある。

 カヨも月の民という種族柄、自分よりも弱い者は顔を見せるだけで魅了できるという――これをアヤネとカヨは顔面チャームと呼んでいる――問題を抱えているため、ディートリッヒの行動もそう責められるものでもないのだ。

 

「ところでお姉様、お兄様にはもうお話しましたが、お伝えしたいことがありまして」

 

 アヤネはカヨの顔をちらりと見た。

 カヨはなんともない顔で、視線でディートリッヒの方を示す。

 

「恋が実った機械生命体の方がいるそうで。

 前々から伺いたいとは思っていましたが、更に興味がわきました。

 お姉様のいらっしゃる町に私たち夫婦でお邪魔したいのですが、よろしいですよね?」

 

 ディートリッヒはにこりと笑った。

 

「いいけど……お前ら目立たない?」

 

「それはお姉様たちも同じでしょう。他の人間とは比べ物にならないくらいに美しい二人が、並んで歩いていたら目立つに決まっています。」

 

 アヤネは少しじとっとした目でディートリッヒを見た。

 ディートリッヒの美しい、は個人的な好感度がその判定基準に大きく関わっているような気がする。

 スキュブがきれいなのは勿論だが、アヤネは自分が美しいと言われるのはピンときていなかった。

 

「まあ、お姉様ったらなんですかその視線は。まるで信じていない様子ですが」

 

「そりゃ、スキュブがきれいなのは分かるけどさ」

 

「お姉様も、ですよ。」

 

「それは好感度ボーナスが入ってるからじゃない?」

 

「そういうのは抜きに。

 ……まあ、大好きだから綺麗に見える、というのも否定はしませんけど。」

 

 ディートリッヒはさらりと視線をそらし、まぶたにかかった髪を指でそっと流した。

 

「……そういうことですので、近々遊びに行きますね。

 では、私はシャワーを浴びてきます。いつまでも血だらけだとカヨに叱られますからね」

 

 ディートリッヒはカヨをちらりと流し目で見て、部屋から出ていった。

 

「ディーくん、地下から戻ってくると割と血だらけでさぁ。せっかくのまっしろい髪の毛がくすんで見えちゃうから洗いたくなっちゃうんだよねぇ。

 わかるよね、あーちゃん?」

 

 カヨはテーブルに身を乗り出す。

 

「ディートは拷問もするし自分で捌いたりもするもんねー。

 うちのスキューはあんまり血だらけになるとだめだから、そういうことはないけど。

 まあでも髪の毛洗いたい気持ちは分かる。」

 

 アヤネは自分の隣の椅子を引いて、スキュブに手招きする。

 

「あーそっか。興奮の向かい先?がうちのディーくんとは違うからね。……っていっても結局はわたしに向いてくるけど……

 ま、それはそれとしてさ、やっぱ洗いたくなるよね?白い髪の毛って綺麗じゃん?どこぞの馬の骨の血とかで汚れてほしくなくない?うちの人になぁに汚れつけとんじゃー!ってなるんだよね」

 

「……ああ、お前はそういう洗いたい、なのね……」

 

「え、違うの?」

 

「わたしはただ単に、スキューの頭を洗ってあげたいなーって思ってる」

 

 とことこと歩いてきたスキュブが、首を傾げながら椅子に座った。

 

「え、何そのチョー平和的思想。ノーベル賞か?」

 

「え、別に平和的思想とかそういうのじゃなくない?こう、頭洗って湯ぶねにつからせて、髪の毛乾かして、気持ちよさそうにしてるスキューを見て癒やされるってことなんだけど」

 

「……それは癒やされるわ……何かわたしもスーちゃん洗いたくなってきた」

 

「洗わせないよ?」

 

 アヤネは無意識にスキュブの頭に手を伸ばし、なでなでし始める。

 

「お前はディートの頭洗いなよ……」

 

「そういえばそういう話だった。今日洗おうかなぁ。てか今シャワー浴びてんだっけ。突撃してこようかな」

 

 カヨは立ちあがって指をポキポキと鳴らした。

 

 カチコミにでもいくのかお前は。

 

「突撃!お前のバスタイム!ってことで行ってくるね!」

 

「普通に驚かれるんじゃ……」

 

「大丈夫大丈夫!ディーくんは驚いて茂みに隠れたりしないから!」

 

「風呂場に茂みはないよ……」

 

「言えば作ってもらえるよ!」

 

「普通に邪魔だろ!」

 

 カヨの屋敷の風呂場は結構広いので、茂みがあってもスペース的には問題ないのだろうが、風呂場に茂みとか邪魔でしかない。

 そのうちぬめりそうだし、カビとか酷そうだ。

 

「まあまあ、タオルに身を包んだ妻を悪く扱う夫はいないって♡

 よし、脱ぎながら行こう。」

 

 カヨは二つに結っていた髪をほどきながら部屋を出ていった。

 

「……スキューはアレ、真似しちゃだめだからね」

 

 アヤネはスキュブの髪の毛を優しく撫でながら言った。

 

「……わかった。それより……アヤネ。その……」

 

