表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダーク・プリンセス  作者: ノリック
2/45

「始まり、そして旅立ち」1 ミシェル1


「始まり、そして旅立ち」



   1



日差しがまだ強く、木々の隙間からは木漏れ日が降り注いでいた。


周りは草花も生えて、のんびりするにはとても良さそうだ。虫が花に止まっていたり、動物が走り去っていく姿が見られるような、のどかな場所である。


北西にはサントモスという名の大きな山がある。しかし、ここの地形は平坦で、街には家が立ち並び、その街の大きな建物の中では、少年と少女が向かい合っていた。


「姉ちゃん、もう一勝負!!手加減するんじゃねぇぞ!」


少年が左手に持っていた革製の防具をかぶり、少女にそう告げた。


「もちろんよ、ビル!!」


少女も同じく左手に持っていた革製の防具をかぶり、少年にそう答えた。そして右手に持っている、先端が丸みを帯びている木製の槍――ウッドレイピアを構えた。





「エイヤッッ!!」


少年の激しいかけ声とともに、その右手から力のこもった突きが繰り出された。


少年の体はそのまま、突きとともに前にのめり込んだ。少女は少年の放った突きを右へのステップでかわす。そして、少年は目いっぱい放ったレイピアを、今度は力任せに少女めがけて打ち出してきた。


少女は体を左に反転させ、両足に体重をかけると、右手で持ったレイピアに力を込めて、相手が打ち出してきたレイピアを目一杯、右に円を描くようにしてはじき返した。


グガシャッッ!!!


硬くしなやかな木製の槍と槍がぶつかり合う鈍い音が館内に響く。


少年は、右斜め上に弾かれたレイピアを、物理の法則を無視して力任せに、少女の頭目がけて振り下ろしてきた。


少女は、レイピアから撓るような衝撃が伝わる中、右後ろに弾かれたレイピアを力一杯、すばやく円を描くようにして自分の頭の上に持ってきて、用意していた左手でレイピアの先端を掴んだ。


そして「はっ!!」とかけ声を出し、その時の渾身の力を下半身に込め重心を安定させると、レイピアを両手でおもいっきり握り、少し肘を曲げながら、自分の頭上でピタッとレイピアを固定させた。そして、両足にしっかりと重心を込めたまま、レイピアを固定させている上半身を、緊張と開放の間を意識して集中させた。


少年のレイピアは振り下ろされたが、少女がレイピアを頭上に固定させるのが、一瞬早かった。

そして少女は、肘や両足の余裕を使いながら、少年の一閃が当たろうかという瞬間、一気に力を上に解放した!


「はぁッッ!」


「いぃあッッッ!!」


グガーーッッッ!!!


少年の咆哮と、少女の全身から発するような叫び声とともに、木製のレイピアとレイピアがぶつかり合い、激しい轟音が館内にこだまする!


少年の一閃は上からの振り下ろしだ。しかし、右の利き手だが片手だけで放ったため、力が体から全て伝わった訳ではなかった。


少年は、重心をしっかりと保ち、体いっぱいを使って技を放った少女の、その細そうな腕からは想像できない力で、右手とレイピアが後ろに飛ぶように弾かれた。


少女のレイピアは、少年の一撃で、グビィィィィーンと鞭を打つように撓る。

少年は、弾かれた右手とレイピアと共に、その体も少し後ろに仰け反り、少年に一瞬の隙ができる。


少女はその一瞬を逃さず、まだ衝撃の余韻の残るレイピアをすばやく後ろに引くと、一気に少年の胸めがけて強烈な突きを放った!


その突きは少年の胸にぶち当たると、少年は後ろに吹っ飛ぶようにして倒れこんだ。


少女は突きの姿勢をやめると、頭の防具を外し、長い巻き毛がかった金髪をあふれ出させて、こう告げた。


「また私の勝ちね。ビル」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