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3.逃亡戦

後ろから足音が聞こえる。あっちに足が速い奴がいるうえに、あいつらも〖嗅覚〗のスキルを持っている。逃げ切れるとは思えない。


くそ! どうしたらいい。こんなことだったらあいつらのために、あの鳥の肉を少し残しておくんだった。いや、今更どうしよもない。


落ち着け。このまま逃げるだけじゃあ死ぬんだったら、どっかであいつらを迎え撃たないといけない。俺とあいつらの間にはスキルに大きな違いがあった。活路があるとしたらそこだ。


俺は〖鑑定〗〖鋼化〗。あいつらは〖噛みつく〗〖仲間を呼ぶ〗。


噛みつくくらいスキルが無くてもできそうだぞ。いや、今はそこはどうでもいい。


〖鑑定〗は正直、戦いには役に立たない。既にあいつらのステータスは把握してる。残るは〖鋼化〗だ。……〖鋼化〗? 文字通りなら鋼鉄に化けるってことか? くそ。自分のスキルくらいちゃんと検証しとけばよかった!


「えあっ! えあっ!」


レッサーコボルドの一体が噛みついてきた。Lvが2のやつだ。俺はとっさに横にひねって避ける。こいつの攻撃だけは受けるわけにはいかない。やつの牙が俺の耳のすぐそばを通っていった。


俺はそのまま速度を落とさず、横に道に入る。


ちらっと後ろを確認すると、Lv1のやつが一体、先行しているのが見えた。ほかの二体とは距離が開いている。


よし、決めた。次の曲がり角のところで仕掛けよう。


今なら瞬間的に1対1に持ち込める。加えてあいつら、状態:飢餓 の影響なのか、少し動きが鈍い。一方で俺はさっきの食事のおかげで満腹、絶好調だ。


こんな絶好のチャンスを逃すわけにいかない。ここでレベルアップしないと、これ以上の好機はもう二度と訪れない。


ここでLvを上げて、ぜったいに〖ダンジョン最弱の魔物〗を返上してやるよ!




曲がり角が近づいてきたところで、俺は速度を上げた。曲がった後に体勢を整える時間が少しでもほしい。


無事に曲がり角についた。素早く反転して息をひそめる。


タッタッタッ


レッサーコボルドの足音が近づいてくる。まだだ。焦るな。チャンスは一度っきりだ。これを逃したら……俺は死ぬ。


タッタッタタ


まだ……まだ…まだ、今だっ!


「えあぁつ!」


かわいらしい声と共に、目の前に現れたレッサーコボルドの喉元に噛みつく。顎に全力を入れる。やつの血が歯の間をしたってきた。


「ぁ”⁉」


レッサーコボルドが俺に齧り付いてこようとする。そんなんで喉元に食いついてる俺に届くわけがないだろ!


そう思ったら、今度は前足で俺をひっかいてきた。痛っ! 少しダメージが通る。何度も何度も引っかかれて、俺も出血し始めた。


俺はお返しとばかりに顎の力をさらに強める。


早く、早く終わってくれ! もう俺にはあとがないんだ!


「ぁ……」


レッサーコボルドから力が抜けるのを感じる。


[経験値を5得ました。]


頭の中に文字が浮かんできた。これ、〖鑑定〗か? ってことは倒したのか?


[〖レッサーコボルド〗のLvが1から2に上がりました。]


[通常スキル〖噛みつく:Lv1〗を獲得しました。]


よ、よし!Lvが上がった。これで俺も少しは戦えるようになる。


安心した瞬間、横からの衝撃に吹っ飛ばされた。


がはっ……やばい。結構なダメージをもらってしまった。


俺は震える足を気力で奮い立たせる。立ち上がると、俺にタックルをかましてくれたレッサーコボルドを睨む。


そいつの後ろからやって来たもう一匹が、俺が倒した一匹を見ると悲しそうに鳴いた。そして俺をキッと睨んでくる。


こいつらの目に刃怒りの色が見えた。俺を獲物ではなく、敵と認識したようだった。


何だよそれ…… 俺は軽い苛立ちを感じた。


てめぇら俺を殺そうとしていたくせに、いざ仲間が殺されたとなると怒るのかよ。


いや、わかってはいる。そんなの誰もが思う自然な感情だってことくらい。でも、頭ではわかっていても、納得ができないんだ。


「えあっ!」「えあぁっ!」「えあっっ!」


俺たちは互いににらみながら吠えた。






威勢良く吠えたとはいえ、現状、俺に打つ手はない。Lvが2に上がったとはいえ、HPが切れかかっている今、Lv1とLv2の二匹を相手にはできない。おまけにさっき食らったタックルで足を痛めてしまった。もう一回逃げるんだったらあいつらの足求めないといけない。


俺が迷ってる間に、二匹がじりじりと間合いを詰めてきた。


……くそ、ダメだ。やっぱり手がない。ここまでなのか?


ズンッ! ズンッ!


俺が諦めかけた時、地面が大きく揺れた。何だ? 何の揺れなんだ?


俺が困惑している間も、揺れは何度も続いていた。


「えぁ?」「えぁ?」


困惑しているのはレッサーコボルドに匹も一緒だったようだ。キョロキョロと不安そうにあたりを見回している。やつらの注意が俺からそれた。


それを見た俺はとっさに前に出た。手前にいるLv2のやつの前足に噛みつく。


「えあっ!?」


一瞬俺のことが意識から抜けていたので、反撃が一歩遅れた。俺はその隙に後ろにいた奴に、体を勢いよくぶつける。あっさりと地面を転がった。


「えあっ!?」


よし、今のうちだ。一体は足に傷を負わせた。もう一体にも打撃を与えた。さすがに仕留めるのは無理だろうが、逃げるくらいならできるかもしれない。


俺は駆けだそうとして、ふらついてつんのめった。


くっ、血を流しすぎたか? まずい、早く逃げないと!


そう思ったとき、上からぱらぱらと小石が降ってきた。


俺は思わず、天井を見上げる。


ズウンッ!!


ひときわ大きい揺れが来た。そして、天井から大きな岩が落ちてくる。


あ、やばい。これは避けられない。


瞬時にそう思った俺は、せめてもの抵抗とばかりに前足で頭を守り、全身に力を入れた。




轟音とともに、あたりが何も見えなくなった。



















[経験値を10得ました。]


[〖レッサーコボルド〗のLvが2から3に上がりました。]


[称号スキル〖幸運の持ち主:Lv--〗を獲得しました。]




うん?

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