4. 〖鋼化〗の真価
轟音が響いてからも俺の体に痛みが走ることはなかった。
な、なんでだ?あの大きさの岩が降ってきたらまず助からねえと思ってたんだが……
経験値が入ったってことはあの二匹は死んだってことなんだろうけど、だとしたらなおさら現状が説明できねえ。それに、さっきから周りを確認しようとしても指一本動かすことができない。
ちょ、今何がどうなってんの?
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種族:レッサーコボルド(F-)
状態:鋼化Lv1
Lv:3/5
HP:1/7
MP:1/3
攻撃:3
防御:102(2)
魔力:1
敏捷:13
特性スキル:
〖嗅覚:Lv1〗
耐性スキル:
〖飢餓耐性:Lv2〗〖毒耐性:Lv1〗
通常スキル:
〖鑑定:Lv1〗〖鋼化:Lv1〗〖噛みつく:Lv1〗
称号スキル:
〖ダンジョン最弱の魔物:Lv--〗〖幸運の持ち主:Lv--〗
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〖状態:鋼化Lv1〗に〖防御:102(2)〗? なんだこれ、通常スキルの〖鋼化〗の効果か? だとしたらこの体が動かないのも〖鋼化〗のせいなのかもしれないな。
つまり、〖鋼化〗は体が動けなくなる代わりに、防御力を引き上げるスキルってことだな。にしてもプラス100ってすげぇ。……なんで俺がこんなスキルを持ってんだ?ほかのレッサーコボルドで、〖鋼化〗を持ってる奴は見たことないぞ。
ま、いいか。考えたってわかるもんでもないし。それより、無事生き延びたことを喜ぼう。ひゃっほ──
俺は〖鋼化〗を解除して、岩の隙間から這い出た。途中、岩に潰されたレッサーコボルドの死体を見つけたが、無視した。別に今は空腹ではない。
さて、思わぬことがあったものの、無事にレベルアップできた。想像以上に強力な防御スキルを持っていることも判明した。この〖鋼化〗を上手いこと使えば、かなりうまいこと戦うことができる、かもしれない。俺はまだまだレベルアップできる。強くなれる。
今日は……このHPとMPじゃあ戦うのは無理だな。今日はもう休んで、明日から戦おう。
俺はその日、岩陰で〖鋼化〗を使って休んだ。満腹だったのと、〖鋼化〗で防御力を上げていたことからくる安心感とで、ゆっくりと休むことができた。
カンウァン鉱石の光で目覚めた俺は、〖鑑定〗で全回復してることを確認する。うしっ! 今日こそ進化するぞ! 今[Lv3/5]だから、あと2上げれば進化できるはずだ。
俺は周囲を警戒しつつ歩く。あんまし強すぎるやつが相手だと、俺の作戦が使えない。理想を言うのなら敏捷があまりなくて、防御力もあんまり高くないやつだな。まあ、先制の不意打ちさえまともなダメージを与えられればいいからそこまで贅沢は言わない。
とその時、カラコロと何かが歩く音を聞いた。そっと音のする方へ歩いていくと、人間の骨が歩いていた。手には短剣を持っている。
まだこっちには気づいていないか。よし、今のうちにステータスを〖鑑定〗させてもらおうか。
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種族:スケルトン(F)
状態:呪い
Lv:3/6
HP:9/9
MP:7/7
攻撃:6+5
防御:7
魔力:3
敏捷:6
装備:
〖錆びた短剣:F〗
特性スキル:
〖アンテッド:Lv--〗
耐性スキル:
〖状態異常無効:Lv--〗〖物理耐性:Lv1〗
通常スキル:
〖不意打ち:Lv1〗〖死んだふり:Lv1〗
称号スキル:
〖見習い剣士:Lv1〗
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攻撃力に+5なんてついてんのはあの短剣の分かな? ふ~ん、装備でもステータスに補正がかかんのか。知らなかった。
まあいい。ステータス的にはねらい目だ。攻撃は短剣分込みでも11。鋼化状態の俺にはまずダメージが通らない。敏捷も俺より圧倒的に低い。そして、まだ向こうは俺に気が付いてない。絶好の条件がそろっている。よし、こいつを仕留めよう。
俺は背後から一気に近づくと、その肩の骨に噛みついた。さすがに骨なだけあって硬い。だが関係ない。俺はすぐさま〖鋼化〗した。
スケルトンが短剣を俺に振るってきた。だが、〖鋼化〗した俺の体表はあっさりと短剣をはじく。
ならばと短剣を手放して、両手を俺の口に突っ込んできた。俺の口をこじ開けるつもりか? そんなんできるわけないだろ。
二つの骨の手が力を加える。だが〖鋼化〗で固まった俺の顎はびくともしない。
ここまででも、俺が噛みつき続けている以上、スケルトンのHPは減り続けている。一方俺のHPはまだ1も減っていない。
このまま、現状維持でも倒し切れるかもしれない。そう思ったとき、俺が噛みついていた骨がスケルトンの体から落ちた。
俺はとっさに〖鋼化〗を解除して、スケルトンから距離をとる。一瞬前まで俺がいたところをスケルトンの蹴りが飛んでいた。危ない危ない。
想定外だが、許容範囲だ。まだ勝ち筋状にいる。
スケルトンが短剣を拾いなおして俺に向かってきた。振るわれた短剣を俺は余裕をもって交わす。
よし。こんだけ速度差があるなら、避けに専念したらまず攻撃を食らうことはない。問題は、相手がカウンタ―狙いで来た時だが……
俺は隙を見て再度スケルトンに噛みつく。そしてすぐさま〖鋼化〗を使う。〖鋼化〗した俺の体は短剣をものともしない。
よしよし。〖鋼化〗が間に合っている限りはスケルトンの攻撃でダメージを受けることはないな。後はこのままスケルトンのHPが尽きるのを待つのみだ。
そうこうしてるうちに、スケルトンの体がガラガラと音も立てて崩れて行った。
[経験値を21得ました。]
よし、倒せた! 思ったより経験値も多いぞ!
[〖レッサーコボルド〗のLvが3から5に上がりました。]
[〖レッサーコボルド〗のレベルが上限に達しました。]
[進化が可能となりました。]
おっ、一気にレベルが上がったな。これはラッキーだ。最大レベルになるまであと二、三戦くらいしないといけないと思っていたしな。
これで俺も進化できるのか?
次話以降は毎日更新はできないと思います。