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7. 真っ黒な穴

プーリーフィッシュはまあまあ美味かった。ぜいたくを言うのならしっかりと焼いてみたかったが、それ以上に空腹を満たすのを優先した。進化したからなのか、戦ったからなのか、やけに腹が空いてたんだよな……


それはさておき、レベルが上がったスキルの検証をしてみた。


〖鑑定〗はさして変わらなかった。強いて言うなら多少遠いものでも調べられるようになったくらいだ。まあ、〖鑑定〗は今でも十分役立ってるから文句は言うまい。


ぶっ飛んでるのは〖鋼化〗だ。レベル1の段階では防御力に+100の補正がかかっていたところ、レベル2になった途端+200に跳ね上がっている。レベル×100の補正ってか?


もはや、はぁ? としか言えない。+100の補正でも十分他のやつらの攻撃を完封できたってのに、+200になったらどうなるんだ?


これまで見た中でのステータスの最大値は俺の〖敏捷:39〗だ。流石敏捷に秀でたコボルドだ……いや、そうではなく。


あ~いや、〖鋼化〗使用中の俺にダメージを通すには窒息させるくらいしかないってのはよくわかった。見た感じここら辺にはEやFランクのモンスターしかいないみたいだしな。


とはいえ、ここから離れたところでも同じかはわからないか……


よし、しばらくはコソコソ動き回って、片っ端からモンスターを〖鑑定〗しまくるか。危なくなっても〖鋼化〗しとけば死ぬことはないだろうし。


〖鑑定〗を使い倒してスキルレベルを上げれば、多少は調べられることも増えるかもしれないしな……






プーリーフィッシュを倒してから3日が過ぎた。一帯の洞窟はあらかた調べきれたはずだ。というか、本腰を入れれば一日で調べられるくらいの大きさだった。まあ、コボルドに進化して激上した敏捷のおかげでもあるんだろうけれど。


やっぱりモンスターはEかFだった。Fランク相手なら、もはや楽勝だ。周囲を跳び回ってやれば勝手に見失ってくれるので、隙をついて短剣で斬り捨てれば終わりだった。〖鋼化〗を使うまでもない。


Eランクは多少工夫が必要だったが、〖鋼化〗を応用して攻撃すればあっさりと倒すことができた。




「エアッ!」


俺は全力で前に跳躍すると、空中で〖鋼化〗を使った。ガチガチに固まった弾丸となってカエルのようなEランクモンスター、マッドフロッグに激突する。


「ゲコッ!」


あまりの衝撃に、マッドフロッグのHPが一撃で9割削れた。こいつ、Eランクの中ではかなり体力がある部類なんだけどな……相変わらず〖鋼化〗の有用性を思い知らされる。


ここまで弱ってしまえばEランクモンスターと言えども楽に倒せる。衝撃に身を震わせているマッドフロッグの首を短剣で斬り、仕留めた。


[経験値を24得ました。]


[〖コボルド〗のLvが11から12に上がりました。]


よしよし、無事にレベルも上がったな。


[通常スキル〖流れ星〗のLvが1から2に上がりました。]


ついでにこっちも上がったのか。ラッキーだな。


この〖流れ星〗は先ほど使った〖鋼化〗を用いたダイビングタックルだ。数回ほど使ってるうちにスキル認定されたらしい。〖噛みつく〗や〖ひっかく〗なんかよりはるかに高い攻撃力だ。


この三日間で、レベルは7上がった。まあ、レベル上げよりも情報収集を優先して行っていたからな。ペースは遅い。そのおかげで周辺の状況はだいたい分かった。この狭い範囲では、もはや俺の敵となる者はいない。


しかし、この三日間でも調べられなかったものが存在する。


それが、この洞窟体のほぼ中央部に存在する大穴だ。


なんとなく穴の先から不気味な気配がしたので後回しにしていたのだ。欲を言うのならここ以外で、他の場所へ行ける道があればよかったんだが……残念ながらそんなものは存在しなかった。


この大穴の先には行かず、ずっとこの洞窟体に住み続けるという選択肢も存在する。


食べ物はある。倒したモンスターを食べることができるしな。


水もある。プーリーフィッシュと戦った泉と同等のものが、他にも数か所存在した。


そして何より、安全だ。〖鋼化〗を使った俺を傷つけることができる奴は、ここにはいない。


生き残ることだけを考えるのなら、どう考えてもここに籠るのが最適解なのだ。




だが、俺はそれを選ばない。


こんな狭い世界だけが俺の済む場所になるのは嫌だった。もっと自由に動き回りたい。どこか遠い記憶に残っている日の光を浴びたい。そして何より……


帰りたい。


どこへ、と上手く説明することはできなかった。それでも、帰りたい。その思いだけがずっと心の中に張り付いて離れないのだ。


そのためには、こんな穴程度を恐れているわけにはいかない。ただ前進あるのみだ。必ずこの穴を行くことになるのだ。


幸い今の俺はLv.12。あと三つ上げれば進化することができる。進化すれば大きくステータスを上げることができる。新天地を行くにあたっては少しでも戦闘力が欲しいのだ。


よし、決めた。今日は動き回ってレベルを三つ上げる。そして進化して、簡単にレベルアップできる低レベル状態を抜け出してからこの穴の先へ挑戦しよう。


よし、そうと決めたら行動開始だ。レベル上げに向かうとしよう。


そう意気込んで穴に背を向けた、その時だった。


ズシン!


大きな音と共に地面が揺れた。


なんだこれ、と一瞬戸惑って気が付く。これは、俺が初めて戦闘を経験した時、レッサーコボルドたちと戦った時に感じた揺れだ。


すっかり油断していた俺は、突如襲った揺れに完全に体勢を崩してしまった。


そして、倒れ込んだ先にあったのは翌日挑むと決めていた大きな穴だった。


とっさに踏みとどまろうとするもかなわない。視線を向けると、穴の先は真っ暗闇で良く見えなかった。


なんてこった……


地面へ激突してもダメージを受けないよう、俺は〖鋼化〗で身を硬めた。

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