 声がどんどんしりつぼみになっていくので、アヤネはスキュブの様子を見てみると、スキュブが頬を赤くしてもじもじしていた。

 

 しまった。無意識に撫でていた。

 

「うおっとごめん。すごい無意識に撫でてた……」

 

「……むいしきに?」

 

 スキュブが首を傾げる。

 

「そうそう。なんかこう……手持ち無沙汰になると、ついやっちゃうんだよね……」

 

「ディートが、ぼーっとするとべろを出したりするのと一緒か?」

 

 アヤネは、本を読みながら、先が二又にわかれた舌を蛇のように出し入れするディートリッヒを思い出した。

 普段は意識して我慢しているらしいが、カヨはそれを眺めるのが好きらしい。

 

「そんな感じかな……」

 

「つまり……わたしを撫でるのは、日常的、動作?」

 

 スキュブは人差し指と人差し指をつんつんと合わせる。

 

「……そう、だな。思い返すと毎日撫でてる気がする……」

 

「そうか……そう、なのか……」

 

 スキュブは熱くなった頬を両手で隠すように包んだ。

 

「毎日頭撫でられるの、くすぐったい?」

 

「くすぐったい……けど、嬉しい。嬉しいし……」

 

 スキュブの口元が微かに上がる。

 

「毎日。毎日、撫でてくれてる。わたしは、しあわせ。

 へカテリーナが言ってた。ロッパーのことをなんとなく撫でてしまう、と」

 

 機械生命体にとっては、自分のパーツに触れられているだけだろうが、ロッパーはそれを嬉しそうに受け入れていたのを見たことがあった。

 

 へカテリーナもそれを分かっていた。

 ロッパーには触覚、皮膚感覚がない。人間のように、撫でられたときの心地よさを彼が感じるわけでもないし、これは感情が豊かなロッパーでなければ、正直無意味な行為にすぎないのだ。

 でも撫でてしまうし、手を繋ぐ――ロッパーがへカテリーナの手を握り潰すのを恐れて、へカテリーナがロッパーの手首を握っている状態だが――こともする。

 

「なんか撫でちゃう、と言ってた。かわいいし、つい、と。

 しあわせそうだった。へカテリーナも、ロッパーも。

 二人の間には"あい"があるのかな。あったかい、なにかが。まだロッパーがあわてたり、おろおろしてたりするけども」

 

 スキュブがもじもじと照れながら、アヤネと目を合わせる。

 勇気と熱が混じった目だ。霞みそうだが、まっすぐな視線がアヤネをしっかりと見つめている。

 

「……だから、アヤネがむいしきに撫でるのも、それ?

 アヤネは、そのくらい、わたしのこと……すき?」

 

「それは……勿論。あたりまえでしょ……」

 

 アヤネは、当たり前とは言いながらも、虚をつかれたような気がして、思わず視線をそらす。

 しかし、スキュブに言うべき言葉も、とるべき態度もそれではないとすぐに気づいて、ふっと顔を上げた。

 

「……好きだよ、お前のこと。誰よりも、お前が一番。

 家族として……好き。ずっと、とっても……」

 

 途中、自分でも何を言っているのか、言葉が支離滅裂になっているような気がして、アヤネの声はどんどん小さくはなっていったが、スキュブにはちゃんと届く声だった。

 

「そうか……ふふ。ありがとう、アヤネ。

 わたしもすき。アヤネのことがずっと、とってもすき」

 

 スキュブは目を細めた。

 白くて長いまつ毛に愛が憩う。微かに濡れているようにも見えて、それはますます美しく、柔らかな口元も相まって、スキュブの表情は正真正銘のえがおに見えた。

 

 アヤネは思わず息を飲んだ。

 こみ上げてくるものが幸福にしては激しく、涙がもりあがってくるようで、感涙にしてはあまりにも柔らかく、優しい甘さで満ちている。

 

「あの二人も、おんなじ気持ちなのかな」

 

 スキュブがアヤネに肩を寄せた。

 アヤネもそのあたたかな重さに、ゆっくりと肩を寄せる。

 

「……きっとね。恋とか、そういうのは分からないけど……好きって気持ちはきっとこんな感じなんだろうね」

 

 アヤネはにこりと微笑んだ。

 

 

 ――因みに、ディートリッヒの風呂場に突撃したカヨは、ふにゃふにゃになって、ディートリッヒに担がれた状態で戻ってきた。

 

 カヨはものすごくくすぐられたらしい。

 いたずらをしようとした悪い妻にはお仕置きしないと、とディートリッヒは得意げに笑っていた。

この章はこれでおしまいです

なんか平和におわって予想外でした

当初はロッパーが壊れて、それをへカテリーナがなおしていく決意をする予定でしたが、なんか明るく終わりましたね

この章は、当初抱えてた悩みや苦しみで読者を刺そうという勢いで書いていましたが、時とともに悩みも苦しみもやわらいでしまったせいかもしれません

つまらんな。

でもまあ、それはそれでいいのかもしれませんね

次の章をお楽しみに


感想もらえたら嬉しいです

こんな流行りに中指たててる内容で感想もクソもないと思いますが頑張って書いてね

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