たたかい
戦争の話ですね
血とかの表現はないですがまあまあグロいのでご注意を
撃たれた。急所は外れているからまだ大丈夫だ。
周りに一言断って一旦後陣に下がり、救護班の元にできるだけ早く走る。
と、
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地球上の全てが集まったような音が聞こえてきた。くそっ。振り向いたらダメだ。
林の中だからたとえ狙われても直撃は少ないが、代わりに走りずらい。
化け物だ。と思った。今までも週に1度ほど攻撃を受けていたものの、今回の攻撃はその比ではなかった。水平線に並ぶ圧倒的な数の軍艦から艦砲の凄さには度肝を抜かれた。
更に、
やっと救護班まで来れたと思った瞬間、目の前で爆弾が弾けた。咄嗟に身を隠したが、そこに帰るべきテントがなかった。
敵の飛行機が上で旋回している。再び急降下してきた。そして、
……。
やっと、夜が来た。敵軍も引き、休むことが出来る。
島のあらゆる施設はほとんど壊滅した。もし戦争がこの一戦だけならもう決着はついているだろう。
食うものもない。食料が焼き尽くされてしまった。
木陰に座り、目をつぶって空腹と痛みに耐えるが、もうそれも限界に近くなっている。左肩の傷に応急処置はしたものの、医薬のない治療ではほとんど意味が無い。前に傷をおった友からは白い膿が出てきて、それを取ることしかできていなかった。あの悪臭は忘れられない。この後俺もそうなるのだ。そしてあいつはもう居ない。
急に騒がしい声が聞こえてきた。疲れた体を無理やり起こして見に行くと1人の兵士が何人かの兵士に殴られていた。
尋ねると、どうやらこいつは畑からさつまいもを盗んだらしい。農耕班が僅かに育てている畑からはよく盗難が発生する。犯人が誰かはすぐに分かる。便が全く違うからだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
殴られながらずっと謝り続ける様にもう何も感情が湧かなかった。この兵士は今後絶食の刑が下るだろう。
フラフラと海岸沿いに向かった。目的のものはすぐに見つかった。カニだ。急いで捕まえ、そのまま噛み砕く。食中毒の危険など全く考えない。
たまに魚が爆撃の衝撃で浮いてることがあるのだが、残念ながら今日は見つからなかった。
成人男性は1日2000キロカロリーが必要だと聞いたことがある。当然全く足りない。ネズミでせいぜい100キロカロリー。それが何日かに一回。米の支給は一日にせいぜい50グラムがいいとこだ。
またフラフラと木陰に戻り、無理やり眠ろうとした。少し臭いからおそらく誰かが雑草を食って、近くで腹を下したのだろう。どうでもいい。
空腹で目が覚めた。まだ暗い。今日は一体何人が死ぬ事やら。
ふと隣を見ると誰かが死んでいた。昨日下痢をしていたやつかもしれない。だがそれよりも奥の木の下にヤシの実が落ちていることに気を取られた。ゆっくりと立ち上がり見に行くと腐っていた。さすがに食えない。だがウジが湧いていたからそれをとって食った。
甘い。
何となく餅を思い出した。母の顔より先に浮かんだ。自虐的に笑ってしまう。
急に光が差して来た。日の出だ。木の隙間から見える太陽に死んだやつが照らされていた。
──笑っている。
その場を離れた。埋葬してやる力なんかもうない。だけど。
俺は死なない。生きてやる。生きてやる生きてやる!米を腹いっぱい食うまで死なない。腹いっぱい食って、それで。
ほかの兵士もちらほら起き始めたようだ。地獄の1日がまた始まる。
「おはよう──。」
1945年8月15日。終戦。
日本軍は多くの被害を受けたが、中でもカロリン諸島メレヨン島は飢餓島と呼ばれた。
陸海軍約6500名の兵は米軍の攻撃の後に放置され、補給路を絶たれた日本軍は敗戦までに4493名が餓死。
空襲などの戦死者は307名。生還者は1626名。
下級者ほど餓死の比率が高かったと言う。
自分たちは直接戦争の話を聞く機会が、学校などで作ってもらわない限りありません。だから、戦争の本当の恐ろしさは想像することしかできません。
だからこそ、知る必要があります。
この話から何かを感じていただければ幸いです。
参考
気になった方はぜひ
参考
気になった方は是非。
・私の飢餓戦記(ウェーキ島)-宮崎の戦争記録継承館
http://miyazaki-sensokiroku.jp/modules/addon_html8/index.php/03.html?page=singlecontent
・平岸と戦争〜メレヨン島の惨禍 餓死の島-道新りんご新聞
https://www.doshin-apple-news.jp/2016/06/09/%E5%B9%B3%E5%B2%B8%E3%81%A8%E6%88%A6%E4%BA%89-%E3%83%A1%E3%83%AC%E3%83%A8%E3%83%B3%E5%B3%B6%E3%81%AE%E6%83%A8%E7%A6%8D-%E9%A4%93%E6%AD%BB%E3%81%AE%E5%B3%B6/
・餓死の島をなぜ語るか メレヨン島生還者たちの回想記
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