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14. vs ソルジャーゾンビ

「アアァァッ!」


ソルジャーゾンビの長剣が迫ってくる。やっぱり素の俺よりも動きが速い。加えて、長剣対短剣なため、俺の方がリーチにも劣る。


「ウオォッ!」


俺は一瞬だけ発動した〖浮沈術〗の効果で体重を軽くし、上に跳び上がった。足の毛を数本持っていきながらも通り過ぎていった長剣をしり目に、俺は短剣を顔めがけて振るう。


「アァ!」


ちっ、とっさに腕を刺させて顔を守りやがった。鎧がボロボロなおかげでノーダメージとはいかなかっただろうが、それでも浅い。おまけに今の俺は体が浮いていて回避行動がとれない。


俺は〖鋼化〗状態で長剣の一閃を受け、地面を転がって距離をとった。


……どんなに不利な状態でも、〖鋼化〗を使えばキャンセルできるってのは大きな利点だな。


「ウオォッ!」


俺はソルジャーゾンビへと疾走し、その途中で〖浮沈術〗を用いて加速した。急激な速度変化に対応できないソルジャーゾンビの長剣は決定的に振り遅れる。


懐に潜り込んだ俺は短剣で鎧の隙間を斬りつける。その際、〖浮沈術〗を解除するのを忘れない。軽くなった体重ではろくなダメージを与えられないからだ。


確かに芯をとらえたと思った一閃はしかし、ソルジャーゾンビの体表を薄く切り裂くのみで、ろくにダメージを与えることができなかった。


なんだこれ、刃先が何かに滑らされたみたいな……?


「アアァァッ!」


戦闘中に呆けた代償に一撃を入れられた。自身に迫る長剣をかろうじて躱せたかと思ったところ、無数の細かい刃のようなものに斬り割かれたのだ。


続く一閃には〖鋼化〗が間に合ったものの、手痛いダメージを負ってしまった。


これは〖不朽の誓い〗が発動したな……。



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種族:アセナ(D)

状態:鋼化Lv.2

Lv:5/30

HP:4/44

MP:19/37

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きっちり一割だけが残っている。〖鋼化〗中は問題ないだろうが、紙装甲な素のアセナにとっては[HP:4]なんて有って無いようなものだ。


俺は〖鋼化〗を維持したまま〖ヒール〗でHPを回復させた。




---------------------------------------------------

種族:アセナ(D)

状態:鋼化Lv.2

Lv:5/30

HP:26/44

MP:14/37

---------------------------------------------------




今の俺ではMPを5消費してHPを20強回復させるようだ。となると〖ヒール〗を使えるのはあと二回だな。〖浮沈術〗のMP消費はかなり低いので気にしなくていいとはいえ、二度目の〖ヒール〗を使ったら、諦めて逃げた方がよさそうだな。


俺は〖鋼化〗を解除してソルジャーゾンビと距離をとる。


それより今問題なのはさっきの攻防か。恐らく、俺の短剣を滑らせたのが〖流し身〗、長剣の周辺に刃を生んだのが〖風斬り〗のスキルだ。


幸い〖風斬り〗のスキルは一回攻撃と見なされて、〖不朽の誓い〗の発動条件を満たしてくれるようだ。


であるならば正直〖風斬り〗は怖くない。ちょっと威力を上げた程度の通常攻撃であれば、〖鋼化〗で完封できる。むしろMP消費してくれて助かるくらいだ。


ただ、〖流し身〗がダメージ軽減スキルだとするとなかなか厄介になるな。




---------------------------------------------------

種族:ソルジャーゾンビ(D)

状態:呪い

Lv:10/33

HP:40/76

MP:14/43

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向こうのダメージは6か。腕を刺した分が4、〖流し身〗が入った分が2ってとこか?


MPも3削れている。〖風斬り〗の分だろう。


まあ、消耗で言えば俺もかなりのもんではあるが。


「ウオォッ!」


俺は再度ソルジャーゾンビへと駆け出した。ソルジャーゾンビの長剣は微かに音を立てながら揺らめいていた。最初から〖風斬り〗を発動させているらしい。


だがなぁ! そいつは無意味なんだよ!


