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ダーク・プリンセス  作者: ノリック
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「始まり、そして旅立ち」1 襲撃5


「――!――今だ!!」



 黒衣の男とリーダーの男のやり取りを見たニッシュが、迷いながらも、遂に黒衣の男との戦いの火蓋を切った。ミシェルもそれに続いて黒衣の男に迫る。


 ニッシュは木の棒を持っていない黒衣の男の左側からウッドレイピアで渾身の突きを放つ。黒衣の男はその突きを、右手に持った木の棒を勢いよくウッドレイピアにぶつけていなし、ニッシュの攻撃をかわす。


 ミシェルはその隙に、黒衣の男の右側から武器の木の棒を奪い取ろうと、木の棒の右手に近い辺りに薙ぎ払いを入れる。黒衣の男は右から左に払った木の棒を、一気に逆側である右に払い、ミシェルの薙ぎ払いもいなしかわす。


(――なんて力なの!?)


 黒衣の男の圧倒的な腕力にミシェルは気圧されながらも、必死に体勢を持ちなおそうとする。


(――今だ!)


 その時、瞬間を狙って、ニッシュが攻勢に出る。ミシェルの薙ぎ払いを右にいなしかわした黒衣の男は、ちょうど身体が開いて銅ががら空きの状態だった。ニッシュはその瞬間を狙って、もう一度渾身の突きを放つ。


「いけぇ!」


 しかし、ニッシュが突きを放つ瞬間、黒衣の男の攻撃が待っていた。その大きな身体と長い脚を持つ黒衣の男は、木の棒でミシェルの薙ぎ払いを右にいなしかわしたその勢いで右足から後ろ回し蹴りをニッシュに向けて放つ。


 ゴオォゥウ!!


「くぅっ!」


 ニッシュはその攻撃を、突きを放ち黒衣の男の蹴りがくると分かると、なんとかウッドレイピアでその蹴りを防御することができた。


 ミシェルとニッシュの二人は、その攻撃を見ると黒衣の男から一端距離を置く。木の棒を武器にしたかと思うと、体術も織り交ぜた黒衣の男の攻撃に作戦を練り直す。


「(ニッシュ、この黒衣の男って、武器だけじゃなくて体術も使ってくるわ!)」


「(ああ、なんとかウッドレイピアで防御できたけど、身体も大きいし……厄介だな)」


 二人が意思の疎通をする中、黒衣の男は不敵にもこう言い放った。


「私は、体術も得意としているのでな。それと、まだ本気を出している訳ではないぞ」


「くっ!」


「これは、確かに厄介ね!」


 この場面で、脅威を感じ必死に抵抗するミシェルとニッシュだが、ならばもう攻勢、反撃に転じようと意を決する。


「(ミシェル、こうなったら――)」


「(反撃に、出る!――次は私が止めを刺しに出るわ!)」


 ミシェルとニッシュは今度は二人同時に攻勢に出る。一度に攻撃すれば対応が難しいという判断から、二人は阿吽の呼吸で動き出す。


 今度はニッシュが黒衣の男の木の棒を持っている右側から、ミシェルが黒衣の男の左側から攻撃に出る。


 黒衣の男はその二人の動きに、微動だにせず構えを取り、ただ目だけで二人をギラギラと追っていた。


「セイヤァッ!」「ハアァッ!」


 ミシェルとニッシュの二人は同時に突きを放つ。


 黒衣の男は、木の棒でニッシュの突きを驚異的な腕力で右にいなし払うと、そのまま一回転してミシェルの突きをかわしながらまた右後ろ回し蹴りをミシェルに放ってきた。


 ミシェルは突きの姿勢を止め黒衣の男の蹴りをギリギリでかわす。一度見た攻撃を易々とくらう程、ミシェルは甘くない。


 再び黒衣の男から離れたミシェルとニッシュの二人は、もう一度意思の疎通をする。


「(やっぱり一筋縄ではいかないわね、こうなったら、ニッシュ!)」


「(ああ!)」


「(うん、蹴りが跳んでこない、至近距離から攻撃する!)」


 今度はミシェルが黒衣の男の左胸部に慎重ながら確実に突きを放つ。黒衣の男はそれをまた左にいなして払いかわす。


 ニッシュが黒衣の男の右胴に渾身の突きを放つ。黒衣の男はそれを左から右に驚異的な腕力で再びいなしかわした。


 その時、上半身の上と下に攻撃されたからか、黒衣の男の足がやや曲がり幾分か乱れた。


 その瞬間を、ミシェルは逃さなかった。


(――!――今なら、いける!蹴りは飛んでこないわ!)


「――もらったわ!」


ミシェルは黒衣の男の懐に潜り込んで、今、突きを放ちにいった。


 その時、


(――えっ!?)


ガガッ!ガンッ!ガッ!ドグッ!


 ミシェルは黒衣の男の木の棒でウッドレイピアを跳ね飛ばされると、そのまま胴の右側と足に強烈な打撃を加えられ、その場に倒れ込んだ。


 ――黒衣の男は、右手から左手に木の棒を持ち換えていた。ミシェルが突きを放つ瞬間、持ち替えた木の棒で攻撃を阻み、逆にミシェルに攻撃してきたのだ。


「――!?――ミシェル!?」


 ニッシュはやられたミシェルに駆け寄り声を掛けた。ミシェルは呻きながらも意識はハッキリしているようだ。


「……くっ、ううっ――」


 それでもやはりミシェルは苦しそうだが、なんとか持ちこたえていた。黒衣の男は、余裕の表情で攻勢に出ても深追いせず、二人をその大きく強靭な身体で見下ろしていた。


「――あなた……本当は左利きね!」


 自分達を見下ろしぎらついた視線で見下ろしてくる黒衣の男に対し、ミシェルは悔しさと不安のうっ憤をぶつける。


「――両利き、と言ってもらおうか」


「くそっ!なんなんだ今日は――!?」


「くっ――、……あっ!いたっい!」


 ミシェルは足に痛みが走る。黒衣の男からやられた攻撃と激しく倒れた勢いで、足に怪我を負ったのだ。


「ミシェル、大丈夫か!?」


「――うん、ちょっと、右足首を捻ったみたい……私は、もう戦えないわね……ごめん、ニッシュ……」


(――!――!!)


 ニッシュはミシェルが怪我をしたことにショックを受けるが、その衝撃の中で固い決意が生まれる。


「――ミシェルは、渡さない!!」


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