積み木
有野さん。
課長だった有野さん。
昔、ゲームにまつわる番組を観ていた。
それは、レトロなゲームをクリアするまでやり抜くという企画。
ゲーム好きなら分かると思うが、昔のゲームは難易度が異常に高かった。
不親切で、理不尽で、挫折して、あきらめる。
でも、次の日にまた、挑戦する。
有野課長は、仕事とはいえ、そんな理不尽なゲームを根気よくこなす。
また、どんなジャンルのゲームもこなしていく。
僕はというと、自分の好きなゲームしかやらない派だ。
当時は、たくさん買えるだけのお金もなかったし。
ゲームを好きなだけやっていると、鬼が出る。
そして、その鬼はゲームを持っていって、どこかに隠してしまう。
僕と兄は、そのどこかを知っていたけど。
見つけてしまうと、本当になくなってしまう気がして、ほとぼりが冷めるまでそっとしていた。
不自由だった、昔のゲーム。
不自由だった、昔の時間。
大人になるにつれて、自由になった。
お金も時間も、自由になった。
それなのに、僕はゲームを最後までクリアすることが少なくなっていった。
そして、今でもゲームをやる時間は減り続けている。
それなのに、僕はいまだにゲームを買い続けている。
最近では、開封すらされずに、ただただ積み上げられている。
それでも、今日もまたひとつ、僕は新しい積み木を手に入れた。
高く高く続いている、積み木を見上げる。
手にはまた、新しい積み木が握りしめられていた。
よくもまあ、ここまで積み上げたものだ。
僕は、少しの罪悪感とともに、よじ登っていって、またひとつ積み上げていく。