「アアァァッ」


敏捷に優れ、長剣のリーチがあるソルジャーゾンビの攻撃のほうがどうしたって俺より速い。だが俺はその一閃を、〖鋼化〗〖浮沈術〗を発動させてその場で、短剣を使わずに首で受け止めた。


二つのスキルによって激上した防御と体重によって、ソルジャーゾンビの攻撃を小揺るぎもせずに対応する。


「アァ?」


先ほど俺を吹き飛ばせた攻撃が全く通じていないことの困惑から、ソルジャーゾンビが思わず長剣を下ろしてしまう。


俺はその隙を逃さず、〖鋼化〗のみを解除して素早く軽い刺突をソルジャーゾンビの右肩へと入れる。そのまま〖浮沈術〗を解除して足を止めて連撃を繰り出す。


ソルジャーゾンビも必死に対応するものの、長剣を振るうには近すぎる間合いに潜り込めた以上、俺が有利に戦いを進められる。数回ほど浅く斬りつけられるが、大したダメージにはならなかった。


時折織り交ぜる〖浮沈術〗が俺の動きを激しく変動させ、ソルジャーゾンビの感覚を翻弄していった。


「アアァァ!」


苛立ったソルジャーゾンビが吠えるが、それだけで不利が覆るはずもない。俺は隙をついてその足を深く斬りつけた。


このまま削っていけるかと思った時、ソルジャーゾンビの瞳が怪しく光った。


「アアァァッ!」


これまで間合いの近さに鈍っていた一閃の鋭さがよみがえった。長剣が少々不自然な軌道を描きながら俺へと迫ってくる。


〖浮沈術〗は間に合わなかった。〖鋼化〗のみで一閃を受けた俺は、再び間合いの外側へと弾き出された。


今のは……〖心の目〗か? 恐らくだが、次の攻撃の精度を上げるスキルだろう。とはいえ、攻撃力を上げる効果はなさそうだ。


だが、短剣の間合いから外れてしまったな。


長剣の間合いの内側、短剣の間合いにまで潜り込むには技量で圧倒するか、相手の虚を突くかのどちらかしかない。だが、剣を持ち始めて間もない俺が〖剣士:Lv3〗の相手を圧倒できるはずもない。


〖浮沈術〗と〖鋼化〗の合わせ技で驚かす手法はもう使ってしまった。さてどうするか……


「アアァァッ!」


ちっ! 追撃に出やがった! これまでのやり取りでじわじわHPを削られる現状に危機感を抱いたんだろう。


長剣の連撃が立て続けに俺を襲う。短剣で必死に受け流そうとするが、上手く流しきれない衝撃が俺の腕をしびれさせる。


攻撃に大きな差がある以上仕方ないとは思うが、かなり苦しい状況だ。このままではじり貧になる。


「ウオォッ!」


俺は〖浮沈術〗で動きを上げて、ソルジャーゾンビの懐に潜り込もうとした。


しかし、動きを急に変えた俺の体を長剣がきっちり追ってきた。よく見ると、ソルジャーゾンビの瞳が怪しく光っている。


〖心の目〗だ。俺が勝負に出るのを見越して、的確に対処してきやがった!


〖鋼化〗が間に合わなかった俺は、重い一撃を喰らうのを覚悟した。


しかし、ソルジャーゾンビの狙いは俺ではなかった。長剣が捕らえたのは俺ではなく、俺が手に持つ短剣だった。


弾き飛ばされた短剣が宙を舞う。丸腰になった俺に長剣の追撃が迫った。


俺は〖鋼化〗状態で弾き飛ばされ、距離をとった。ソルジャーゾンビはすぐの追撃には出ず、地面に転がった俺の短剣を拾う。


最悪だ。余裕が無くなったら逃げようと思っていたが、短剣が奪われるのは想定外だ。


アセナに進化してから多少はましになったとはいえ、俺の貧弱攻撃力を補う短剣を失うわけにはいかない……。


逃げるのは無しだ。こいつを討つ!

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