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ダーク・プリンセス  作者: ノリック
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「始まり、そして旅立ち」1 奪還2



* * *



 トゥルルルル、トゥルルルル


ミシェルの家に電話したニッシュは、やはりどこか慌てていて、拭いきれない不安で覆われているようだった。


ミシェルの家では、ニッシュからの電話に、ミシェルとデートじゃないのかな、何だろうと訝る。


『はい、ロングハートですが。ニッシュ君?ミシェルはどう?デート楽しんでる?あんまり遅くなっちゃだめよ』


『ミシェルのお母さんですか!大変なんです!ミシェルが、ミシェルが!!』


『どうしたの、ニッシュ君。そんなに慌てて、ミシェルがなに?』


『ミシェルがさらわれたんです!』


 ミシェルの母、ケニーはニッシュの言葉に「えっ?」と言葉を漏らした。ミシェルの家ではミシェルの父、ジョニーと、学校のレイピア術部の帰りに夕飯を食べて帰宅したミシェルの弟、ビルが、何事かと驚き家族に不穏な空気が流れる。ジョニーは、ケニーにちょっと電話を貸しなさいとニッシュからの電話に改めて応答する。


『ニッシュ君かい?ミシェルがどうかしたのかい?』


『ミシェルのお父さん!ミシェルが、さらわれたんです!』


『ニッシュ君、まずは落ち着きなさい、ミシェルが、どういった状況でさらわれたんだい?』


『――それが、ウィングエッジの商店街で夕飯を食べようとしていたら、四人組の男達につけられて、そいつらナイフまで持っていたんですが、俺とミシェルでリルクントン材木店のウッドレイピアを借りて、一旦は撃退したんです。だけれど、四人組の男達のリーダーが、GPSってのを起動して、変な機械のコウモリが来たと思ったら――そう、その後来た黒衣の男って奴に、まずはミシェルが足を挫かされてやられて、その後俺が黒衣の男に一撃は食らわした感じなんですけど……奴の……奴の一撃で俺さっきまでずっと気を失っていたんです!――それで、気付いたらやっぱりミシェルがいなくてさらわれていったようで……あっ、あれは!』


『何かに気付いたのかい?』


 ニッシュはリルクントン材木店の辺りに何かが落ちているのを発見した。それは街灯に照らされてキラキラ光っている。


『俺がミシェルに上げたイヤリングが片方落ちています!やっぱりミシェルに何かあって、さらわれていったんだ!』


 狼狽するニッシュに、ジョニーは『分かった、取り敢えず警察には連絡したかい?』と聞く。ニッシュは『今から連絡するところです』と言った。


『そうか。よし、警察には私が連絡しておこう。それとニッシュ君、ミシェルは〈電話〉は持っているみたいかい?』


 ジョニーは、何かに感づいて気になるようだ。ニッシュはジョニーの問いを不思議がるが素直に応える。


『――えっ、あっ、はい。夕飯を食べていくと、俺とミシェルそれぞれの家に〈電話〉する時にミシェルが自分の〈電話〉を腰のポーチに入れていたみたいなんで、持っているかと――』


 ジョニーはニッシュの答えに『そうか、なら』と言ってこう続けた。


『ミシェルの〈電話〉のGPSを辿れるな』


『えっ、ああ!』


 ニッシュはミシェルの父ジョニーが工学好きだと、ミシェルから聞いていたのを思い出した。ジョニーがレイピア術のマスタークラスだという事ばかりに捉われていたが、ジョニーは頭も良いのだ。そして、ジョニーは『そしてGPSが辿れるようなら』と言ってこう続けた。


『ミシェルは、私が助けに行く』


『――えっ、助けに!?』


 ニッシュは素直に驚いた。ミシェルの父ジョニー自らミシェルを助けに行くという。


『警察に連絡はして、ミシェルの〈電話〉のGPS等の情報提供をした上で、私が助けに行く。ニッシュ君から聞いたところ、そいつらは組織化されているようだが、闘いで挑まれるのなら私にもミシェルは助けられるかもしれない……何より、自分の娘のピンチに、父親が立たない訳にはいかないからね』


『俺も連れて行ってください!』


『……ニッシュ君も?』


 ニッシュは、ジョニーがミシェルを助けに行くと聞いて反射的に自分も連れて行ってくれと頼み込んだ。――ミシェルを、どうしても助けたいのだ。


『俺、目の前でミシェルに危険が及んでいるのに、何にも出来なくて……せめて、ミシェルのお父さんの役には立ちたいんです!』


『ああ、だがニッシュ君、大丈夫なのかい?さっきまで気絶していたんだろう?』


 ニッシュは痛いところを付かれる、だが、


『ご迷惑はお掛けしません!ミシェルを、助けたいんです!』


 ニッシュの決意は固かった。ジョニーは、う~む、と唸ってから、


『分かった、ニッシュ君は、リルクントン材木店の辺りに居るのかい?そこには車で向かうから、十五分くらい移動するのに時間がかかる。それと、準備するのに少し時間をくれ。そうしたら、一緒にミシェルを助けに行こう』


『分かりました!ありがとうございます!』


『じゃあ、今から急いで準備する。この有事、しっかりしなきゃな!』


『はい!』


『では』


 ぷつっ


 〈電話〉は切れた。ニッシュは、傍にいたリーンに「きっと、大丈夫だ。ミシェルのお父さんが、ミシェルを助けてくれる」と言って、それを聞いたリーンはミシェルの無事を祈る。



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