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ダーク・プリンセス  作者: ノリック
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「始まり、そして旅立ち」1 研究所1


* * *


 サントモス山の麓の森の中の建物に着き、ミシェルは馬車を降ろされた。


「着いたぞ、娘、ここが〔総本部〕の〈研究所〉だ」


「歩け」と言われ、ミシェルは自分の足に痛みが走る中、何とか歩こうとする。


「足を怪我しているんだから、もうちょっと優しくしてよね。それに、女の子には優しくするものじゃない」


 ミシェルは反論するが、男達から反感を買わないように言う事を聞いて歩き始める。


「入れ」


 リーダーの男に促されると、ミシェルは〈研究所〉の建物の中に入った。


 それは、森の中に急に現れた大きな施設で、様々な大型の設備があちらこちらに建造されていた。


 ミシェルは不安で押し潰されそうになりながら、男達に促され〈研究所〉の中を歩いていく。


(何、この施設?)


 ミシェルは〈研究所〉の中で辺りを見回した。その中は、実に様々に奇妙なもので溢れかえっていた。さっきミシェルとニッシュを追い回していた機械のコウモリや、同じく動物型の機械の様なもの、そして本当に生きている動物なども〈研究所〉内には存在していた。更には小型の飛行機の様なもので実験をしていたり、特殊なドローンを使っていたり、そしてレーダー室という所では電磁波で飛行機などのレーダーを制御しているような、奇妙な実験を行っていた。動物がいる部屋では動物実験なども行われているようで、ミシェルは生きている動物を思うと居たたまれない気持ちになった。


(かわいそうに……それにこんな所に私を連れてきて、一体何のつもりだろう?)


 ミシェルはそう思うと訝しげに自分を強引にさらってきた男達を見た。


 男達は、ただ黙って任務を遂行しているようだった。ミシェルを連行し、ただ何か大きなものに執着して動いているような、そんな感じがした。


 そうこうしていると、リーダーの男から「止まれ」と言われ、ミシェルは歩みを止めた。


「ここだ、入れ」


 そこは、『黒球研究室』と書かれた札のある部屋だった。他の部屋とも一線を画していて、この部屋は厳重に管理されている。部屋の扉はロックキーで施錠されていて、リーダーの男がキーを入力し、ロックを解除して扉を開けた。


 ミシェルは、その部屋に入った。


 その部屋には、白衣を着た一人の老人が立っていた。白髪で白い髭を生やし、渦巻き眼鏡をかけている。背は小さくミシェルの首程までしか身長がない。しかも痩せていて、顔だけが子供の


様にやけに大きい。


「博士、例の娘を連れてきました!」


 博士と呼ばれたその白衣を着た老人は、ミシェルを見るなり興奮して鼻息荒く、ピョンピョンと飛び跳ねてこう言った。


「でかした!!この娘が肝心なんじゃ!これで研究が進むぞい!!」


 その博士という老人は、この研究室の奥でなにやら小さい扉のロックを解除すると、中から出てきた何かを確認した。


 それは、黒く光を放つ人間の頭程の大きさの球状の物で、球状の物が中に入っているガラス越しでも、禍々しい黒い光が小さな扉の中から溢れんばかりに漏れ出している。


「おお!もうこんなにエネルギーが湧いているぞい!」


 博士という老人は、嬉々としてこの状況を楽しんでいるようだ。


「娘、お主の名前はなんぞい?」


 ミシェルは名を聞かれ、渋々答える。


「ミシェル・ロングハートよ」


「そうかい、儂は博士じゃ。エニグマという。エニグマ博士と呼んでくれるかのう」


 エニグマと名乗るその博士。ミシェルはここまでの鬱憤を晴らすように、エニグマ博士に尋ねた。


「エニグマ博士、じゃあ聞きますけどね。どうして私をここまで連れてきたの?何が目的なの?私と一緒にいたニッシュは首に打撃を受けて気絶したみたいなのよ!?答えによっては、許さないんだからね!」


 ミシェルはここまでの怒りが爆発して、捕らわれているというのにエニグマ博士に問いただした。エニグマ博士は澄ました顔でこう言った。


「あそこに黒く光る球があるじゃろう。あれは〈黒球〉というんじゃ」


 エニグマ博士は小さな扉の中にある黒い球を指差してそう言った。そしてさらに付け加える。


「その為に、娘、ミシェルといったかのう。お主が必要なんじゃよ」


 エニグマ博士は澄ました顔で、さらにこう言った。


「ミシェル、なのでお主の体は我々[総本部]が貰い受けるぞい。とりあえず、心臓を取り出させてもらうぞい」


 エニグマ博士は澄ました顔でとんでもないことを言い出した。ミシェルは目の前が真っ白になって、気付いたら叫びを上げていた。


「何言ってるのよ!?そんなことしたら死んでしまうでしょ!あなた達その為に私を連れてきたの!?」


 ミシェルが悲鳴に近い叫びを上げて、それでもエニグマ博士は澄ました顔で半分嬉しそうに話し出した。


「黒球という、偉大な研究の為なんじゃよ。ミシェル、お主の名前は、永遠に歴史に刻まれる。大丈夫じゃ。死してもこの世界に偉大な功績を遺すんじゃよ。大丈夫じゃ、分かっとくれ」


「――!?」


 ミシェルは絶句して、やはりこの男達は正気ではないと確信した。


「ミシェル、では実験をするぞい。そこに横になってくれるかのう。大丈夫じゃ、痛いのは、一瞬じゃ」


 なんでこんな人達がこの平和な世の中に野放しになっているのか、ミシェルは分からず頭がクラクラしてきた。自分に死んでくれと言っているようなものなのに、平気な顔で訳の分からない実験をしようとする男達。ミシェルは堪らず反論した。


「そんなこと、させるもんですか!?あなた達なんて警察に捕まってしまえばいいのよ!」


 もう訳が分からないミシェルに、エニグマ博士は勝手に呆れていた。


「しょうがないのう」


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